第57話 錬金術師との出会い…武器開発にかける熱き魂!!

 それは2016年の春。

 少しずつ暖かくなってくる気配を感じていた時に、名古屋在住の方で、「LARPが気になる…!」とツイッターで呟く人がいた。彼の名前は、ナリ(※1)さん。


 そんな彼に著者が話しかけることがご縁でスタートした、これは───もう一つの、LARPの物語。


(※1)ナリ…今世間を揺るがす国内での安全性に目を向けた完成度の高いLARP武器を手がける『Arkemic』の煉金卿ナリその人。Arkと呼ばれる箱3Dプリンターを駆使した、様々な形状の物品を創造できる。日本国内でこの技術を持つのは、彼ただ一人である。(2018年2月現在)


 ナリさんは、その熱い想いをどうすればいいだろうと悩みまくった結果、なんと単独で上京、というか上玉(!?)。愛知県から埼玉県まで、熱き想いをエンジンにしてレイムーンLARPに参加してくれたのだ!


 しかし、宿もなかなかどうして大変。(一応、入間市駅近くに1つだけビジネスホテルはあるのだが…)そこで、著者の家にて前日に宿泊と相成った。その時、近場の公園で軽く演技戦闘など楽しみながら、ナリさんの想いをたくさん聞くことができたのである。


「ぼく、3Dプリンターで色々作る技術を持っていまして……安全でなおかつ格好いい、日本国内のクリエイターが作るLARPの武器や防具を、是非作りたいと思っているのです」

「おおおおお…!! こ、これはなんという出会い…!!」


 海外には、Epic Armornyというメーカーが、既に大きな工場を獲得し、良質なLARP武器を大量生産している。おそらく、日本も最初はEpic Armornyを個人で輸入、購入しながら触れていくだろうと思っていた。しかし、それでは、国内のクリエーターが育たないし、国内でLARPアイテムの市場を形成するにあたり遅れが生じるだろう。


 Epic Armornyの武器そのものも全てが安全とは言いがたく(海外は金属鎧や革鎧を着ることが主流になっている向きもあり、布衣装メインである日本では硬すぎたりする)、安全面でどのように広めていけば良いのか、私たちも頭を悩ませていたのだ。


「それならば、是非、CLOSSとしてご協力させて下さい! 星屑が開発した物に直接触って、様々な部分を研鑽していくことができれば、きっと素敵な武器が出来上がります!」


 こうして、我々のArkemic×CLOSSによるLARP武器開発プロジェクトが極秘裏にスタートしたのだ!


 ナリさんの研究による試行錯誤は時間もお金も結構かかる。その努力たるや、外から見る人間には知るべくもない。しかし、ナリさんは諦めず、じっくりと、本当に錬金術師が錬成し、研究していくがごとくに、綿密な作業を繰り返した。


 まずはデザインを極限にシンプルにして、最初にできた剣。それはかなり硬く、柔らかさにムラがあった。どれだけの柔らかさが良いのか、埼玉と名古屋という遠距離の中で我々は何度も試作品のLARP武器を持ち寄り、郵送し、話し合った。


 そして───「販売基準の、1つの回答が出ただろう」。我々はついにその決断を元に、テスト開催『星降る森の魔法市』にArkemicはCLOSS出展スペースへと委託販売することになった。たった2本の、努力の結晶。その結果は───


 なんと、正規価格でだった!!


 もちろん、色合いがもうちょっと味わい深く欲しい、デザインをさらに複雑にして欲しいなどの希望はあったが、購入者の方々はそれでも、「Arkemicにさらに頑張って欲しい。これは、日本のLARP武器開発の最初の一歩なのだ」と、その想いを胸に笑って支払ってくれたという。


 急いで名古屋にお伝えしたときのナリさんの嬉しそうな言葉を、私たちは忘れることはないだろう。


「ああ───嬉しいです。これからも頑張りたいと思います!」


 暖かくて、嬉しそうな笑顔が目の前に見えてくるようだ。ナリさんの人柄がうかがえる。この優しさに包まれた剣は、何より良いものになる。私たちは、そう確信した。


 この販売時に問題点となったのは、安全面というよりデザイン面。もちろん、試作品のデザインだったため、シンプルに過ぎたところもあるのだが、そこはこれからどんどん良いデザインを生み出せば良い。塗装の技術に関してはどうしたものかと我々を悩ませた。著者は2Dデザインは得意だが、3Dとなるとどうも下手で、周囲を戸惑わせる芸術品を生み出しかねないスキル持ちである。


 そこで、ミニチュア塗装に知識を持つ猫目秋さんにお願いし、風合いの出る塗装の仕方について伝授頂くことに。結果、出来栄えは段違い! 塗装は見栄えとして物凄いパワーを持つのだなあと再確認したのであった。(猫目秋さんに深く感謝!)


 そこから、独自のデザインを編み出していくArkemic。自身は『煉金卿』アルキオン・ナリエンタール卿となって、すらりとしたロングソード「森の守護者の剣」、液体可変の魔女が使用するという「月雫の刃」、竜の鱗をモチーフにした「Drake Edge(竜珠刀)炎と氷」等々…!


 さらに、半竜半人の魔法具師アザミさん(※2)のお店『魔法具店ウィザリア』のソフトジュエル。美しく透明で、独特の光を放つ「エレメントジュエル」を組み合わせて作られた、十字架を大きなモチーフにした渾身の品質であるスタッフは、ツイッターのタイムラインを席巻した!!(冗談抜きで)


(※2)アザミ…「半竜半人の魔法具師」と名乗りつつ『魔法具店ウィザリア』という店名とともにソフトジュエルを編み出した、LARP界期待のホープ。元来、安全面の観点から既存のLARP武器に装飾の石を加えることは難しいとされてきたが、その固定概念を見事に打ち破った女性である。あとつよい。スレンダー。好き。


 さらに、昨今は名古屋の身内のLARPゲームサークル団体『天鵠あまと』にも深く関わり、名古屋のLARPゲームを盛り立てる動きも起こしている。LARP武器を生み出すクリエイターでありながらも、大きなウェーブを作り出す彼の今後の動向は、ぜひチェックして欲しい。


 今はまだ、大きなサイトは無いものの、いずれしっかりとした拠点がサイトとして作られることだろう。『煉金卿』アルキオン・ナリエンタール卿が彩り作り出すArkemicの世界…一度、ぜひ、堪能して欲しい。


 Arkemic公式ツイッター

 @Arkemic_Lab


 また、今回ご紹介した『魔法具店ウィザリア』も、ソフトレジンで作ったとは思えぬほどの美しい宝石を数々生み出している。今後のLARP武器への発展のため、彼女の記録も残しておこう。


 魔法具店ウィザリア公式ツイッター

 @wizllia


 そして、CLOSSは今後も、安全に目を向けたクリエイターさんへの協力は惜しまない。それがまた、ひとつの光ある未来に繋がることを───我々は、一番よく知っているからだ。

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