概要
神鬼と人がまだ同じ世界にいた頃のお話――。
叡智と音の神であり、また戦闘神としても崇められていた弁財天神には、彼女に仕える童子が十六人いた。
童子達は悪さをする鬼達を退治するのが生業だったのだが、ある日から鬼の出没は無くなり、それと同時に弁財天神に関する悪い噂が立ち始める。
人々は噂を信じ、鬼から救ってもらった恩義も忘れ、信仰をやめ、その嫌疑を受けて弁財天神の存在自体が消えそうになっていた。
人を助けていた童子達まで追いやられて姿を消したのだが、鬼が再び現れて人々は生命童子に助けを求める。
唯一変わらずにいる生命童子と愛敬童子はなんとか人を救わんと鬼と戦うのだが————。
赤い鬼と緑の鬼の悲しく切ない物語。あなたはこの結末を受け入れる事が出来ますか。
実在する「
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- ★★★ Excellent!!!実在する『沈み鳥居』にまつわる悲しくも美しい禁断の愛の神話
この物語の舞台となっている『沈み鳥居』は、ググれば神秘的な写真が沢山出てくる実在する名所。ニュースでそれを見た作者さんがインスパイアされて書いたというこの渾身の作品は、本当にある神話のように感じてしまう。
鏡面のような池の中に咲き誇る睡蓮の花はなぜ深緋《こきあけ》色をしているのか?
神、鬼、妖怪、人間たちの交わりの中で、愛してはいけないものを愛する事は罪であり、辛い事であり、決してハッピーエンドにはならないかもしれない。
タグにはサッドエンドとあるけれど、そのエンディングの捉え方は読者それぞれだと思います。
私はその悲しみ以上に気高く清らかなものを感じさせられました。
登場人物達の健気さ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!ひっそりと沈む鳥居に隠された美しく残酷な物語
弁天池の睡蓮に隠れるようにひっそりと佇む「沈み鳥居」。
そこにはどのようなドラマが潜んでいるのでしょう。
弁財天に仕え、人々を苦しめる鬼を退治する童子たち。その中でひときわ弁財天から愛された生命童子がこの物語の主人公です。
美しさと凄惨さ。
表と裏。
善と悪。
二つの背中合わせのものが物語に深い陰影を与えます。
弱者の面をかぶりつつも、日和見主義で簡単に真心を裏切ることのできる人間たち。
その心を反映するように影が薄くなってゆく弁財天。
内側の憤りと哀しみが外側を鬼のかたちへと変えていく恐ろしさ。
その映像的な描写にはとにかく引き込まれること間違いありません。
流麗であるとともに凄味が…続きを読む - ★★★ Excellent!!!信仰心とは何か。端麗な文体で綴られる、神と童子と鬼と人間の物語。
「沈み鳥居」とは、日本の弁天池に実在する名所です。
桃色のスイレンが水の面を埋め尽くす池に鳥居が半分、沈んでいます。
その幻想的な風景に息吹を与えられて紡がれる物語世界には、浮世離れした美貌の、しかしながら人間味を感じさせる個性豊かなキャラクターが生きていました。
崇拝される弁財天と、弁財天に仕える十六人の童子が居ます。
弁財天と言えば、七福神に名を連ねる女神。
此処では叡智と音の神、同時に戦闘神として描かれています。
童子は、この物語の中で、神に仕える眷属(従者)です。
童子は人並み外れた「力」を有しており、神に近い存在。
弁財天の庇護の許、特に「力」をそそがれているのは生命童子。
その…続きを読む