第50話 最強の!! LARP武器作成講座に行ってきた!!
先日、CLOSSの方で大阪にて、武器作成講座を行った。我らが魔王と呼ばれる猫目秋による武器作成講座は好評を博し、今後も開催できれば……と思っていた矢先のことである。
レイムーンLARPには、もう一人のLARP武器職人が存在する。それが、ゆるLARP改め、『ゆるコンバットLARP ヴァルホル』の創始者でもある槍さんだ。彼の武器は作成当初からレイムーンLARPで注目を集め、安全性の高い手作りLARP武器を確立させた人間の一人でもある。
そんな槍さんが、なんと横浜中華街の近く、関内駅近のゲームカフェぶんぶん(※1)さんにて、合同会社リンクル主催(※2)でのLARP武器作成講座を行うと言うではないか!!
(※1)ゲームカフェ ぶんぶん……昨今増えてきたアナログゲームカフェの一つ。横浜の関内駅近くに店を構え、アナログゲームだけはなく、様々な遊びのあり方について柔軟に取り入れるカフェである。LARPゲームにも興味有。
(※2)合同会社リンクル……各種アナログゲーム他、LARPゲームにもアンテナを向ける企業。通販サイト「コノス」にLARPゲームカテゴリを日本で唯一設ける。多角的に様々な情報を扱う情報サイト「レビュア」の母体でもある。
これには黙っていられない。我々は急ぎ予定を調整し、星屑さんは参加者、私が撮影者となって、槍さんのLARP武器作成講座に参加することと相成った。
この作成講座、何が恐ろしいって、CLOSSの猫目秋、うか(※3)もサポートスタッフとして協力参加している点だろう。猫目秋は言わずもがな、最近CLOSSに入ってくれた女性スタッフのうかもまた、LARP武器作成を行える職人なのだ。
(※3)うか……小柄な体格の女性ながら、クールに近接戦闘・遠隔戦闘をこなすインテリ女傑。データ取得と分析が得意で、この能力を買いCLOSSはスカウトした。弓や武器作成にも特化しており、槍さんや猫目秋とは別視点での製法を確立させている。
そんな日本の三大職人たちに囲まれる中、槍さんの武器作成講座が行われる。午後の部、夜の部がある中、私たちは夜の部へ。大勢の参加者が集う中、いざ、ゲームカフェぶんぶんの3階へ!!
会場は蛇腹のパーテーションでセパレートされており、その片方で座学のように座り、前方に槍さん、後方にCLOSSスタッフ、リンクルスタッフの弓路さんがスタンバイ。そして武器作成講座は、実に和やかな雰囲気でスタートした。
槍さんがニコニコ笑いながら、実に楽しそ〜にLARP剣の作り方を順を追って教えていく。持ち帰りできるレジュメは図解入りでわかりやすく、途中つまづかないようにと、槍さん手製のなぞれば形ができてしまうプラスチック製のトレース型が各自に渡され、実にスムーズだ。途中何かわからないことがあっても、猫目秋やうかの手厚いサポートによって、ほいほい出来てきてしまう。
この講座には先ほど記述したように星屑も参加しているのだが、今まで作ったことがない(そう、なんということだろう、彼と著者はこれだけLARPを拡散するべく駆け回っているのに、LARP武器作成は今まで全くの未経験だったのである!!)にも関わらず、形になって出来上がっていく様子に、本人も著者も驚愕していた。
もちろん、過去に武器作成講座を行なった猫目秋のサポートが入っている力は大きい。大きいのだが、さらに補うべく、槍さんのわかりやすい解説と、安全性を担保した猫目秋とはまた別の鋭い視点、構造、なおかつトレース型が、初心者が作成するというハードルを著しく下げていた。
なおかつ、槍さんというこの男性の、楽しい笑顔。彼の温厚かつ柔和な雰囲気が、講座をより楽しいものにしていると言っても過言ではないだろう。そんな槍ワールドに包まれ、武器作成講座はいよいよの佳境を迎えた。
「できたああああ!!」
出来上がった剣は、やや肉厚なショートソード。しかしながら、安全性はバッチリ! 少々強めに当たったとしても、痛みはほとんど無い。さすが、槍印の製法だ。
そして───
「さて皆様、後ろをご覧ください」
弓路さんの言葉に、何ともなしに我々は後ろを振り向く。そこにあるのは、先ほどからある蛇腹のパーテーションだった。しかし弓路さんは、今までとは全く違う朗々たる声で叫ぶ。その声は部屋一帯に響き渡った!
「君たちは、横浜は関内、ゲームカフェぶんぶんで武器作成講座を受講していた。だがしかし、その排気ガスの混じった都会の臭いは、もう感じない。君たちが感じているのは、広大な荒野をさすらう乾いた風の臭いだ。さぁ、ファンタジーの世界へようこそ!!」
すると、パーテーションがみるみるうちに開かれ──そこには、ひらけたもう片方の部屋と、いつの間に着替えたのだろう、LARP用の金属甲冑風に作成された全身西洋甲冑の槍さんと、漆黒の本革鎧で身を包んだ猫目秋が佇んでいるではないか!!
「紹介しよう、『騎士団長、黒槍』!!『魔王、
わああああああっ──!!
一気に歓声に包まれる参加者たち。無論、星屑や著者も同じだ。
「すごいすごいすごい!! 滾るぅぅぅぅぅ!!!」
「かっこいいいいい!!!」
「すごい、本物の西洋甲冑みたい……!!?」
各々が感心する中、すいっと背後から現れたのは、小柄な少女のエルフ──いやいや、エルフ耳を装備したうかだった。皆が滾っている間に、こっそり早着替えを完了していたらしい。さすが抜かりない。
おかしい。ここは横浜のはずなのだが、私には辺り一面が乾いた荒野のように感じられた──LARPゲーム世界に入るということは、つまり、こういうことなのかもしれない。主催から離れた身となったことで、改めて著者はそう感じたのである。
さあ、ついに、たった今作成したばかりの出来立てホヤホヤLARP武器で、演技戦闘体験だ!! チャンバラ体験すらしたことがないであろう参加者達は、突然現れた非日常的なイベントに対して、既に目がキラキラ輝いていた。
しかし、この演技戦闘体験はただ単に剣を振り回すことが目的ではない。簡単ながら、安全に戦う演技戦闘とは何かを身を以て知ることができる貴重な機会なのだ。(実際、非常にデリケートなものなので、有料・対面以外での講座はCLOSSも視野に入れていないくらいである)
槍さんと猫目秋を中心に、実に丁寧に教えていく。傍目から見ると勇者と魔王がじゃれあっているかのような微笑ましい光景だが、二人はいつだって真剣そのもの。この演技戦闘を教えるという行為が日本のLARP史上において、安全性のキーポイントであることを身を以て理解しているからである。
次に、実際に参加者同士一対一で演技戦闘を行なってみる。見るのとやるのとでは大違い! その奥深さを体で知ってもらいつつ、それでも少しずつ、皆の動き方が良くなっていく。もちろん運動不足な方もいたし、運動が得意であろう方もいたのだが、非常に驚いたこととしては、格差の広がりなく皆一様に楽しんでいたということだった。
時間はあっという間に流れ……最後に、ちょっとした戦闘が繰り広げられた。
おそらく、演技戦闘を日本で一番経験しているレイムーンLARPメンバー──剣と盾の騎士・槍、黒衣の魔王・猫目秋、俊敏なる女傑・うか、そして日本最大の経験を誇る剣士・星屑──による、壮絶なバトルロワイヤル。各者リミットを外しての本気の打ち合い!! 安全性に考慮されながらも、演技戦闘で繰り広げられる「強さ」とはどういったものかを、最後に参加者全員に魅せていく。
この戦いは畏怖させることが目的ではない。これはあくまで演技戦闘の延長線だからだ。「自分にもできるかもしれない」という期待が、熱気となって参加者達を包み込んだ。LARPによる演技戦闘が、どれだけ血が滾るかを参加者達が自分で認識してくれたのだ!!
かくして、槍さんによる武器作成講座は、大成功のうちに幕を閉じた。また、横浜に限らず、日本にこうした武器作成講座の異世界ゲートが開くかもしれない──そしたら、また笑顔で参加したい! そう思える。
槍さんの「これがスキなんだ!!」がたっくさん詰まった、その「楽しい」が見事に皆に伝わっていく、こんなに心温かい武器作成講座は初めてだった。猫目秋の武器作成講座も圧巻だったが、こちらはこちらで良い色と味を出している。
時刻的にはかなり遅めの時間だったのにもかかわらず、ゲームカフェぶんぶん特製のとんでもなく蕩ける新鮮なマグロ丼と蜂蜜酒に舌鼓とを打ちながら、我々は夜更けまで語り合った。こうやって皆で楽しく語り合えるのも、講座があまりに楽しくてたまらない、もっとここに居たいという皆の気持ちの現れに他ならないよう思う。槍さんとリンクル社は、それだけのものを作り上げたのだ。
これからも、槍さんは様々な顔となり、LARPの世界を駆け巡るだろう。彼の「スキ!」を、これからも応援したい! 著者は、いつもそう思う。
ありがとう、槍さん!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます