第48話 やるしかない
「あ……あれが、魔族……!?」
地面から出て来た異形の姿の化け物。人よりも大きな骸骨だった。左肩に鎧の肩当て、右足にも鎧を着けている。手には錆びついた剣を持って、ゆらりとこちらに進んできた。まるで騎士の
「ディルンムット様、マット……まだ?」
別れた場所からここまで距離がある。サーヤも全力で走ったが、時間がかかったのだ。先に出て来た魔族の相手をしてから、金の柱の所へ行き、リリーシャとエクレーからサーヤとコルが町に行ったと聞くだろう。そこからここへ向かって来るには、もっと時間がかかる。
「うわあっ!」
「あっちにも出た!!」
保安官が騒ぎ出す。見れば、離れているがまた地面の中から一体出て来た。茶色の肌に額の一本角。布を腰に巻いた巨大な魔族だった。マットウェル達と一緒に見た魔族と似ている。
町の中からも悲鳴が上がる。
「! まさか、魔族が他にも!?」
「祈りの石はこの町にいくつあるんだ?」
コルが隊長に問うた。隊長は眉間に深いしわを刻む。
「六ケ所に埋めたと聞いた……」
「ろっ、六体かよ!!」
コルは悲鳴にも似た声を上げた。
サーヤはぎゅっと拳を握った。
「サーヤ……」
コルが心配そうに見た。
「隊長さん、町の人を東の森へ避難してください。リリーシャさんと私の仲間がいます」
「なら、君も――」
「ここは私が食い止めてみます。ガイヤの柱の力を増幅してるので、奴らは本来の力を出せないはず。賢者様と合流出来れば、事態も変わる! 行ってください!」
サーヤの勢いに押され、保安官達は馬に乗った。隊長も意を決している。
「東西と南に分かれて住人を森へ避難させろ! 魔族から守るんだ! 私は局員全員を呼んで来る。勝てないなら距離を取り応援を待て。自分の命も守るんだぞ!!」
「はっ!」
隊長の言葉を受け、保安官達は馬を走らせ行った。
「君の名は、サーヤ、と言ったか? 君も、死んではいけない!」
「分かってます」
サーヤが口の端を上げて笑って見せた。隊長は心配そうにしていたが、自分のすべき事を優先し、馬を駆る。
サーヤは立ち上がり、汚れた服を払った。砂がパラパラと落ちる。
「サーヤ、ほんとにやるのか?」
「コル、防御は任せるからね」
「それは良いが……、サーヤの体がっ!」
「大丈夫よ、きっと……。短時間で終わらせれば」
サーヤの足元の影が揺らめいた。
「やるしかない。クロウ、力を貸して!」
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