第47話 爆発
砂煙がもくもくと辺りに立ち込める。
「げほっ、げほっ!」
保安官達も爆発に巻き込まれ、馬も一緒に吹き飛ばされた。急いで馬を立たせ、ケガがないか見る。パニックを起こしていた馬もいたが、落ち着けて何とか無事だ。
「何だよ今の!」
「びっくりしたぁ……」
部下達が口々に声を上げている。体中に付いた砂を払う。
「あの少女の周りにあった防護壁がなければ、俺達は全滅していただろう」
隊長の言葉に、周りの部下達はゾッと顔色が悪くなる。コルの防護壁が爆発の直撃から防いでくれたおかげで、保安官達は命拾いしたのだ。
「あの子は――」
爆発の中心、しかも、防護壁の中にいたのだ。中は炎が渦巻き、解放された力は防護壁を一気に膨張させ、爆発したのだ。
(もしかしたら、形も残っていないかもしれない)
必死に自分達を説得しようとしていた。この町の出身でもないのに、守ろうと声を張り上げていた。
(嘘を付いているようには見えなかったが……)
超至近距離での爆発だ。隊長はサーヤが最悪の結末を迎えていると思い、漂う砂の中を進んだ。ここでサーヤを確認せず置いて逃げるなど出来なかったのだ。
「皆っ! さっきの少女を探すんだ。早く!!」
隊長の命令に、部下達も散り、サーヤの姿を探す。もう動いてはいないだろうと、誰もが思っていた。
「げほっ、げほっっ!!」
風が砂を払っていく。そして開けた空間に、サーヤが倒れていた。もといた場所からかなり離れている。そこまで飛ばされたのだ。
「サーヤっ!」
コルが飛んできて必死に声をかける。サーヤは吸い込んだ砂を吐き出すように咳き込んだが、片手を上げて大丈夫だと返事をした。
「君っ、大丈夫か!! あの爆発を受けて生きているなんて……」
隊長も駆け寄る。彼からすれば、サーヤが生きている事は驚き以外の何物でもなかった。普通なら即死規模の爆発だったのだ。サーヤは体を起こす。
「仲間が守ってくれました……」
体のあちこちが痛いが、生きている証拠だ。はっと息を吐いて前方を見た。
「エイナ!」
サーヤが名を呼んだ。彼女は拘束から解き放たれ、宙に浮いていた。ゆっくりと上昇している。
エイナの右手が上がっている。
「!!」
サーヤは自分の影に両手を付き、叫んだ。
「クロウ! お願い!!」
ざわ……。
サーヤの影が浮き上がり、次の瞬間、ギュルギュルとドリルのように回転しながらエイナへと一直線に飛んでいく。先端は棘のように
影の棘は、エイナを貫いた。
が、エイナは涼しい顔だ。確かに体を貫いたが、その時には、エイナは姿を透過させていたのだ。右手からは黒い光を出したままで。
「……消えた」
エイナの姿は消えてなくなっていた。
「はぁ、はぁ……」
「サーヤ、クロウを使って大丈夫か!?」
「まぁね……」
コルが見たサーヤは、大丈夫そうではなかった。
(あの爆発からサーヤを守ったのはクロウだな。オレ様の防御は間に合わなかった。お手柄だが、クロウが動くだけでサーヤに疲労が……)
「石はどう?」
サーヤの言葉に、コルは辺りを見回す。隊長も周りに変化がないか視線を動かした。
「何もないが……」
隊長が口を開いた時。
どくんっ
「!?」
明らかに地面が鼓動を打った。空気が少し冷たくなった気がする。保安局員も感じたようで、互いに顔を見合わせ戸惑っている。
「……抑えきれなかった。隊長さん、すぐに町の人を森へ――」
サーヤが言いかけると、どんっ! と少し離れた場所の地面が吹き飛んだ。
「サ、サーヤ……」
コルが震えだした。
「あ、あれは……」
隊長も目を
「早く非難を! 魔族が町に入って来る!!」
サーヤの声が辺りに響いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます