第25話 革市場で冬支度
11月になると必ず出かける恒例の場所があった。
革市場である。皮革城とも言う。
文字通り革製品を扱う大小さまざまなお店で大規模なショッピングセンターを形成している。毎年出かけるたびに建物が増えていったような気がした。元々は卸売りの市場だと思う。その一部が一般でも購入できる店舗となっているのだ。日帰りではとてもすべてを見て回ることはできない。いつも決まった建物に買い物に出かけた。
ワタシ達の主なお目当てはファー小物である。
マフラーに帽子、耳当て、手袋、破格の値段で手に入る。
コートのつけ襟やフードにつけるファーの縁取りだけを売っていたりもした。
これらはこの大きな建物の中にテナントとして入っている小売店で売っている。ぶっちゃけどこのお店も同じような商品が置いてあるので、少しでも安いところで買おうとする。
ここは市場なので値引き交渉が可能なのだ。お店の人もこちらが外国人だとわかるとふっかけてくる。もちろんそんな言い値で買いはしない。次来る人にはその倍の値段をふっかけるから。
値引き交渉で思ったことは1個いくらと言われた値段を下げるよりは、最初に言われた値段で複数個買えるようにする方が交渉がスムーズにいくかなということだった。
たとえば1つ1000円と言われたマフラーがあるとすれば、それを500円に値切るよりは、1000円で2つ、もしくは3つ買えるように話を持っていくのだ。
あるときなど、最初に言われた値段で10個のマフラーが買えたことがあった。一体どんだけふっかけとんのじゃ! という話である。ひとりで10個のマフラーはさすがに要らない? それが以外と日本の友達や家族へのおみやげなどに重宝なのでさほど困らないし、友達と便乗すれば10個など楽勝なのである。
それにこれだけ安ければ子供にも買ってあげられる。パステルカラーなどのファーのマフラーや手袋は女の子に人気だった。一度革風?(安かったから本革ではないはず)の室内遊び用のサッカーボールをムスコに買ってやったが、あっという間にボロボロにされてしまった。もっと小さい子用だったのかも。
ここで購入したものでいまだに愛用しているのが、ファーのポンチョである。日本でも見かけることもあるが、これまた粘り強い交渉の末、リーズナブルに購入できた。確か1000円くらいだったと思う。
これが、ここで買うと1000円。
それが車で2時間のワタシの街のショッピングセンターで20000円で売られている。
日本からも仕入れに来ているとも聞いたことがある。一体いくらで売られるんだろう。
他にもミンクの帽子やショールなどを買っている人もいたし、革のトレンチコートやムートンコートを買った人もいた。中国デザインのものって基本的に派手で装飾が多い。素敵な元々の革の色を無視して赤や黄色に染めてしまったり、ポケットに花の刺繍をしてしまったり、裾にふりふりフリルがつけてしまったりするデザインのものが目立つ。そんな原色のコートの海から発掘するのである。シンプルなデザインで革本来の魅力を活かしたデザインを。友達が着ているコートを褒めるとあの革市場のお店で探したの、なんて言われると尊敬してしまう。どこにそんな素敵なデザインがあったの? と。
革製品なので、財布やバッグやブーツなども売っていたし、ワタシ達の間で流行ったのはお客さん用の革のスリッパ。
寒くなると、その年初めて中国に来た友達を案内しながらの革市場ツアー。真冬は零下にもなる街だけど、ファーや革製品にオーダーのダウンコートで身を包んで楽しむことができる。寒いときには寒いときにしかできないファッションを満喫。そのために出かける革市場。
革市場で冬支度。
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