第21話 TRPG文華祭×レイムーンLARP

 ニコニコ超会議が終わったあたりで、ふと思い立ち、TRPG文華祭(※1)にコンタクトを取る。確か去年、セミナーが出来たら素敵かも、というお話をツイッター公式アカウントさんとしていたのだ。


 (※1)TRPG文華祭…知る人ぞ知る、宿泊型TRPGコンベンション。一泊二日または二泊三日にて、TRPGだけではなく、ボードゲームなどアナログゲームを満喫してしまおう、という緩めで楽しいイベントである。実はゲストに錚々たるメンバーが参加され、今年もグループSNE社長の安田均氏、クトゥルフの内山靖二郎氏、真・女神転生やブルーローズの朱鷺田祐介氏、ルナル・サーガの友野詳氏など、多くの著名人が「ここでしか話せない」様々なお話やゲームデザイナーご本人の立卓が行われたようだ。


「今年(第8回)、そちらでセミナー講師をさせて頂いても宜しいでしょうか?」

「もちろんです!」


 快くOKを頂き、スタッフの中で色々と内容を詰めていくことに。


「やっぱり、LARPゲームを簡単に体験できるセミナーにしたいよね!」

「観客体験型か。いいねー」

「だとすると、15分で気楽に楽しめて、LARPらしさを濃厚に楽しめる感じ?」

「それに初めての人が飛び込むんだから、ある程度簡単に理解できる方がいいね」


 頂いた時間は約1時間半〜2時間。触りにまず、LARPゲームの大まかな説明。次に、スタッフの実演による、寸劇でのゲームの流れ。最後に、セミナー参加者から幾人か募っての、体験コーナー(他の参加者は擬似的な観客のようなものになる。本来のゲームには無い、少し特殊な形態)に入る。


 体験コーナーはぜひ楽しんで欲しいので、「山賊たちに監獄に入れられた冒険者たち!」「実は脱獄のためのヒントが…」「脱獄の鍵は魔術師の魔法!」といった感じで、簡単な脱出ゲームの形式に整えた。ここには、護衛の依頼人である商人NPCとしてスタッフのマダムさんが入ることとなる。1人演じているキャラクターが入ることによって、他の冒険者たちも世界に入り込みやすくなることが狙いだ。

 ただし時間制限があり、あまりに時間が経過するとタイムオーバーで山賊に見つかってしまう。


 しかし、ここに仕掛けを設ける。タイムオーバーとなった(そして恐らく、なってしまうであろう)冒険者たちはそこで終了となるが、2回目の別のプレイヤーたちは全く同じシチュエーションで挑むことができる。まさに「強くてニューゲーム」である。これは1回目の冒険者たちが気の毒なようで、実は彼らが頑張らないと2回目は早めにクリアできないため、大いに貢献しているのだ。


 そして、彼らはきっと脱獄するだろう。しかし、まだ2つめのシーンが続く。今度は監獄の扉から出て、一本道の通路奥に見張りの山賊が背を向けているという設定だ。つまり、脱獄からの戦闘シーンである!


 ここまでを全てシナリオとして整え、配置図も作成し、スタッフで打ちあわせる。段ボールに小道具を全て詰め、いよいよ当日を迎えることとなった。おそらく、著者は今までの中で、一番緊張していたと思う。


 そして当日。TRPG文華祭スタッフさんたちとセミナーの流れを最終打ち合わせし、私たち著者と星屑は宿泊参加者としても参加していたため、1回目のTRPGセッションを遊んでから、セミナーの時間を迎えることとなった。


 いつもの中世ファンタジー服に身を包む。

 革装備を装着し、マントを纏う。

 なんだか、本当に戦さ場に行くような気分だ。我々の大きな戦いには違いない。

 そして、颯爽と廊下に出て歩くと──


「うわっ、やべぇ何あれ! かっこいい!!」

「すっげー…」

「本物の革かな」


 ドキドキ。胸は高鳴るけれど、何だか誇らしくて、ちょっぴり照れくさい。そんなむずがゆい台詞を聞きながら、セミナー会場へと足を踏みいれると──


「──今回のセミナー講師は! レイムーンLARPさんです!」


わああっ──!!


──その歓声に、拍手に、目がまん丸になった。

 

 なんと、会場は宴会場のような細長い場所だったのだが、敷き詰められるように人がぎゅうぎゅうになって座っている!!

 正直な所、このセミナーは任意参加となるので、別の部屋でこの時間はお酒を飲む人もいると聞いて、スカスカだったらどうしよう……と気が気でなかっただけに、これは本当に嬉しかった!!


 さて、では実際の内容はどうだったかというと、もちろん大成功である!!

 スタッフ実演は興味深く見てもらえ、最初の冒険者たちの脱獄シーンは冒険者たちも超ノリノリ!! 超ノリノリすぎてタイムオーバーしてしまっていたのはご愛嬌。そのまま引き継がれた2回目の冒険者たちは、見事時間内に魔法使いが隠し持っていた魔法陣を発動させ、脱獄を成功させた。


 次の戦闘シーンでは、観客たちを左右に分け、まるで歌舞伎の花道のように、観客たちの只中で行われる。これによって、超間近で(ただし安全面には配慮して)戦闘シーンを見ることが可能となった。この辺りで皆のボルテージはMAX!! 「ワー!!」という歓声に、別室でお酒を飲んでいた人たちも「何だ何だ?」とやってくる。

 この大興奮の模様については、参加者の方が写真付きでトゥギャッターにてまとめて頂けたので、是非読んで頂きたい。


 TRPG文華祭セミナー「LARP×TRPG」

 http://togetter.com/li/837419


 戦闘シーンは特に盛り上がった。魔法使いの魔法が炸裂し、隠れていた戦士が躍り出て戦い出す! 戦闘はもちろん、チャンバラである。山賊に扮する星屑スタッフとの接戦が続き、ついに倒すと、拍手が巻き起こった!


──伝えられた。ついに、私たちは、LARPゲームの楽しさを伝えられたのだ!!


 これは、疑いようもなく事実であり、嬉しい真実に違いなかった。嬉しくて、嬉しくて、私は涙ぐんだ。星屑も、マダムさんも、同じ想いだったことだろう。


「LARPゲームの楽しさ、伝わったかと思います。今度は是非、ご自分で体験してみてください! ありがとうございました!!」


 大きな拍手を背に、我々はステージを降りていく。文句なしの大成功だった。文華祭のスタッフさんたちにも大いに喜んでもらえ、またのコラボを約束し、こうしてセミナーは無事終了した。


 そしてこの日を境に、レイムーンLARPスタッフの日々は加速することになる。

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