第2話 行くぜ、中国。行ってみよう、中国。
オットの海外赴任にともない、家族のワタシ達も帯同することになった。初めての中国。初めての海外暮らしである。それでも海外旅行は好きだったし、家族で海外暮らしをさせてもらえるなんて滅多にない体験だと思い、ついていくことにした。子供たちもまだ小さく、父親と離れて暮らすのもどうかとも思ったのだ。欲を言えば英語圏の国で子供たちがバイリンガルになることも夢見たが、行先は中国になった。もちろん中国語とのバイリンガルを目指せなくもなかったが、諸々の理由で日本語教育を受けさせることになり、子供達は日本人学校、日本語幼稚園に通うことになった。
大人であれば、中国のイメージもある。それはよくも悪くも。ワタシは元来楽観的で、三国志等の中国史もキライでなく、中華料理ももちろん好きだったし、何より誰もが体験できるわけでない中国暮らしもそう悪いもんじゃないと思っていた。
折しも毒ギョーザ事件などを日本では報道していた頃。
「危ないから、行かない方がいいんじゃない?」
ワタシ達を心配してか、そう言う友達もいた。
本場の中華料理、美味しいんだろうな。近くのあの大都会へも時々は遊びに行けるのかな。万里の長城だって、九寨溝だって行こうと思えば旅行で行けるかな。
まぁまぁ能天気に考えていた。
さて、子供たちである。中国という国を知らない。かといってどこからどうやって説明したらいいのかもわからなかったので、
「チャーハンとパンダの国だよっ! さぁ行こっ」
と国際線の飛行機に乗せたのだ。
「あっ! 餃子も焼売もあるよ!」
と付け足して。
現地のマンションにて。一応海外駐在なので、セキュリティのしっかりしているマンションを会社が借りてくれている。オットは毎日会社の運転手が車でお迎えにやってくる。まるで社長にでもなった気分である。その見た目立派なマンションの窓から外を見渡しながら子供たちは言った。
「ねぇ、パンダは?」
一応日本企業が進出していて、日本人学校まである中国では中規模程度の都会である。道だって整備されているし、あたりは中国バブルの真っ最中なのか、タケノコのようにニョキニョキと高層マンションや高層ビルが建設中だ。残念ながら野パンダは見かけない。
「そうねぇ、ここら辺にはいなかったのかなぁ」
それでも後日市内の動物園でお目当てのパンダさんには会うことができた。なんだかいつから洗ってもらっていないのかわからないほど土にまみれた茶色のパンダさんだったけれど。
「ねぇ、チャーハンは?」
「そうだねっ! これは食べに行かないとねっ!」
中国語もおぼつかないけれど、なんとかなるでしょ、と家族で近くのレストランに出かけた。
よかった。写真付きのメニューだった。中国語を話せなくても指さして数を手で表してオーダーができた。
やっぱり美味しい。本場の炒飯。そして感動したのが焼きそば。日本でいただいたことのない味だった。焼きそばといってもいくつもメニューがあったのだが、ワタシは細麺で野菜といためてある焼きそばが好きだった。海老蒸餃子だって美味しかった。
焼売や餃子などいわゆる点心は中国でも広東地域(中国南部、広州などが有名)の料理であるので、ワタシの住んでいるところは本場ではないのだけれど、十分美味しかった。本場から引っ越してきた友達に言わせると、本場はもっと美味しいらしい。まあ、東京で湯豆腐食べるよりも京都のそれの方が美味しいんだろうし、それはそうなのかもしれない。でも、ニューヨークの湯豆腐よりは東京の湯豆腐の方がやっぱり美味しいんじゃないかとも思うのである。余談だが。
まあ確かに中国での外食なので、衛生面など心配事は尽きないのだが、そこはもう自己責任である。”大丈夫そう”なお店を選ぶか、日本人おススメの店に行くことになる。そうはいっても残念ながら食中毒もよく見られた。我が家は幸いひどい食中毒には襲われなかったが、それでも外食から帰ってきてお手洗いを奪いあうことも。たぶんお茶かなぁ、水道水で作っていれば十分やられる。ビールを飲んでいたオットだけはセーフだったので。
そんなこんなでのほほんとワタシ達の中国生活は始まったのである。
行くぜ、中国。行ってみよう、中国。
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