第20話 って中国でハロウィン?
中国へ行ったのは今から7、8年前の夏だった。
毎日のように起こる異文化ショックと、何から何まで教えてくれ、世話してくれる優しい友人たちに支えられ、恐ろしいほどの暑さ(40度越えの日もあった)もおさまり、ようやく秋の気配がしてきた。
「ハロウィンパーティーをしよっ!」
スクールバス会のママのひとりの発案であっという間に一大イベントが企画された。
今でこそ、日本でも10月になればハロウィン、ハロウィンとクリスマス並みの盛り上がりを見せるが、そのころはまださほどではなかったと思う。テレビで渋谷など都会で仮装した若者がイベントに集まったなんてニュースが流れたり、ジャック・オー・ランタンの入れ物に入ったお菓子が売られていた程度ではなかっただろうか。
少なくともワタシが住んでいた地域で子供達が参加できるようなハロウィンイベントはなかった。
それがまさかのハロウィンである。しかも中国で。アメリカ駐在ならまだしも。中国国内も当時の日本と似た感じだっただろうか? 記憶が定かではないが、欧米系スーパーでハロウィン関連の買い物はできた。
「○○ちゃん達ももちろん参加するでしょ?」
その頃になると、ワタシも下の名前にちゃん付けで呼んでもらえるようになっていた。今までのママ友とのお付き合いでは「子供の名前+ママ」が定番の呼び名だ。太郎くんママとか、はなちゃんママといったように。自分の下の名前を呼んでもらったのなんていつぶりだったのだろう。ワタシも彼女たちをちゃん付けで呼んでみた。年齢が上だとか下だとかあるけれど、全員ちゃん付けで。それだけで距離感がグッと縮まる気がするから不思議なものである。
じゃ、まず打ち合わせ! とイベントの内容を決め、準備することを書き出し、ポンポンとグループを作り、担当係を決めていく。もうそれは新参者のワタシがふん、ふん、と相槌をうっているうちにパパパパーと決まっていった。
①学校から帰ってきた子供達を仮装させて日が暮れる頃に中庭集合。
②ハハ達は各自家に戻り、子供達を待つ。(もちろんお菓子を用意して)
③縦割りにグループ分けした子供達が各家庭を回る。
④すべて周り終えたら敷地内のレストランに母子とも集合してパーティ。
10月31日。雨にも降られず、暮れゆく夕刻に中庭で集合してまずは子供達の記念撮影。どの子も可愛らしいし、カッコいい。上は小学6年生から下は幼稚園児まで。(中学生は塾等で不参加……)
じゃあ、10分後にスタートね、と言いおいてハハ達は自宅へ。混乱しないようにグループごとに周る家の順番も指定してあった。来られる側も一気じゃ太刀打ちできない。波は3つ来る。
家に戻り、最終調整。家の中には上げないという約束で玄関先でお菓子を渡すことになっていたのだが、一応玄関くらいはハロウィンの装飾をしてみた。怖がらせる演技力には自信がなかったので、(実際お化け屋敷みたいなお家もあったそう:子供談)電気を消して、ろうそくの灯りだけにしてみる。事前にハハ達で作ったほんものかぼちゃのランタンにもろうそくを灯す。
ひとつめの波。
「トリックオアトリート!」
「お菓子あげるからいたずらはやめてね~」
なんて言いながら、お菓子を渡す。一応占いつきにしておき、喜んではもらえた。
波がひいた。暗闇と沈黙の自宅。ふとジャック・オー・ランタンと目が合う。ふふふ。なんだか楽しいね。
ふたつめの波。みっつめの波。いたずらはされずにお菓子を手に楽しく次のお宅へと移動していく子供達。うちの子供たちももちろんグループの中におり、特に下の子は最年少だったので大きい6年生のお姉さんに手を引いてもらって嬉しそうにしていた。いっちょまえにガールズグループに入れてもらったので、他のお姉ちゃんたちもよってたかって世話をやいてくれたらしい。いまだにハロウィンになるとあの年の話を必ずしてくる。たった小一時間程度の出来事だったのに、そのくらい小さい子にとっての幼い頃の優しくしてもらった想い出は強烈なのだ。
終了後のパーティーが盛り上がらないわけがない。おかげでまた
子供達も大きくなった。もう自宅にお菓子をもらいにくる子供達もいない。
中国にいる間は形は変えながらも毎年続いたこのイベント。いつしかハハ達まで仮装しはじめ、それがメインになった年も? あった。例の仕立て屋さんでわざわざ服をオーダーしたツワモノもいた。
日本でもハロウィンの時期になると必ず思い出すあの年のハロウィン。
きっとワタシにとって人生最高のハロウィンイベント。
って中国でハロウィン?
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