第30話 中国で出会った韓国
当たり前だが、中国には日本以外の企業も多数進出している。駐在員も恐らく世界各国からやってきている。シンガポールやカナダ系のインターナショナルスクールがあったり、ドイツ系の大型スーパーもある。スウェーデン発のインテリアショップIKEAもある。
そんな中、日本人駐在員よりも多いと言われているのが韓国人である。
日本人駐在員の為に日本食材を扱うスーパーや和食屋が立ち並ぶ日本人街があるのと同じように韓国人街もあった。
日本でも韓流ブームがあり、『冬ソナ』はいつだったかの再放送を見たら予想以上にはまってしまったが、韓ドラは『冬ソナ』だけでお腹いっぱいになった。焼き肉やキムチは好きだけれど、韓国料理と言われてそれ以外に思いつかない。
そんな程度の認識で韓国人街へと出かける。キムチが量り売りされていたり、お肉屋さんも充実している。中国市場の肉屋は不衛生でとても買い物できなかったけど、ココは衛生的で注文すると冷蔵庫や冷凍庫からお肉を出して好みの厚さにスライスしてくれた。特製ダレにつけられたプルコギ用のお肉はそのまま野菜と炒めても美味しかった。
韓国料理屋へも行った。友達がオーダーしてくれた品々はどれも美味しかった。
チャプチェ。春雨と野菜とお肉を炒めたもの。ご飯がススムおかず。
チヂミ。これは日本でもポピュラーかな。韓国版お好み焼き。
キンパ。韓国海苔巻き。巻いてある具は人参、ほうれん草、卵など日本の太巻きと変わらない具もあるが、ここにキムチが入り、海苔が韓国海苔になり、ゴマ油の香りがすればキンパとなる。種類もさまざまでオリジナルの海苔巻きに加え、ツナ入り、チーズ入り、プルコギ入りなんてものがある。
キンパは韓国料理店でももちろん食べたのだが、テイクアウトもできた。1本100円程度で子供のおやつや夕食用によく買った。子供でも1本はぺろりと食べてしまうので4、5本は買ったかな。
このキンパ、日本でも売っていないこともないのだが、1本800円したのには度肝を抜かれた。家族が満腹になれる本数なんてとても買えない。輸入食材店で全形の韓国海苔を購入して家で作ることにした。韓国海苔にごま油を少し塗って、あとは好きな具材を巻き込めば我が家風のキンパのできあがり。
中国で出会った韓国料理は日本でも美味しく懐かしく味わえた。
そうそう韓国がらみでこんな思い出がある。ある日家族で韓国料理屋に食事に行った。畳と障子の個室に通してもらい食事を楽しんでいると、障子の向こうが騒がしい。障子を開けてみると、店内は赤い服を着た人達で満杯になっていた。フライパンを箸か何かで叩いている人もいる。みんなで歌を歌ったり、シュプレヒコールを上げている。何事???
その日は2010年のサッカーワールドカップの韓国VSギリシャの試合の日だったのである。恐らく駐在の韓国人達が集まってテレビ観戦することになっていたのだ。お店の人は何も知らずに来店したワタシ達を個室へと通してくれたのだ。
日本人であるワタシ達が中国で韓国VSギリシャのサッカーの試合をテレビ観戦するなんて。しかも韓国応援団の真っただ中で。よかった日韓戦じゃなくて。ここはもう韓国の応援をするしかない。気づけばあのテレビでよく見る
「テーハミング!(大韓民国!)」
チャ、チャッ、チャ、チャと手拍子を打っていた。なんとも忘れられない外食にはなった。試合も韓国が勝ち、店は大熱狂だった。なかなかできない貴重な異文化体験。
それからもうひとつ韓国トピックスをご紹介。
中国人、韓国人、日本人。その見た目は東洋人ならなんとなくは見分けがつかなくもないけれど、同じ人種だし、同じ東洋系なのでよくは似ている。
中国人から見て韓国人と日本人の見分けは難しい。それぞれ中国語が外国語なので中国語がたどたどしいことで「韓国人か日本人のどちらかだ」ということはわかる。ここで大抵の中国人はこう聞いてくる。
「
なぜ「あなたは日本人ですか?」と聞かないかというと、韓国人は「日本人か?」と聞かれて不快に思う人が多いらしい。怒り出す人もいるらしい。先の戦争の影響なんだろうか?
対する日本人は「韓国人か?」と聞かれても不快に感じる人はあまりいないだろう。韓流ファンの人達は喜ぶくらいである。だから中国人は上記のように「韓国人ですか?」と質問するのだと、オットの会社の中国人スタッフの方から教えてもらった。
なるほどなトリビアだけれど、少し感慨深くもなってしまうこのトピックス。
戦争ってまだ終わっていないのかも。
中華料理も韓国料理もとっても美味しい。
ご近所さんは仲良くありたいものです。
折しも節分。キンパと太巻きで福を呼ぼう。「福」の字を逆さまにするのが中国流の幸運を呼ぶおまじない。(参照:第29話 春節がやってくる。)
年の数だけ豆を食べるのは日本のゲン担ぎ。
中国で出会った韓国。
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