第27話 クリスマスは花市場からやってくる

 中国の街並みを車窓から眺めていて不思議に思ったことがある。

 すべてではないのだが、ひとつの通りに同じ商品を扱うお店が集中しているのである。例えば金物屋の商店だけが立ち並ぶ通り、水道などの配管だけが売られているお店の通り、ドレスショップだけの通りもあった。

 買い物する側からすれば便利である。ドレスが欲しければドレス通りに行ってお店を見て回ればいい。けれどもあれだけ競合していて大丈夫なのかとも心配もしてしまう。


 通りだけではない。”○○城”という大規模な施設もよく見られる。

 皮革城。25話で紹介した革製品を扱う市場。

 家具城。出かけたことはないけれど、行った人の情報だと1日では回り切れない規模だとか。

 真珠城。主に淡水の真珠や真珠を使ったアクセサリーなどの小売店が集結している。

 茶城。お茶市場。ここはワタシの大好きな場所なので、また別のエピソードでご紹介予定。

 とにかく同業種が集まっていることが多いのである。そんな市場の中に11月末~12月初旬になると必ず出かけた市場がある。


 花市場である。

 文字通りお花屋さんが立ち並ぶ市場なのだが、この時期はクリスマス関連の雑貨も取り扱っている。

 クリスマスツリー。

 オーナメント。

 イルミネーションに使うライト。

 くるみ割り人形などの雑貨類。

 電飾のトナカイなどの屋外に飾るデコレーション。

 

 生花のクリスマスリース。

 生のモミの木。


 日本の家より広い家に住んでいるので、ツリーなどはサイズが大きい。それに欧米からの駐在の人達も大勢いるせいか、どことなく欧米のクリスマス雑貨らしいものも多く見られる。実際欧米人の方もこの市場では多く見かける。というか、ここの市場の人口比率はおかしい。一瞬ここが中国であることを忘れるくらい外国人だらけである。(もちろん、お店の人は中国人だけど)


 毎年出かけては、オーナメントを買いたしたり、友達の買い物に付き合う。いくつになっても女子は女子。キラキラ可愛いものには心がトキメク。マライア・キャリーの『恋人たちのクリスマス』でも口ずさみそうな気分になれる。


 必ず買ったのは生花のクリスマスリース。

 大きさも種類もさまざまだけれど、ワタシはあえて花のないグリーン主体のものが好きだった。玄関ドアに飾るだけで気分が華やぐ。ドライになってもさほど色落ちせず長い期間楽しめた。ダイニングテーブルに飾るアレンジメントは花器の中心に赤いキャンドルが置かれ、周りを柊と赤い薔薇で飾ったもの。


 いつものように運転手さん付きのレンタカーででかけるのだが、帰りが大変なのである。みんなの戦利品を積み込むと自分達の乗るスペースがないくらいになる。ツリーなどの大型商品や生花など積み上げられないものも多いから。

 ある程度積んだところで座席に正座して乗る。足元はすでに荷物で一杯。その正座した膝の上に生花や鉢物をかかえる。運転手さんがやや呆れ気味にあらゆる隙間に上手に荷物を積んでくれる。


 そんな風に楽しく騒がしく調達してきた商品でその年のクリスマスの準備をする。子供もある程度大きくなると飾りつけも手伝ってはくれないけれど、自分で思うように飾り付けるのもこれまた楽しい。もちろん『恋人たちのクリスマス』のいい加減英語の鼻歌を歌いながら。ああ、今年もクリスマスが来るんだな、迎えられるんだな、と思わせてくれるクリスマス支度。大切な人達と過ごすことのできるクリスマス。子供達の想い出にも残ってくれたらな、と思いながら続けるクリスマス支度。


 聖誕節快楽シェンダンジェクウヮイラー

 メリークリスマス!!



 クリスマスは花市場からやってくる

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