第53話 「映え」好きなチュウゴクジン

 最近日本のニュースで外国人観光客の困った行動で観光地が迷惑や被害を受けていると聞くことがあります。その中で本来立ち入り禁止の箇所に入り込んで写真を撮ったり、撮影のために桜などの枝を折ってしまう迷惑行為があります。

 全員がそうだとは言わないけれど中国人が多いんじゃないかなと思うのです。なんてったって彼らは写真好き。そう「映え」が大好きなのです。


 街中でもよく写真を撮っている光景を見かけました。特に観光名所でも景色が綺麗なところでなくても。若い子ばかりでもなかったような気がします。しかも皆さん撮られなれているのかモデルさんのようにワンショットワンショットでポーズを変えてゆくのです。まるで雑誌の撮影かのように。

 パシャパシャパシャと。そんなにたくさん撮ってどうするんだろ。これはワタシの要らぬ心配。綺麗に撮られたい、カッコよく見られたいがために自分磨きをするのは悪いことではないですしね。迷惑のかからない範囲での写真撮影なら微笑ましいものです。「映え」る写真をSNSなどにアップして評価いいねももらえるでしょうしね。


 そんな「映え」好きなチュウゴクジンのメインイベントじゃないかなと思えるのが結婚写真だと思います。古い町並みを保存している観光地区や綺麗な花の咲いている公園などでは年中タキシード&ウェディングドレス姿の新郎新婦を見かけました。

 もちろんこちらはプロのカメラマンや照明さんメイクさんも立ち会っての本格的な撮影です。あるときなぞ雪の降る真冬に肩をあらわに出したドレス姿で撮影をしているカップルがいました。恐らく気温は氷点下零度くらい。見ているこちらが凍えてしまいそうな中、優美な笑顔でカメラに納まっていました。たまたま予約していた日が雪になってしまったのか、雪の日を狙っての撮影なのかは聞いていないのでわかりませんが撮影にかける情熱たるやすさまじいわぁと思ったものです。新婦サン風邪ひかなかったかしら⁉️


 そしてなんと車で移動しながらの撮影もよく行われていました。主役の新郎新婦は花で飾り付けたオープンカーに乗っています。その彼らのオープンカーの前をジープなどの車が走ります。こちらも屋根を外してあり、ここにクルーが乗り込み後ろのオープンカーを撮影するのです。

 新郎新婦は映画やMPVの撮影のようです。ふたりで見つめ合い、仲良さげにささやきあい、ええ、チューもありでしょうね。そんなふたりをこれまた連写連写の嵐です。あれは動画なのかしら? 写真なのかしら? どちらともかもしれませんね。

 たとえオープンカーの座席にはふたりきりかもしれないけれど、公道を走る車(しかもオープン)であれだけイチャイチャできるものです。国民性なのかしら。しかもきっとその写真や動画を人に見せるのでしょう。いやはやスゴイわ。国民性なのかしら。


 そしてそんな風に撮影した写真は当然現像されることになります。写真集のように仕上げたり、大きく引き伸ばして額装したりしたりするようです。日本でも結婚式や成人式の写真はそうしますものね。欧米の人たちもフォトフレームに入れた自分や家族の写真を所せましと飾りますしね。そんなところは万国共通かもしれません。


 ですが友達に聞いた不可思議な中国人ご夫婦をご紹介。

 ワタシたち日本人駐在家族は賃貸契約の家に住みます。わざわざ家を買ったりしないもんね。そしてそれらの家はありがたいことに大抵家具家電付です。ワタシの住んだ家もそうでした。そして棚にはオブジェが飾ってあったり、壁には絵が掛けられていました。センスのいい大家さんだったのでワタシたちはそのままのインテリアの中で暮らしていました。

 さて、ある友達の家の寝室にはなんと大家さんご夫婦の結婚式の写真が飾られているんだそうです。しかもかなりの大きさのサイズで額装されベッドボードの上に。若かりし新郎新婦が額と額をくっつけて見つめ合っているそうな。

「外しちゃえばいいじゃん。出ていくときに戻せばいいんだし」

 ワタシたちはみんなそう言いました。すると友達は

「ときどき写真が飾ってあるかどうか点検にくるんだもん。抜き打ちで」

 と苦笑いするのです。

 ???

 なんっじゃ、そりゃぁぁぁぁ! 一同仰天、からの大爆笑です。

 そんなに飾っていて欲しいのだろうか。自分の家とはいえ、ヒトに貸している寝室に掛けていてほしいんだろうか。大事な写真ならご自分の家に持っていけばいいのに。


「映え」好きでもいいです。ワタシたち日本人だって「映え」好きです。でもね、個人の「映え」好きを人に強要はしなくてもいいんじゃないかなぁと思うのです。せめてSNSとかで不特定多数に見てもらって「いいね」をもらうくらいで満足しようよ。

 まあね、このご夫婦(というか奥さん?)が特殊でチュウゴクジンみんながそうではないと思いますけれどね。

 同じ「映え」好きでも方向性というか、やっぱり国民性ってあるんだなぁと痛感しました。


 日本でもSNSにアップさせるために写真撮影を優先して出来立ての食事が冷めてしまったり、食べられない量や数をオーダーして食品ロスを増やしているなんてこともよく見聞きします。


 なにごともね、ほどほどにね。

 でもなにごとも楽しめるっていいね。



「映え」好きなチュウゴクジン

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