第21話 6色のお茶のおはなし

 中国茶といえば、烏龍茶など日本人にもなじみのあるものだけれど、中国に住んで知ったことは、中国茶とひとことで言ってもものすごく種類が多いということでした。

 日本のお茶もいろいろな種類があって、茶道という文化が発展したけれど、中国のお茶もたくさんの種類があって、茶芸という文化が根付いています。


 今回はお茶のお話。習ったお茶のテキストを眺めながら書くので、少し堅苦しい説明になるかもしれません。


 中国茶というと、どうしても烏龍茶のイメージが強いのですが、数ある中国茶のなかのひとつにすぎません。

 中国茶は大きく6色の種類に分けられます。

 白、黄、赤、緑、青、黒の6つ。


 緑茶や烏龍茶や紅茶はお茶としていただくと、まったく味わいが違うけれど、もとは同じ茶葉から作られることはよく知られていますよね。

 茶葉の製造工程には発酵という過程があります。

 この発酵をさせないのが、緑茶。

 発酵を50%程度させる(半発酵)のが、烏龍茶をはじめとする青茶や白茶、黄茶。

 100%発酵させたのが、紅茶と黒茶。

 ほかにも殺青(高温で茶葉の水分を飛ばす)や揉捻(茶葉を手でもみほぐす)、揺青(茶葉を揺らして香りを形成する)などの作業工程の違いによって6色の種類に分かれるそうです。


 白茶や黄茶は中国に来て初めて知りました。

 白茶はお茶の色がほぼ透明です。

 茶杯チャーベイ(お茶を飲む器で日本のお猪口に似た形)に淹れてもらったお茶は「……お白湯???」と聞きたくなるほどの色でした。

 それでも茶杯を鼻に近づけると、ふわっとお茶の香りがして、

 いただくと、のどごしにお茶が感じられるのです。お湯じゃなかった。

 白毫銀針や君山銀針などが有名なお茶らしいですが、あまりなじみがなかったのでご紹介にとどめます。


 次は赤いお茶。要は紅茶です。

 紅茶というと、どうしてもイギリスのアフタヌーンティーを連想してしまい、中国茶に紅茶があるなんて、驚きました。

 でも世界三大紅茶といえば、

 インドのダージリンティー、

 スリランカのセイロンティー、

 そして中国の祁門紅茶キーメンホンチャだそうです。

 祁門紅茶も中国で消費される以外はイギリスに輸出されているんですって。


 中国の茶芸道具でお作法にのっとって祁門紅茶を淹れていただく。

 お味は紅茶。気分はチャイニーズ。

 西洋のティーセットでいただけば、気分はイギリスのアフタヌーンティー?

 見た目や雰囲気って大事です。


 4番目の色は緑です。

 中国茶に緑茶なんてあるの? とも思いました。

 緑茶といえば、日本茶だと思っていました。

 お茶の製造工程が同じなら中国の緑茶も日本の緑茶も同じ仲間のようです。

 中国では6色のお茶の中でももっともポピュラーなんだそう。

 ワタシが大好きな龍井ロンジン茶も緑茶になります。


 浙江省の杭州が産地になる龍井茶。

 茶芸では緑茶は縦長のグラスを使います。グラスに茶葉を入れてそこへお湯を淹れて茶葉の踊るさまをまず鑑賞します。

 先生にそう言われたときはなんと優雅なお茶のいただき方なのかしらと感心しました。早く飲みたいわ、茶葉なんてお茶漉しで淹れればいいじゃない、などとは思ってはいけません。

 その後、茶葉が舞い、下にゆっくりと沈むのを待っていただく。

 香りを楽しんだり、茶葉が踊るさまを鑑賞したり、茶芸も奥が深いです。

 新茶の時期は日本と同じ春。

 淡い黄緑色のお茶。若い茶葉のさわやかなお味。

 ワインでいえばボージョレーヌーボーといったところ?

 熱い龍井茶ももちろん美味しいのだけれど、ワタシが大好きなのはアイス♪ ポットで淹れて冷蔵庫で冷やします。

 のどごしサイコー! 夏はこれに限ります。


 5番目の色は青茶。

 お待たせしました。烏龍茶はここのグループになります。

 青茶といっても、青い色のお茶ではありません。

 かといって、日本で売られているようなペットボトルの烏龍茶の茶色でもありません。

 ワタシのお茶の先生もしてくださったお友達は、

「日本の烏龍茶ってなんであんな色なんだろ……」

 とよくつぶやいていました。

 緑茶をもう少し濃くしたような緑色です。

 ワタシが秋冬に好んでいただく鉄観音ティングァンイン茶もこの青茶になります。


 茶盤チャーパン(木のお盆のようなもの)の奥に置いてある蓋椀ガイワンで淹れます。

 もっとも中国茶らしい茶芸かなぁ。

 蓋椀は日本の蓋付のお湯呑に似ているけれども、これは日本でいう急須の役割。

 器用に蓋を少しずらして、お茶を淹れます。

 日本の茶道と同じく、お茶を淹れる手順もお作法もあります。淹れるお茶の種類によって使うお道具も作法も異なります。ワタシなどは手順書を見ながらえーと、えーと、とたどたどしくしか淹れられませんが、上手な方のお作法は本当に流れるようで舞を舞っているかのようなお作法です。


 細長い形の聞香杯ウェイシャンベイにお茶を淹れてその上から品茗杯ピンミンベイ(いつもの茶杯)を蓋のように被せてお客様に供されます。

 出されたら、ふたつの茶器をひっくり返します。

 ひっくり返したので、下が品茗杯で中に裏返った聞香杯。ここでゆっくりと聞香杯を持ち上げるとお茶は下の品茗杯へと入ります。

 まずは手に持っている聞香杯の香りを味わいます。そう、お茶は品茗杯に移動したので空の茶器です。その残り香を楽しむ。この茶器でお茶を飲むことはありません。香りを楽しむだけの茶器。まさに聞香杯。優雅だと思いませんか?

 それからお茶の入っている品茗杯でお茶をいただきます。


 新茶の時期は秋。

 緑茶よりこっくりした味わいです。

 ワタシ的には中華料理をいただくときに一番合うお茶だと思っています。

(個人的に好きなだけかも……)


 最後は黒茶。

 ダイエットでよく知られる普洱プーアール茶が黒茶。

 黒といっても、お茶の色はダークブラウンといったところかな。

 紅茶と同じお茶道具でいただきます。

 これはワインと同じで何年も寝かせています。

 20年ものや30年ものなんてものもあるみたい。

 もちろん、寝かせている期間が長ければ長いほど高価。

 緑茶がボージョレーヌーボーだとすると、こちらは年代物のワインということになります。

 お茶の色味もそうだけど、ふか~みのある味わい。

 ダイエットのほかにも老化防止や心臓病予防なんて効果もあるらしいです。いいこと尽くし?



 中国には医食同源という言葉があるように、お茶にもさまざまな効力があるようです。

 普洱のダイエットは有名だけれど、そのほかにも

 緑茶のがん予防、

 青茶(烏龍、鉄観音)の解熱、

 紅茶の美容効果、血糖値を下げる、などなど。

 効果だけ聞いていると、どれもまんべんなく飲まないと(笑)。


 それから日本ではよく知られている茉莉花茶モォリィファーチャ(ジャスミンティー)は花茶という部類になります。上記の6種類に属していません。それはお茶のブレンドだから。緑茶にジャスミンの香りづけをします。


 お茶の先生に習った内容を復習がてら整理してみました。

 講義っぽくってつまらなかったらごめんなさい。


 長々と書いてしまいましたが、

 要は……、


 いろいろ飲んでみて、自分が美味しいと思ったお茶で楽しいティータイムを過ごしましょう♪


 ……ということです。



 それから、中国の飲食店でお食事をするときの豆知識(?!)

 基本、タダでお水やお茶は出てきません。出てきたとしてもお腹をこわす水道水やワケのわからないお茶です。有料の飲み物を注文するのが普通ですが、自分の好きな茶葉を持っていって「これにお湯入れて(^_-)-☆」とお願いすることもできます。お土産に買った中国茶(1回分ずつ梱包されているものがあります)やもしくは懐かしい日本茶のティーバッグなどを持って行ってお願いするのもいいかもしれません。

 ワタシ達ママランチでは数種類のお茶の葉を持ち込み(大体はプーアールや鉄観音、龍井など)をそれぞれのポットに入れてもらい、ぐいぐい飲んでは「加水ジャーシュイ(おかわり)」をよくしていました。



 6色のお茶のおはなし。



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