第26話 リフォーム? リノベーション?

 近所に総合病院があった。日本同様に内科、外科などの多くの診療科がある。

 内科、小児科は日本人向けのクリニックがあったのでそちらにお世話になるが、それ以外の診療科でこの病院を利用することもあった。


 ローカルの病院なので、中国人の先生が中国語で診察する病院である。

 ただ、外国人向けのサービスも充実していて、日本語通訳のサービスがあり、どの科でも受付、診察、会計まで通訳の人が付き添ってくれる。

 通訳といってもレベルはさまざまなのであるが、ここの通訳さんはとっても優秀だった。医療用語まで訳してくれるのだから、日常会話レベル以上だ。本当に素晴らしい。


 そんな通訳さんを味方にワタシ達は美容整形科に通った。


 美容整形科では、

 脱毛

 シミ取り

 ホクロ取り


 レーザー治療によるスキンケア

 薬剤による美白ケア


 眉入れ墨

 アイライン入れ墨などメニューは多岐にわたる。


 恐らく日本人ママたちはここまで。


 まずは永久脱毛から美容整形デビュー。

 当時は日本より安く処置してもらえた。

 ワキの脱毛をしてもらいながら、付き添ってくれている通訳彼女が雑談をしてくれる。


「ここのシミ、皮膚科の先生に診てもらいませんか?」

 ワタシにはこめかみのあたりに1センチくらいのシミがあった。おそらく10代のころから。

 診てもらうだけなら無料だからとセールストークにのり、脱毛の処理を終えて皮膚科へ。


 これが男の先生だがゆでたまごのようなツルンツルンの綺麗なお肌の先生。イケメンでもなく、年も若くないだけにそのお肌のキレイさは際立っていた。

 この先生の言うこと聞いたらこんなお肌になるの? と幻想を抱かせてくれる。


 その先生がワタシのシミは消せるとおっしゃる。しかも皮膚病(?)だから医療保険も使えると。


 そう、永久脱毛などはもちろん病気ではないので、保険適応外で支払いは当たり前だが自腹である。それがこのシミは医療保険が適応できるとおっしゃる。それならもう断る理由はどこにもない。意気揚々と予約を入れた。


 さて、シミ取り当日。通訳さんは要所要所来てくれるが、実のところどんな作業でシミを取るのか聞いていなかった。どうやらレーザーで焼くらしい。


 目を防御するメガネをかけさせられて、

 次の瞬間、

 こめかみに衝撃が走る。

 目の裏側に火花が散る。

 線香花火の先っちょが落ちて来たカンジ。

 痛い!

 熱い!

 痛すぎる!!

 熱すぎる!!

 処置が終わり、通訳さんがメガネを外してくれる。

「大丈夫ですか?」

 あまりの痛さ熱さに泣いていた。


「うう……」

 大丈夫じゃないですぅ。

「これから冷やしますからね、これを20分あてます」

 通訳さんが保冷剤のようなものを患部にあててくれる。


 ああ、有難い。冷たい、と思ったのは最初の何秒間か。

 冷たい!

 痛い!

 冷たいよお!

 痛いよお!


 さっきは一瞬で終わった熱さ地獄だったけど、

 今度は20分続く冷たさ地獄。


「うううぅぅ」

 つくづく思う。

 キレイになるのもタイヘンだ。


 熱さと冷たさの地獄から解放され、ワタシは帰宅した。数日後、ケガのかさぶたが取れるようにそれはそれはキレイにシミは取れた。

 ビューティフル‼️


 ここの病院では

 整形

 豊胸

 痩身などもやっているらしい。


 60代のおばさんがこんなに変身! なんて写真が壁紙になっている。ポスターなんてものではない。壁全体がおばさんのビフォーアフター。これはすでに同一人物なのかしら?

 家で例えたら柱1本残して建て替えたリノベーションといったところ?


 長年ワタシのこめかみに張り付いていたシミは綺麗にとれた。ワキの永久脱毛のおかげでお手入れの必要がなくなった。その後、顔のホクロと小さいシミもとってもらった。

 ……、リフォームくらいでいいですかね、ワタシは。


 リフォームでもあの痛さだもん。

 リノベーションは……、きっとワタシには耐えられないわ。



 リフォーム? リノベーション? 

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