第58話 【特別寄稿】憎むべきは病
2020年1月30日
オリンピックイヤーが幕を開け、すでに1カ月が過ぎようとしています。そんな新年早々に世界を駆け巡るニュース。
新型コロナウィルス
中国で新型のウィルスが発生したらしいとニュースが流れたのはたぶん半月ほど前だったでしょうか。
それがあれよあれよと患者が増え、現在感染者は中国国内にとどまらず世界中で患者が発生してしまっています。
発生源とされている中国湖北省武漢市は封鎖されました。
その武漢市に滞在している日本人の方々が救援機で日本に帰国されています。
2003年に発生したSARSの事例を覚えている人もいますよね。
今回の新型コロナウィルスの患者数がSARSのそれを超えたそうです。
いつの時代も原因不明の病気は未知で恐ろしいものです。誰だってかかりたくないし病気を恐れる気持ちもわかります。
できうる限りの方法で病気にかからないように予防したいものです。
今回も患者数が何人に増えた、何人が亡くなったとニュースが流れます。感染してしまった方の一日も早い回復を心より願っています。お見舞い申し上げます。
日本でも感染している人がいます。どこから来た人だとか、どこに在住の人だとか報道されます。ワタシたちが知りたいのは病気にかかってしまった人の個人情報ではありません。
・予防するにはどうしたらいいか
・どんな症状が出るのか
・もしかかってしまったらどうしたらいいか
・どういう治療をするのか
報道機関の方、皆さんの伝え方でニュースを受け取る側の感じ方も変わります。どうか心して正しい情報を伝えてください。野次馬的な扱いをしないでください。
公平・公正な報道をお願いします。
帰国なさった方がたは犯罪者ではありません。
ストレスを抱えての異国暮らしから解放されてようやく日本に戻られた方々です。
この上無責任な発言などで傷つけるようなことがあってはなりません。
日本を訪れている中国人の方々も犯罪者ではありません。
大型連休を利用しての日本旅行を楽しみにしていた人たちです。
中国人だからと忌み嫌うことはあってはいけないと思うのです。
もちろん体調が悪い方、あるいは感染した恐れがある方は旅行の中止や休養をお願いしますけれどね。
同じく中国湖北省武漢市に住んでいる人たちも犯罪者ではありません。
正しい情報がもっと早くに示されていれば。
もっと早くに移動制限がかかっていれば。
中国の大型連休「春節」は旧暦に従っています。10日間あまりの休暇を利用して多くの人が旅行や帰省をします。13億人の民族大移動とも言われます。この春節休暇が今年は1月下旬で(2月中旬の年もあります)病気の流行と重なったのも不幸でした。
中国人は日本人には考えられない生き物を食べます。
もう少し衛生的に食材を加工されていたなら、とは思います。
病気の情報ももっと早くに公表されていたなら、とも思います。
各国政府やWHOの対応がもっと早かったなら、とも思います。
でも「たら・れば」を言っていても現状は改善されません。
多くの省で春節が終わって再開する「仕事始め」の日程が延期されるようです。感染予防のため工場操業停止の命令も出ているそうです。
皆さん、身に着けているもの、家にあるものに
発注していたものが届かない、在庫がない、品切れになってしまう。普段あってあたりまえのものが届かなくて不便なことや困ることも増えるでしょう。
それでも送れ。それでも作れ。と中国の工場に命じますか?
中国もこれ以上の感染拡大を防ごうと省政府単位で操業停止命令を出しているのです。
こうした
駐在員を支えるための仕事に就く方
彼らに帯同している家族
夢や希望を叶えるために中国で学んでいる人
自分が「中国に行きたいか行きたくないか」ではありません。
「中国人を好きか嫌いか」でもありません。
「中国に行く人を応援するかしないか」でもありません。
「中国で仕事や勉強をする人を理解してあげましょう」でもありません。
好きで病気にかかる人なんていません。
中国から戻ってきた人を
中国からやってきた人を
彼らの家族や大切な人を
中傷したり、病原菌のように忌み嫌ったりしないでください。
病気から避難してきた人に対して不必要な区別やいわれのない差別はやめましょう。
「〇〇ちゃんのお父さんって中国で仕事しているんだって」
「〇〇ちゃんも病気なんじゃない?」
「アイツの母さんって中国人だっけ?」
「アイツもやばくね?」
こんなひとことが傷つけます。家族に中国と関わりがある人がいても、その人は病原菌ではありません。お願いです。自分が言われたら傷つくことを人に言わないでください。
まずは手洗いうがいで自身を守りましょう。
病気に対して正しい情報を入手しましょう。
デマを流すのはやめましょう。
どうか今から発する発言や投稿するコメントが誰かを傷つけないか、少しでいいので考えてください。思いやってください。
もし自分が病気にかかってしまったなら
もし自分の大切なひとが病気にかかってしまったなら
同じことを言えるのかどうかを考えてみてください。
時として言葉は人を傷つけるナイフにもなりえます。
けれども人の心を温め、癒し、寄り添うことができるのも言葉です。
中国語で「がんばれ」は油を加えると書いて「
加油! この病気で大変な思いをしている人たちへ
どうか病気で苦しむ人に「思いやり」を「添えて」あげてください。
自由に出かけられる。
大切な人と一緒にいられる。
美味しいごはんが食べられる。
そんな日常が早く戻りますように。
憎むべきは病。
人を憎むことのないように。
1日も早く病が根治しますように。
きっと人は病に勝てる。
【特別寄稿】憎むべきは病
※なるべく多くの方のお目にかけたいと思い、このエピソードだけを新作として病気の終息宣言が出るまでの期間限定で公開します。終息後もこちらのエッセイでの記事は残します。
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