第59話 TRPG文華祭でLARP再び!! そして集まったのは…

 TRPG文華祭。第21話を覚えている読者諸兄はいるだろうか? 我々は2015年に、LARPのワークショップを行うために、レイムーンLARPとして参加したのだ。


 そしてこの度2017年、CLOSSとして再度の参加が決定した。今度はワークショップと言うより、ゲームそのものを体験できる場として、TRPG文華祭に参加し、立卓するのである!


 前回はワークショップとして多くの方にLARPゲームの実際を観客としても見て頂いたが、今回は実ゲームだ。例に漏れず、小胆な著者は緊張していた。なぜなら、あんな作家さんや、こんなゲームデザイナーさんまで、TRPG文華祭には参加されていたのである!!


 その錚々たるや、見て欲しい───この豪華絢爛ぶりを!!


 アサウラ、稲庭淳、上田明、内山靖二郎、岡和田晃、長田崇、押川チカ、片山加奈、刈谷圭司、河村有木生、岸本和葉、こいでたく、小林かつのり、更伊俊介、志瑞祐、周防、鈴木一也、蝉川夏哉、竹内ゆうすけ、健部伸明、田中克明、田中としひさ、千葉直貴、司史生、トキタミヤ、朱鷺田祐介、鳥居羊、南郷隆、西上柾、BakaFire、板東真紅郎、雛咲悠、姫野里美、藤春都、星屑、松尾壮紘、松野、諸星崇、八熊一也、雪月みけ丸

(引用先 : 「第10回 TRPG文華祭」開催概要より、一部抜粋/敬称略)


 我々は「LARP体験 ファンタジー&ホラー」と題し、ファンタジー、ホラーなLARPゲームをミニゲームとして体験できるものを展開した。


 2日目の昼と夜に区切って2回開催されたこのゲーム、1回目は一般参加者が集まった───募集人数を軽々と超え、どれも白熱したじゃんけんが繰り広げられたのは言うまでもない───皆LARPを体験してみたかったとのことで、TRPGフェスに先駆け、かなり気になっていたとのこと。


 シナリオの詳細は省くものの、ファンタジーは皆、ワクワクとしながら五感を用いてアイテムを使用しつつ、伸び伸びと演技ロールをこなしながら、様々な困難を乗り越えていく。TRPG文華祭という名の通り、ほとんどの人がTRPGを経験していたため、実にスムーズに楽しんでいただけたように思う。特に、視覚・聴覚・触覚・嗅覚・味覚(味覚だけは今回出せなかったが)を駆使した探索に、鮮烈な印象を持ってもらえたようだった。


 そして、2回目の夜は……


 更伊俊介(※1)先生、蝉川夏哉(※2)先生、南郷隆(※3)先生、BakaFire(※4)先生、もうお一人を含めた5名のゲスト陣!!(最後のお一人は作家の方ではなかったので、一応お名前を伏せさせて頂きます)


 ぞわああっと、武者震い。

 全員ゲスト!!

 しかも、名高い作家の方ばかり……!!


(※1)更伊俊介……『犬とハサミは使いよう』『英雄失格』『世界の果てからお急ぎ便』『異世界行けない委員会』といったライトノベル、『坂本先生は逃げ出したい!』の原作も手がける小説家。トークで様々に状況を牽引できる方である。


(※2)蝉川夏哉……『小説家になろう』で様々な作品を生み出す小説家。『邪神に転生したら~』『第七異世界のラダッシュ村』のほか、昨今は『異世界居酒屋「のぶ」』が漫画化、アニメ化となる。毎回表現が美味しそうでたまらなく、著者の胃袋を静かに襲撃している。


(※3)南郷隆(故人)……『ゾイドバトルカードゲーム』『悪の秘密結社RPG』等、素晴らしい作品を作り出したゲームデザイナー。髭がチャームポイントであり、バスボイスな低く轟く声が、朗々と響き渡る。著者の心にズキュンとくる、いぶし銀。


(※4)BakaFire……『BakaFire Party』の代表を務める、ボードゲームデザイナー。ループ系惨劇体感ボードゲーム『惨劇RoopeR』、眼前構築型決闘ボードゲーム『桜降る代に決闘を』など、ヒット作を生み出す凄い人。


 皆さん、LARPゲームに「一度参加してみたかった!!」というワクワクな気持ちをお伝えいただき、また、こういう時でないとゲスト陣の皆さんはなかなか時間が取れないと言うことも聞き、改めて、TRPG文華祭の底力を知った気持ちだった。(作家陣に特に、需要が感じられる…!)


 そんな中、最年長の南郷先生は杖を使いながら、「あまり動けないとか、座っていてもLARPはできるのかな?」と、不安そうに口髭を揺らしてご相談をして頂けて……もちろん!喜んで、私たちはシナリオを調整したのだった。(ちなみに、代表の星屑は介護福祉士の資格、雛咲はヘルパー3級程度は持ち合わせているため、ある程度のカバーは可能である!)


 幸い、動き回ったり逃げ回ったり、戦ったりすることは、そこまで無理をしなくても良いシナリオであった。この部屋は和室1室のみ───だからこそ、ワンルームで遊べるファンタジーシナリオと、ホラーシナリオを用意してきたのだ!


 ここでもシナリオの詳細は省くが───ファンタジーシナリオでは、それぞれ皆さんの個性が最大限浮き彫りになるような、素敵なキャラクター演技で魅了してくれた。特に、「盗賊をやってみたかったんだ!」と、軽快な盗賊プレイを見せて頂けたBakaFire先生。得意の魅惑的な声を使い、黒いローブに杖をそのまま用いて、まんま「わるいまほうつかい」となった南郷先生の、儀式詠唱は物凄かった!


 後半はホラーLARP。こちらについては、南郷先生は最初、このゲームを「お化け屋敷的な感じかな?」と思っておられた様子。しかし実際に怪異が現れ、逃げ惑う男5人───しかし南郷先生は、座布団から座ったまま、うまく動けない! 実は、この状況を逆手にとって、安全にぶつからないように、座布団から座り動かなくても、十分に恐怖を味わっていただく仕掛けを私たちは作っていたのだ。


 一度休憩となって歓談の時間となった時、南條先生は非常に感心され、「これ、お化け屋敷と思っていたけど……ちゃんとクトゥルフ探索してるじゃないか!面白い!!」と言って頂けたのは、光栄なことだった。逆に、恐怖を感じる際に恐怖チェックをする=いったん現実に戻されるルールシステムは、「せっかく没入しているのに、なぜ、そんなことをするんだい?」と疑問を持たれていた。「今にわかりますよ」と、ニヤリとする星屑。


 この答えは、終盤までに明かされる。序盤の恐怖は、まだまだ序の口だったのだ───蝉川先生や更伊先生が、小説家としての得意技なのか、様々なキャラクターと話し合いつつ、色々な可能性を探っていく中、軽〜いキャラクターを演じるBakaFire先生。彼はそんなキャラクターを演じながらも、鋭い見解を示していく。そんな中でも、唐突な恐怖演出が、油断した彼らを襲うのだ。最終的に、男性5名は皆、「一度(現実に)戻してくれる恐怖チェックがあって良かった」と述べている。


 そして最終的に、物語は佳境を迎える。なんと彼らは───本当にあと一歩でベストエンディングだったのだが───ベストエンディングにたどり着くことは叶わなかった。ノーマルエンディングである。しかし、その理由を後にGMから語られると、皆一様に納得するのだった。リアルタイムに判断を連続で迫られる中、それは、そのヒントの欠片は、純粋に見落としていた……恐怖に焦ってしまったがゆえに、心の余裕が本気でなかったことを、皆で知ることができたのである。


 「実に面白い体験だった」「またやりたい」「ああ、悔しい!でも楽しかった!」皆さんが、笑顔で語ってくれた。それはゲストであるかどうかに関わらず、本当に嬉しいもので。私と星屑は、ニッコリ笑顔になるのである。


 また、この日は、なんとワークショップの時間も急遽、頂くことができた。前よりはゆるーく、誰でも質問できるような形で、LARPとは何なのか、どんなことが行われるのか、全く打ち合わせをしていない完全アドリブ(!)で、星屑と雛咲二人のLARPゲームを行ってみる。いつもと変わらないタイムイン、タイムアウトのコマンドを口から放つたび、おおっという歓声や、どよめきが聞こえるのは、我ながら胸が高鳴るのを感じた。


 今回は、一般の参加者の方はもちろんのこと、ゲスト陣にLARPを体験して頂けたことは、とても大きな収穫だった。今後も、たくさんの方に、様々な方法で、LARPを楽しんで頂けたら嬉しいし、それを提供することができたら、何よりも嬉しい!


 ───最後に───


 このTRPG文華祭の9日後、南郷隆先生の訃報を知った。

 あの時あの瞬間、LARPをおおいに楽しみ、ワハハハと豪快に笑いながら、怪しくて悪い魔法使いを演じておられたその御姿がもう見られなくなることは、何より悲しく、寂しい。でも、お休みになるそのちょっと前に、新しい遊びを体験して、楽しんで頂けたなら……何よりも光栄で、嬉しいことだと思う。


 南郷隆先生、お疲れ様でした。ゆっくり、御休みください。

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リアルRPGを日本でやりたい!! LARP奮闘記 雛咲 望月 @hinasakiyu

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