第49話 覚悟
「はぁ、はぁ……」
「ディルンムット様!」
町に向かって平原を走るディルンムットとマットウェル。町が遠くに見えてきたが、まだ距離があった。サーヤ、エクレー、リリーシャが柱の所にちゃんといるのか確認したかったが、町の事が気がかりだった為、町へ一直線に向かっていたのだが、ディルンムットがとうとう立ち止まり、息を切らして苦しそうにしている。
「マット、先に行ってくれ……」
「えっ、でも!」
「僕の体は金属で出来てるから、重いんだ。長時間の運動には、あまり向いていなくて……。先に行って、町の様子を見て――」
どくんっ!
大地が脈打った。町から響いて来たように感じ、二人は前方を見る。
「い、今のって……」
「遅かった……。町の祈りの石もやられた!」
「くそっ! 俺、先に行きます」
「ああ、頼んだ!」
『待て』
二人の声ではない声が、背後から聞こえた。
ざざざっ!
サーヤは影を剣の形にして、魔族を斬り付けた。骸骨の魔族は腕や足の骨を砕いて足止めが出来た。柱の力が満ちているおかげで、そこまで強くない。しかし、もう一体の一本角の魔族が大きすぎて苦戦していたのだ。
ぶんっ! と魔族の太い腕が振り上げられ、サーヤめがけて下ろされる。動きが遅いのが幸いだが、威力が半端ない。横に飛びのいたが、魔族の拳がそのまま大地にめり込んだ。そのせいで辺りの土や石が弾け飛び、それが凶器となり、サーヤに襲いかかる。
「サーヤ!」
「コルっ、助かった」
コルの防護壁がサーヤを守る。すぐに態勢を立て直し、高く跳躍した。
「目を
前へ跳んでいたはずなのに、ぐん、と突然後ろに引っ張られた。見れば、足止めした骸骨の両腕が宙を飛び、サーヤの体を掴んでいたのだ。がっちりと掴まれて動けない。背後を確認すれば、骸骨は口を大きく開けていた。
「う、そ――」
骸骨は骨をバラバラにして宙を移動することが出来た。足や腕の骨数本を折った所で、魔族本人にはダメージなどあまりなく、次の手に出ただけの事だった。
「守りの砦!」
コルの影が伸びて、エイナを捕まえていた時と同じ防護壁に囲まれたシールドが出来る。サーヤを中に入れて、骸骨の口の中に入らないよう守る為だ。
「う、あぁっ」
骸骨の腕もサーヤの体を掴んだままなので、シールドの中。ガギガギと骸骨の歯がシールドに噛みついている。サーヤを食べられないからと、両腕は彼女を締め付けるように力を入れる。サーヤも必死に潰されないよう力を入れた。
(クロウの力だけを借りるんじゃ、これが限界? やっぱり、魔族には全力で挑まないとダメなの……?)
「……違う……」
サーヤは苦しい中で気付いた。
(違う。クロウの力はこんなもんじゃない。私に負担がかからないように、力をセーブしてるんだ)
自分の影の中にいる仲間を思う。自分の力の大きさを自覚しているからこそ、主であるサーヤを気遣っているのだ。
ピシッ!
「ひっ! サーヤぁ!!」
コルが悲鳴に近い声を上げた。目の前にいたもう一体の魔族も近付いて来て、シールドを掴んだのだ。ぐぐぐ、と押し潰そうと両側から力を加えてくる。シールドが嫌な音を上げた。
コルも必死にシールドを保とうと力を注いでいるが、二体の魔族を相手に手こずっている。しかも一体は巨体に怪力だ。
(防護壁を破壊しようとするなんて……。これで弱体化してるなんて恐ろしすぎる。……もう、覚悟を決めなきゃダメかも)
サーヤは奥歯をぎり、と噛んだ。
「クロウ、私と代わっ――」
言いかけた時だった。
「サーヤああぁぁ!!」
「!?」
聞きたかった声が聞こえた。
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