第44話 ところ変われば事情はサマザマ

 フランス人は1日2回

 アメリカ人は1日3回

 二ホンのオバサンは1時間に1回


 何の話かおわかりだろうか。

 おトイレに行く回数である。

 確かに日本人はおトイレによく行く民族かもしれない。高速道路のサービスエリアのあの広大なおトイレが民族性を物語っている。

 対して世界的観光地、フランスのヴェルサイユ宮殿にはたった2か所にしかおトイレがないんだとか。(添乗員さんが言っていた話で実際には調べてません。あしからず)

 行けるときに行っておくとか、習慣づけるとかお手洗いのタイミングや回数はある程度自分でコントロールができるものである。


 ニホンのおトイレは素晴らしい。

 いまや公共のお手洗いでもウォシュレットや温かい便座は付いているし、音を消すための水流の音が流せたり、便座を除菌するシートやカバー、至れり尽くせりである。清掃も行き届いており、トイレットペーパーがないおトイレなぞほぼないといっていいと思う。


 ただ世界は広い。おトイレ事情もさまざまだ。公共トイレにトイレットペーパーを置いておけば普通に持っていかれるところだってある。恐らく持っていく人にも盗難というほどの罪の意識もないと思う。そもそもトイレットペーパーを使わない(トイレットペーパーがない)国だってある。もっというとトイレそのものがなくて用を足すときに地面に穴を掘る地域だって世界にはある。

 

 旅行に行ったエジプトのおトイレはチップ制だった。(20年以上前の話です。現在はわかりません)ローカルのおトイレ事情まではわからないが、ワタシ達観光客が行くようなおトイレはいたって普通の個室の洋式トイレであった。

 もちろん男女別。その女子トイレに男子がいるのである。その男子がワタシ達がトイレを利用したあとに洗面台に行くと蛇口をひねって水を出してくれるのである。んでワタシ達は手を洗ってから彼にチップを渡すのである。

 なんだかなぁ、お水くらい自分で出すよ、とも思うのだが、ガイドブックにもトイレチップの話は載っていたし、「郷に入っては郷に従え」に従ってチップを払った。香港だったか有料の公衆トイレもあり(もちろん無料もありました)、おトイレに行くのに小銭を用意しなきゃいけない国もあるんだわ、と思ったものである。


 さてさて、では本題の中国のおトイレ事情。女子トイレの話ですので、男性の方や女性の方も読む時間やタイミングにご注意くださいね。


 中国の自宅は普通の洋式のおトイレだった。ウチは大家さんにリクエストしてウォシュレットもつけてもらった。日本と変わらぬ生活ができてとっても有難かった。お友達の家のおトイレも同様である。


 ここからは公衆トイレの話である。


 ニイハオトイレという言葉を聞いたことがありますか? よかったらググってみてください。


 中国の公衆トイレの一種である。(すべてじゃないですよ)

 入ったこともなく現物を見たこともない。話を聞いたりネットで写真を見ただけだが、とにかく個室じゃないのである。扉がないので用を足しているときに他の人が入ってくると見えることになる。目だってあっちゃう。便座の配置によっては円形に設置してあるところもあって、最中に皆さんと顔を合わせてしまう。だから「ニイハオトイレ」(実際にニイハオなんて言いませんよ!)

 いくら中国に住んでいるからってこんなところデンジャラスゾーンに挑むつもりはない。利用も拝見もしたくない! 欧米資本のホテルなら掃除の行き届いた日本と変わらぬのおトイレなので、外出先ではホテルのおトイレに行くようにしていた。というか冒頭の話ではないが、ある程度おトイレの回数は自分でコントロールができるので極力外ではおトイレに行かないようにしていた。

 

 そしてもうひとつ。溝トイレというものがある。


 こちらは個室は個室なのである。その個室には便座はなく、スッキリと一本の溝がありそこを小川のごとく水が流れているのである。その溝が個室すべてを貫通しており最上流から水が出ていて最下流まで流れていく。要はその溝に用を足すと上流から下流へと流れていくのである。


 これは「ニイハオトイレ」よりはまだまだ街中にあり、商業施設などで見かけることがあった。ワタシ達が時折出かけたお茶市場や毛皮市場などがそうだったと思う。なるべく行きたくないが、お茶市場はこのエッセイでも紹介したのだが、どこのお店でもお茶をどんどん試飲させてくれるので、どうしてもおトイレには行きたくなるのである。溝トイレと対峙しなければならないのである。(ニイハオトイレじゃなくてホントによかった)


 見ず知らずの中国人ならいざ知らず、誰が上流であっても下流であっても日本人の友達同士同時にインは精神的にムリである。


 ベストは日本人だけでひとりずつ利用することだが、当たり前だが中国人だって入ってくる。締め出すわけにもいかない。

 そこで友達の中で順番を決めて入ることにした。

「桜井、いきます!」

 まるで「アムロ行きまーーす」のガンダム出動のようにコールをしてから個室へと向かう。


「上流にひとり入ったよ!急いで!!」

 外から友達の声がする。史上最速で用を済ませて個室を出る。


「今なら誰も来なさそう!」

 トイレの入り口にも見張りに立ち、中の友達に声をかける。

「はい! 次〇〇ちゃん!!」

「終わりました! △△ちゃん、どうぞ。これで最後ね!」

 全員でおトイレから出てきて、大きなため息。チームで一試合終えた気分。用を足すのも一苦労である。



 日本に帰国すると空港のトイレでしみじみ日本に浸る。

「あああ、日本だぁぁぁ」

 温かい便座、ウォシュレット、荷物を置く棚やフック、積み上げられていても盗まれないトイレットペーパー。

 日本の技術や気配りや道徳心は素晴らしい。


 イマドキ個室に入ったら電気がついたり、便座が自動で開いたり、便座を離れればこれまた自動で水が流れ、除菌コートまでバッチリ。手洗いだって水も温水も出て風で手を乾かしてくれたり、パウダールームがあったりすればゆったり座ってメイク直しもできる。おむつ替えの専用コーナーだって、小さい子用の子ども便器があるところだって別に珍しくない。


 まあところ変わればさまざまと言ってしまえばそれまで。

 これもまた貴重な異文化体験ではある。

 ニホンがノーマルでもスタンダードでもない。


 ただどんなスタイルにせよ、おトイレの不衛生さから病気が広まってしまうような地域は早くなくなればいいのに、とは思う。用を足したら出したものは衛生的に処理されて、出した人は手を洗って衛生管理、病気の予防。まずはその知識を広めることなのかな。


 ハイテクトイレの開発ももちろんいいのだけれどね。ニホンじゃ、おトイレが快適すぎてスマホを持ち込んで長居している人も多いんだとか。え? もしかして今!?




 ところ変われば事情はサマザマ。






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