第60話 陰陽五行説とか神話とか

 セブ島を旅行したときに滞在したホテルの有名なスパを利用しました。東南アジア随一だとかとにかく有名らしい。

 泊ったことのある友達が「絶対おススメ! 行って来て!!」と強く勧めるので、ワタシはさっそくレセプションで問い合わせました。するとなんと滞在期間のほとんどが予約で埋まってる。さすがというかなんというか。


 それでもなんとかフェイシャル1時間コースの予約を入れてもらいました。なんでもひとりの予約のために何時間も前から準備を始めるんだそう。専用ヴィラ全体をワタシに合わせて選んだアロマオイルの香りで焚き染めてくれるんだとか。(予約時にアンケートに答えていました)

 確か施術の6時間前からキャンセル不可と言われました。そのくらい事前準備に時間がかかっているっていうことなのかな? (施術は1時間なのに)


 さてさてそんなアロママッサージでの至福の時間はあっという間に終わりセラピストさんと話をしました。

「お客様に合わせたオイルはアイアンタイプです」


 アイアン? 鉄?? 鉄の香りというと錆びた鉄臭い匂いしか思いつきませんでしたが、施してくれた香りは全然鉄臭くなくとてもいい香りのオイルでした。ワタシは好きな香りと苦手な香りがはっきりしているのですが、間違いなく好きな香りでした。

 セラピストさんのセールストークにのせられて自宅用にオイルを買って帰りました。


 そして中国に戻ってからオイルの事を少し調べたらなんと中国の陰陽五行説いんようごぎょうせつをベースにしたコンセプトのオイルマッサージだったのです。アイアンとは鉄ではなく陰陽五行説の金のことだったのです。


 陰陽五行説とは、

もくごんすい

の五行と、陰陽を組み合わせます。

 陰陽は「陽」が「兄」が語源で「え」と呼び、陰の語源が「弟」で「と」と呼びます。

五行と組み合わせると、

木:きのと、きのえ

火:ひのえ、ひのと

土:つちのえ、つちのと

金:かのえ、かのと

水:みずのえ、みずのと

となります。


 五行は自然現象などを区分した5つの基本要素です。

木:木の花や葉が幹の上を覆っている立木が元となっていて、樹木の成長・発育する様子を表し、「春」の象徴。

火:光り輝く炎が元となっていて、火のような灼熱の性質を表し、「夏」の象徴。

土:食物の芽が地中から発芽する様子が元となっていて、万物を育成・保護する性質を表し、「季節の変わり目」の象徴。

金:土中に光り輝く鉱物・金属が元となっていて、金属のように冷徹・堅固・確実な性質を表し、収穫の季節「秋」の象徴。

水:泉から湧き出て流れる水が元となっていて、これを命の泉と考え、胎内と霊性を兼ね備える性質を表し、「冬」の象徴。


 五行説は「木は火を生じ、火は土を生じ、土は金を生じ、金は水を生じ、水は木を生ず」という『五行相生ごぎょうそうじょう』の考えだそうです。

 木は燃えて火になり、火が燃えたあとは土になり、土が集まったところに金(鉱物)が産まれ、金は腐食して水に帰り、水は木を育てます。「木→火→土→金→水→木」と巡りながら相手を生み出す効果があるということだそうです。

「相性がいい」という言葉の語源はここだそうですよ。


 また「水は火に勝ち、火は金に勝ち、金は木に勝ち、木は土に勝ち、土は水に勝つ」という『五行相剋ごぎょうそうこく』ともいいます。

 水は火を消し、火は金を溶かし、金(刃物)は木を切り、木は土の養分を吸い取り、土は水をせき止めるという関係性です。


 じゃんけんみたいですよね。どれもがどれかに影響を与えていて最も強いものや最も弱いものは存在しません。どれか一つでも欠けてしまえば関係性が崩れてしまいます。


 この陰陽五行説は紀元前300年ごろに中国で整理され、政治経済、医学、あらゆる生活面にあてはめられたそうです。

(ちなみに紀元前300年ごろは始皇帝の中国統一前の戦国時代。日本は古墳時代の前の弥生時代です)


 順に木・火・土・金・水に対応します。

方角:東・南・中央・西・北

色:青・赤・黄・白・黒

季節:春・夏・土用・秋・冬

五臓:肝臓・心臓・脾臓・肺・腎臓

味:酸味・苦味・甘味・辛味・塩味

星、曜日:木・火・土・金・水


 日本にも飛鳥時代に伝わり神道にも影響を与えます。天文学、暦学、易学、時計などとも関連深く、天体学者は特に重宝したんだとか。この考え方をもとに太陽や月、星の運行を観察して吉凶の判断をしたんだそう。この五行陰陽説を元に日本で独自の発展を遂げる呪術や占術を「陰陽おんみょう道」と呼ぶようになります。安倍晴明の世界ですね。

 明治時代に新暦が採用され、陰陽道は迷信だといわれるようになったそうですが、土用の丑の日だとか、栄養学で五色の食物を摂るといいとされる五色とか、今も生活に浸透しているものもありますね。それに季節の春と色の青で「青春」の語源はここですって。


 また中国の天文学では星座の見える方向を四つに分けて、見える星座を動物になぞらえ四神しじんとしました。「天の四方を司る神獣」とされています。

東の青龍(五行では木、色は青、季節は春)

南の朱雀(五行:火、色:朱(赤)、季節:夏)

西の白虎(五行:金、色:白、季節:秋)

北の玄武(五行:水、色:玄(黒)、季節:冬)


 こちらも日本に伝えられ、各地の古墳や神社などにも四神の絵や彫像が飾られています。


 ゲームをされる方は四神を聞いたことがあるかもしれませんね。また三国志などの中華系ファンタジー小説にもモチーフとして登場しますね。


 これに五行説に照らし合わせて中央に麒麟を配するそうです。麒麟の五行は土、色は黄、季節は土用だそうです。


 平城京の朱雀門、会津藩の白虎隊など日本の歴史にも登場します。横浜中華街にも朱雀門、玄武門があります。

 平安京は四神思想を元に造られたそうです。東西南北と中央を守護する社があります。東の青龍が八坂神社、南の朱雀が城南宮、西の白虎は松尾大社、北の玄武が上賀茂神社、そして中央の麒麟が平安神宮。今も続く京都の時代祭では四神旗が掲げられるそうです。


 いにしへから深く関わってきた日本と中国。中国の影響を反映させながら独自にも発展させてきた日本の文化。

 現代に至る日本文化は「これは中国から伝来したもの」「これは日本独自のもの」なんて分けられないほど混ざり合って相乗効果で発展してきたものかもしれませんね。


 2020年のNHK大河ドラマのモチーフは麒麟ですね。戦乱の世に平和をもたらすという伝説の幻獣だそうです。

 また四神には魔除けの威力もあるのだそう。


 世界中が未知のウイルスに脅かされるという未曾有の事態に陥っている2020年。麒麟はやってきてくれるでしょうか。四神は世界を守ってくれるでしょうか。




 陰陽五行説とか神話とか





※参考文献

Wikipedia

日本文化研究ブログ https://jpnculture.net/inyougogyousetsu/

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