ちょっと聞き慣れない「LARP」という言葉。
ライブ・アクション・ロール・プレイの頭文字をとったものなのですが、ようは参加者自身がキャラクターになってRPGしたりする遊びですね。
著者は日本を代表するLARPのしかけ人のひとりで、この話はそのLARPを広めようと行動し続けている著者の奮闘記なのです。
読んでみてなにより感じるのは、「人間同士だからこその難しさ」。
スタッフもプレイヤーも人間、衝突や思わぬ計算違いが多々出てきます。
そこへ、日本ではまったく知られていないものを立ち上げようという苦労が加わるわけですからもう大変です!
その様をあえて赤裸々に、しかし努めてコミカルに語る著者の言葉にはリアルならではの重みがあります。
そして厳しい状況が少しずつ拓けていく展開には、リアルならではの喜びがあります。
まとめて言うなら、ノンフィクションならではのおもしろさがあるのです。
普通に読み物として、またはLARPへの入口としてお勧めです。
(必読!カクヨムで見つけたおすすめ5作品/文=髙橋 剛)
力強い言葉ですね。お金がかかるんでしょう? とか、大の大人が剣を振り回して戦うなんて、とか、投げかけられる疑問やハードルそのすべてが、実は疑問を投げかけた当人の中にしか存在しないのだと。ほとんどお金をかけず、古着や100均で装備を整えることは恥ずかしいことではなく、むしろ節約を身上とする冒険者としてはグッジョブなのだと。
海外では盛んに行われている「LARP──ライヴ・アクション・ロール・プレイング(中世ファンタジー等の世界を実際に自分の体を動かしながら感じ遊ぶゲーム)」を日本でもやりたい! と、サークルを立ち上げた主催者さん達の奮闘記です。
ずっと読もう読もうと思っていたんですけど、何となく足が向かず、ところが今日読んでみたらこれがまた非常に面白い!
エッセイではあるものの、序盤から「やってみたいけど、運動が苦手で」とか「初のPC全滅」とか「初の野外LARP……しかし、大雨に見舞われて」とか、本当にノンフィクションなの? と思うようなドラマティックな展開が目白押し。
それを咄嗟の機転で乗り切っていく──。まるで一本の小説を読んでいるかのような満足感でありました。
カクヨムの仕様上、リンクがすぐに参照できないのが残念だなぁ……。PC全滅の裏には、実は直前の参加数の二転三転など、裏方ならではの理由があったり。
途中、TRPGやアナログゲームをほとんど知らない人間からすると、新キャラ(という言い方もナンですが)目白押しで分かりにくいところもありましたが──、その後の初野外LARPのくだりは、まさに、これまでの経験値の集大成! という感じで楽しめました。第五章ではLARPの神(笑)とも感動の再会もありますしね。
ちなみに一番笑ったのは
「……男性更衣室は……ま──魔界だった……!!!」と、
(※3)……ここは全てドイツ語で詠唱されていたため、あくまでイメージの記述である。
です。
日本ではまだ馴染みのない体感型ロールプレイングイベント。
本場と比べて規模も知名度も、かけられるお金もまったく違うという、一見すれば圧倒的に不利である状況を、逆転の発想で「強み」へと変えてしまう。
運営者として常に参加者への配慮を忘れず、かつ状況を見極め適切なリカバリーを行える対応力はお見事というほかありません。
ですが私がもっとも大事だと思ったのは、何より運営者である雛咲氏自身が心の底から楽しんでおられる、ということが文面からひしひしと伝わってくる、という一点です。
多くの人にとって未知の分野であることについて興味を持ってもらう、というのはハードルが非常に高い。
そのための労苦を惜しまず、熱量を持って、本気で伝えようとしているというのがわかるから、参加者さんが集まり、惹かれていくのでしょう。
これからのますますの発展をお祈り申し上げます。
私自身、ツイッター上で拡散されているLARPについては全く知識がない状態でした。
画像を見て『ファンタジーの大規模コスプレ大会』? と思いましたがさにあらず。ハイ・ファンタジー発祥の北欧では長い歴史を持つ高度な遊戯です。
でも、人数が確保できないと成立しない。明確なルールを確立させないと。実行するには様々な問題が待ち構えています。
この作品はそれらの問題を一つずつ解決して、醍醐味を伝えてくれます。
TRPGの延長と侮ることなかれ、その深奥はファンタジー成り立ちそのもののように奥深く、達成感もひとしおです。
LARPというものがあるとは知っていましたが、その中身はあまり知りませんでした。
それでも、どのようなものなのだろうという疑問ありました。
だからこそ、このような体験者のエッセイで、その内容を知れたのはいい機会でした。
どのようにして運営しているのか。
どんなものを道具が必要なのか
そして、参加者たちは何を考えているのだろうか?
そういったことを少しでも理解できたのは嬉しいことです。
LARPを日本人風に改良していく様子も興味深く、「日本人ってすぐに『魔改造』するよなー」という変な共感を得てしまいました(笑)
ライブ感(壮大さ)を追求したドイツ式LARPゲーム。
物語性(想像性)を追求した和製LARPゲーム。
プレイしたことはありませんが、二つの違いは文章からこんな風に感じられました。
どちらが優れているということではなく、何を楽しむのかということでしょうね。
では、最後に一言。
「第12話」では思わず笑ってしまい、「26話」では自分も拍手したくなるような、作者の想いが伝わる良い文章でした。
貴重な体験談をありがとうございます(ぺこり)
一言じゃありませんでしたが、まあ良いでしょう(汗)
子どもの頃、冒険小説を読んだ時、その主人公の活躍する様子によく心を躍らせたものだ。また、主人公が失敗した時などは「自分ならばこうしていたのに!」と「こうした」先の展開を妄想し、「自分なら」という前提の物語を夢想したものだ。
LARPという遊びは、本を読んで夢想するしかなかった自分を、まさに夢想していた世界へと誘ってくれるものかもしれない。
本記事は、そんなLARPという遊びを日本で果敢にも始めたゲーマーの自伝である。
なお、本レビューを書いた時点では文章自体の一話ごとの文字数は少なめであり、さくっと読めるのも特徴である。