第37話 リリーシャの決意
「すごい音が聞こえましたけど、一体何が――!」
ディルンムットが家を出てすぐ、入れ違うようにサーヤ達が入って来た。監視レンズの警告音は、彼らの隠れ家まで響いていたのだ。爆音の目覚ましだった。急いで出て来たので、皆、寝間着のままだ。
リリーシャはストールを肩にかけ、自分も出る準備をしている。
「良かった。今、呼びに行こうと思ってました。侵入者が現れたんです。ディルは先に行きました。さっきの音は、監視レンズの音です」
「侵入者!?」
顔を見合わせた。
「どこですか?」
リリーシャは鏡の棚を見た。段の左端にプレートがかかっている。それぞれの段によって、置いてあるレンズの場所をまとめているのだ。
「北の森、東側です。大きな森なので、東と言っても範囲が広いですが、ディルの足跡を辿れば着けるはずです」
「足跡……?」
リリーシャは頷いた。
「彼の足は重いので、土の所では足跡がくっきりと付くんです。私は町へ行きますね」
「これから!? まだ暗いですよ。女性一人では危険です!」
サーヤが止めた。朝まで少し時間がある。
「それでも行かなくちゃ」
「どこへですか?」
マットが声をかけた。
「宿屋へ。今、部屋にいない宿泊者が、侵入者の可能性が高いから。町の人間は、森の獣の恐ろしさを知っているので、よほどの理由がない限り行く事はないはず。次に侵入者が現れたら、一番に確認に行こうって考えてたんです。町に寄らずに入ったのなら、無駄足かもしれませんが……」
「ディルンムット様は知らないんでしょう? あなた一人でこんな危険な事、させるはずがないですもんね」
リリーシャは、こくりと頷いた。彼女の独断だ。不安な表情だが、瞳は決意の色が見えている。
「私が一緒に行きます」
声を上げたのはエクレーだった。
「リリーシャ様の考えも一理あります。町の人間が犯人の手口を知れば、危機意識も高まるでしょう。皆は早く着替えて行ってください。ディルンムット様が万一、犯人を逃した場合、確実に捕まえられるのはサーヤだけです」
「え? ……あっ、そうか!」
マットウェルも納得した。
「私達は先に行きます。リリーシャ様」
「は、はい。ありがとうございます!」
エクレーとリリーシャは足早に家を出て行った。
「あっ! 落ち合う場所とか決めなくていいのか?」
「大丈夫。エクレーは私の力の一部だから、気配を追える。私達も用意しよう!」
サーヤとマットウェルが隠れ家に戻る。急ぐので、扉は開けたままだ。
「コル、また私達を乗せて飛んで。お願いね!」
「わーったよ」
飛んでいたコルは扉の前にちょこんと降り立ち、小さな羽をうーんと伸ばした。
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