第56話 レイムーンメンバーの本気を見た!! ルーキーLARP

 第43話で、レイムーンメンバーのMarryさんより、こんな話が来ていたことを読者諸兄は覚えているだろうか?


『初心者LARP……私、やってみたいんです! ほら、いつものゲームよりもっと簡単にして、シンプルにして、単純な構造のものにして、短時間で体験できるものだったら、私でもGMが出来ると思うんです。ただ、お二人はきっと大変でしょうから、一度私がメインになってやってみたいんですよ』


 そう───このプロジェクトは、密かに進んでいたのだ。そしてついに2017年の4月15日、記念すべき第一回が開催されようとしていた!


 レイムーンLARPのツイッターから出される告知、『ルーキーLARP開催!』の文字が躍る。ざわめくタイムライン。それまでレイムーンLARPの初回参加枠はたった2名、さらにメンバー優先の方針により、隔月の頻度へと変わってしまった。そんな中、待望の「初参戦者優遇&全員初心者PCのルーキーLARPゲーム」!!


 この募集については、Marryさんとともに、固唾を飲んで見守っていたことをよ〜く覚えている。著者と星屑が少しのサポートをしたのみで、シナリオ作成にはほとんど関わらず。Marryさんとお手伝いしてくれた仲間で作り上げた、ルーキーLARP……


「さあ、チケット予約スタート!!」


 23時。

 チケット予約はこうしてスタートして───


「えっあと2枠!? まだ5分くらいしか…!」


 ざわり、と沸き立つパソコン前。


「スタート20分で完売…完売だぁぁぁぁぁぁッ!!!!(※1)」

「マジかあああああああ!!!!」


 冒険者PCの5枠。

 その5枠は、間違いなく輝けるSSR5枠だった…!!


(※1)スタート20分で完売…後に、このルーキーLARPは2018年現在第5回まで行われているが、後のチケット争奪戦ではほぼ5分以内に完売御礼となっている。末恐ろしい。


 そして当日。


 初心者さんで集まる5名の初々しい冒険者たち。Marryさん手製の、縫製がきちんと整ったサーコートやマントを羽織り、既に立派な冒険者の出で立ちだ。


 Marryさんは藍玉の小鳥亭の女将、アッズーロとなって、冒険者たちをスタートから導いていく。この、スタート時にPCたちの心を和らげ、緊張を解き解していくアイスブレイクのやり方は、著者の手法をきちんと学び、彼女の中に落とし込んで創られた、とてもとても素敵なものだった。


 正直な所、このメインGMを誰かに任せて、著者と星屑はサブGMに回る、という動きは初めてだったこともあり……メインGMであるMarryさんを差し置いてGMとして動いてしまったり、発言してしまったりして、著者自身も反省の多い回だったと思う。


 後続を育てるために、『必要以上のサポートはあえてしない』という新しい配慮───あまりに初めてで、新鮮すぎて、戸惑いも多かった。しかしこれは今後、実際に後続を育てたり、GM経験を学んでもらう時に役立つ立ち回りとなっていく。「日々是経験が即ち勉学となるのだな」と今、著者は改めて思うのだった。


 閑話休題。

 

 いよいよ冒険がスタートする。プレイヤーたちは、時間をかけながら、段々活き活きとし、積極的に冒険に繰り出し始めていた!


「くっ、ゴブリンたちがみんな寝てるぞ…どうしよう?」(ヒソヒソ)

「一気にけしかけよう! 起きる前に倒せばいいじゃん!」(ヒソヒソ)

「あ、あいつ強そうな剣を持って寝てるぞ…!!」(ヒソヒソ)

「よーし、奪い取ろう!」(ヒソヒソ)


 リアルタイムの出来事に対して、判断の連続を迫られるLARPゲーム。その楽しさに、みんな虜になり、目が輝いていく。ゲームやアニメでそのシーンを見る時、実際に体を動かすことはほとんどない。


 息を潜めて眠るゴブリンたちの間をかいくぐり、

 抜き足差し足、

 ちょっとしたゴブリンの物音にビクリと震える……


 そんなことをまさか体験できる日が来るとは、誰が思っただろうか。


 出来るのだ───LARPならば!


 強そうなゴブリンの剣を見事掠め取り、陽動作戦で気を引かせ、気を取られているうちに一点集中で大撃破!! 文字で書けば簡単だが、それこそ息が合わなければ実現は難しい。しかし第一回にも関わらず、ルーキーたちは見事成し遂げたのである!!


 ワッと沸き立つ冒険者たち、敵として転がっていたNPCたちも拍手喝采。まさにまさに、LARPゲームの楽しさを伝えられた瞬間だった。そしてここからは坂から転がり落ちた岩が、そのまま坂を登り上げて崖から射出されるくらいの勢いで、冒険者たちのプレイは楽しくヒートアップしていく。


 夜に焚き火を囲みながら始まる、それぞれの身の上話。

 謎の事件に調査を重ね、辿り着いた真実の敵。

 色々と試行錯誤しながらも、依頼達成!


 全ての冒険を終えた後の冒険者たちの顔はとても晴れやかで、乾杯の声も「やりきった!!」という気持ちでいっぱいだ。そして、


「タイムアウト!お疲れ様でしたー!!」


 と、Marryさんの威勢の良い言葉で、ゲームは終りを告げる。その時の彼女の言葉は、今でも覚えているのだ。


「もう、なんか……みんながLARPゲーム心底楽しいって、ゲームしてくれる姿を見て、やって良かったなあって思いました!」


 その言葉に、私もじーんと胸が熱くなる。そうだ。もう何度も何度もやっているのに、私たちがそれを見たら、またやりたくなってしまう魔法の言葉……初めて体験した人たちが、「LARPゲーム楽しい!」って言ってくれる、その言葉なのだ。そして、楽しいことを知ってしまった顔、沼にもう飛び込もうと決意する顔、興奮が冷めやらない顔、顔、顔……それらを見て、著者も星屑もまた、日本にLARPを広めたいと思ったのである。


 そして、大変な中、ここまでメインで見事なGMを張ってルーキーLARPを率いてくれた女神であるMarryさん、そして、途中からそんな彼女を支えてくれたイケ兎である克兎さんに、心から、それこそ心どころか、つま先から頭の先の先まで、感謝を捧げたい。本当にありがとうございました!


 ちなみに2018年からは、Marryさんだけではなく、レイムーンLARPメンバーで持ち回りしながら、皆でルーキーLARPを盛り上げたいと考えている。これからはさらに豊かなルーキーLARPが広がることだろう。心待ちにしつつ、私たち著者と星屑も「負けてられないな!」と思ったのだった。


 レイムーンLARPの光は───どこまでも未来に伸びているのだから!

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