第43話 新しいサークルの在り方、そして次のステージ

 少し前後するが、我々はレイムーンLARPの運営に頭を悩ませていた。


「うおお……人が増えてきたぁ」

「なんとも贅沢な悩みだなぁ」


 レイムーンLARPは、今やサークルとしてちょっとした大きさまで膨らんでいた。休会メンバーを除いても、スタッフを入れると18名。会場の大きさから見ても、収容限界人数はまさに18名ほど。メンバーが全員参加したら、新規参加者は参加できるはずもない。


「新規参加者はなあ。今の日本の現状を考えると、その枠はあるべきなんだよね」

「変にクローズドにした途端に、この広まりは終わるからねえ」


 サークルスタートの当時は、スタッフを除くと5名。この5名から、こんなに増えることが出来たのは、ひとえにメンバーのLARP活動の拡散協力と、愚直にも毎月やり続けた根性の成果というべきだろう。


 そこで、CLOSSを立ち上げ、新規参加者は今後こちらにて受け持つことにした。……が、それでも、大きくなったが故の問題は消え去らない。


「CLOSSを立ち上げてもさ、レイムーンLARPに来たいという新規参加者を拒むわけにもいかないよね」

「だったら、別に機会を設けたら? 毎月とは言わずとも、三ヶ月に一回とか、新規参加者を全部受け入れる『初心者LARP』を設けるとか……!!」

「CLOSSをこれから立ち上げる俺らが、そこまでできると思う?」

「うぐぁー」(ぼて)


 頭を抱えて床にばたりと倒れる著者を見て。

 星屑はしばし熟考し───


「あ」

「おおっ。名案ですか先生ッ!!」(がばっ)

「うむ。つまり、俺たちスタッフがGMをやり続けるからうまく回らないんだ。GMようになればいいんだ!」

「マジか! いやでも、それは私たちの本来の動きだね。LARPを広めたいんだから、ノウハウを伝えて、経験できる場を作ってもいいんだ!」

「そう、でもって、既に小道具や場所、参加者は。これは、いいぞ!!」


 というわけで、まず我々は、スタッフのみGMを行っていたという形から少しずつ変化するように流れを作ることにした。「GMスタートパック」を作成し、ここには過去に行われた中でも選りすぐりのシナリオ、小道具データを丸ごと置いておく。こちらを使用すれば誰でもGMをすることが可能なのだ。


 こちらを利用することにより、レイムーンのメンバーの中でも「GMをしてみたい」という声を拾い上げ、GMを経験して貰いつつ、ゆくゆくはシナリオ作成・ゲームまでの進行をメンバーだけでも行えるように促したのである。


 これは功を奏し、レイムーンLARPのメンバーの中でも、メインGMを行える人間が二人誕生した。戦闘のみ処理裁定が出来るサブGMも割とメンバーが融通でき、一気に人手の幅が広がったのである!


 そして、メンバーのMarry(※1)さんから、素敵なお申し出を頂いた。


 (※1)Marry……レイムーンLARPきっての演技派女優。美しいドS女王様エルフになることもあれば、寡黙で頼もしい女鍛冶屋にもなれる。元々は著者のTRPGサークルから興味を持ちレイムーンに来て、今やどっぷりLARP沼に頭のてっぺんまで浸かっている現状を誰が否定できよう。そして本人も、きっと喜んで肯定するに違いない。


「初心者LARP……私、やってみたいんです! ほら、いつものゲームよりもっと簡単にして、シンプルにして、単純な構造のものにして、短時間で体験できるものだったら、私でもGMが出来ると思うんです。ただ、お二人はきっと大変でしょうから、一度私がメインになってやってみたいんですよ」

「め、女神だ……女神がおられる……ッ!!」


 Marryさんから、後光が、とんでもない後光が見える……!


 我々はふかーく彼女に手を合わせ、ありがたくそのご好意に甘えることにした。Marryさんのこの提案により、来年の2017年4月には初心者のみを対象としたLARPゲームがレイムーンLARPの活動の一つとして新たに開かれることだろう。


「いやー。期せずして、後続を育てるということが出来たねえ」

「うんうん。これからもこうやって、俺たちの技術を受け継ぐ人たちを増やしていくことになるんだろうね。もちろん、他のやり方も否定はしないし大歓迎だけど、少なくとも俺たちの教え方は安全性に関しては一番しっかりと教えるから」


 LARPを始めて4年、レイムーンを始めて3年の月日が流れ、その間にも様々な変化は訪れる。しかし、こうやってしっかりと一つずつ解決していけば、道は開かれるのだ。それを、私たちは歩みながら経験していくに違いない。


「なんだか、ワクワクするなあ」


 とあるレイムーンLARPの定例ゲームを終えて───


 どこまでも続く赤い夕焼けを眺めながら、噛みしめるように。

 そっと著者は、つぶやくのだった。

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