第8章 小さな種火は大きな炎に
第42話 LARPゲームのマナーと諸注意について考える
JGCの発表がきっかけなのか、突然LARPに関する話題がSNSにわさっと出始めた。全く知らない人がLARPのことを書くなんて、あまり無かったのに……それだけで、すでに感無量である。
「ほらほら星屑さん、ここにも書いてある! 嬉しいなあ、これ」
「うーん。とはいえ、嬉しいとばかりも言ってられないかもしれないよ」
「? なんで?」
著者はキョトンと彼の顔を見る。対して、星屑の顔は妙に気難しげだった。
「LARPゲームは体を動かす分、下手なやり方をすると無用なトラブルや怪我を生み出すものだ。今までLARPゲームに関わろうとしていた人たちは、幸い俺たちを頼ってくれたけれども、今後は全く接触がない団体がやったりするだろう」
「ん? 別にいいじゃない」
「よくない」
ぽそ、とつぶやく星屑。
「えー?」という著者の顔を一瞥して、彼は嘆息する。
「別に俺たちが監視したいとか、管理したいとか言うわけじゃあない。けれど、うちらに接触してきてくれた人たちには、相応に注意点と円滑に進むポイントを俺たちが教えてきただろう?」
「うんうん」
「同意書は書いた方がいいとか、安全面に気をつけた方がいいとか。そのあたり、俺たちは直接関わってもらえれば教えられたけど……そこを全くスルーして始めたりしたら? その代表さんがちゃんとポイントを考えられる人ならいいんだけど、できない人がやったら?」
「あっ……!」
例えば。
写真写りの見栄えが良い。
話題性がある。
リピーターが多いらしい=収益性を見込める。
ただそれだけのためにLARPゲームを始めて───安全性を全く考えず、NPCへの打ち合わせも疎かにして、大きな怪我や事故が発生したら? 責任の所在は? そういった様々なことを無視して行ったりしたら?
今までこのエッセイを読んだ方ならば、どれだけゾッとする事態になるか、お分かり頂けるだろうか。
最も、シナリオのあるLARPゲームの場合は準備も運営に負担かかるものであるから、そう容易に変な業者が手を出したりはしにくいだろう。しかし、コンバットオンリーLARPゲームの場合は、場所さえ取れれば比較的手を出しやすい。NPC、小道具、シナリオの負担が激減するからである。
「そのためにも、少なくとも、俺たちはCLOSSの方から、LARPゲームを行う上でのプレイポイントやマナー、諸注意などを書いて公開する必要があると思う」
「そうだねえ。ある意味、一番LARPゲームを日本で開催した実績のある、うちらじゃないと書けない部分だよね」
「そう。だから、俺たちCLOSSが作らなきゃならない。決して窮屈にするつもりは無いけれど、俺たちのスタンスを表明する意味もあるよね」
先陣を切る者たちとして、それはするべきだろう。
我々はそう結論づけ、早速公開できる場をCLOSSにて構築することにした。こちらは完全無料公開とし、PDF印刷もできるよう施す予定だ。
しかし、こんなマナー文など、本来は話題がある程度広がって認知度が高まらないと用を成さない代物だった。見てくれる人がまずいなければ、マナー文はあっても良いとは思うが、自分たちが周知すれば事足りることだったのだ。それが、今や、自分たちの手の届かない所で開催される可能性すら出てきた。その事実に興奮しつつ、実問題も発生することを改めて実感する。
上から目線で物を言いたくは無いし、偉そうに言いたくも無い。だって、様々な形あってこそのLARPだ。それぞれにそれぞれの良さがある。だから、これはあくまで我々のスタンスの表明に過ぎないし、押し付けるつもりも無い。我々が正しいなんて、誰が決めるわけでも無いだろう。
しかし、「安全性を意識すること」「同意書を作成すること」この2点だけは、絶対に譲らない。絶対にだ。これらが崩れた途端に、LARPにとって良い未来が待っているとは思えないのである。それは、読者諸兄にもお分かり頂けることだろう。
少しずつ、でも迅速に、土台を固めていこう。
LARPはまだ、日本で始まったばかりなのだから!
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