第7話 見上げてごらん 夜の月を
中国では”中秋節”という祝日が9月にある。
日本に比べると祝日の少ない中国なのに、中秋の名月を愛でる日が祝日なんてロマンティックなのだ。
中秋節前になると、お世話になっている人に月餅を贈りあう。
オットも会社でもらってきたりする。
ワタシ達ママ達も普段お世話になっている子供のスクールバスの運転手さんに贈ったりする。
日本でいうお中元、お歳暮のようなものかしら?
この月餅、大きさはさまざまだけど、よくいただいたそれは直径で7センチ程度あり、餡の味はさまざま。
中身たっぷりで結構な重量感。
正直あまり美味しくなかった。(好きな方、ごめんなさい)
日本の中華街の月餅は美味しいんだけどな。やっぱり日本人向けの味付けなのかな。
毎年、オットのもらってくる月餅もあんまり歓迎できなかったのだけれど、中国語の先生から月餅の話をしてもらったことがある。
月餅は箱に何個か入っている。
毎日1個を取り出して、家族で切り分けてお茶と一緒に頂くのだそう。
「中秋の名月まであと何日ね。」
なんて話をしながら一家だんらんを楽しむのだとか。
あのボリューミーな月餅はひとりで食べるんじゃなかったのである。
ワタシの好きな映画のひとつに中国映画「宋家の三姉妹」がある。
大財閥と結婚した長女と孫文と結婚した二女と蒋介石と結婚した三女の実話をもとにした物語なのだが、この映画の中で、一族で中秋節を楽しむシーンがある。
財閥に嫁いだ長女のもてなすセレブなシーンだった。
洋風のお屋敷のゴージャスなダイニングセットにセレブな姉妹たちが集って、月餅を囲んでいた。
和洋折衷ならぬ中洋折衷っていえばいいのかな?
中秋節なんて祝日のことも知らなかったけれど、お月様を愛でるパーティーなんて、なんて優雅なんだろって思った記憶がある。結婚して別々に暮らしている三姉妹、その頃二女と三女の夫が対立していて彼女たちも折り合いがよくなかった。そこで和解するために長女が企画した中秋節のお茶会。
中国に駐在するよりも前に見た映画だったけれど、中国語の先生のお話を聞いた今思うと、とっても深みのあるシーンだったんだなぁ。
普段は一緒に暮らしていなくても、月をきっかけに一族が集まり、月餅を囲む。意見の相違やわだかまりなども月が仲裁してくれる。
家族と暮らしていても、毎日家族全員で食卓を囲むことはできない。
食事のあとにお茶をいれてのんびり一家だんらんなんて皆無に等しい。
もうすぐ訪れる秋の夜長、お茶を淹れて美味しいお菓子を囲む時間を楽しむのもいいのかも。
月餅……はあんまり得意じゃないから家族の好きなお菓子でいいかしら?
夜空にぽっかりうかぶお月様を眺めながらね。
皆さまもいかがですか?
ちなみに2016年の中秋の名月は9月15日です。
見上げてごらん 夜の月を。
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