第47話 大阪に出陣!! LARPセミナー&ゲーム出張版!!

 今から、2年ほど前に遡る。


 その時私たちは、結婚前の星屑と一緒に、大阪へと旅立っていた。もちろん観光も行ったが、それよりも肝要だったのは、会場の下見───そう、大阪でLARPサークルを広めるために、その会場を探していたのである。


 当時からお世話になっているBran(※1)さんの協力のもと、オススメの会場を幾つか下見し、大阪でLARPゲームができたらどんな風になるかな、とBranさんと夜遅くまで話したものだ。


 (※1)Bran……著者が所属する「西欧中世史実践研究会Avalonアヴァロン」に同席する「関西ヴェストリッヒェス ラント」の「騎士ナイト」。のみならず、友好団体である全米に展開する古代・中世の再現団体SCAにも所属し、海外に飛び回り甲冑どつき愛をしている。しかし実は昔からのアナログゲーマーで、TRPG等にも造詣深い方だったりする。おそるべし。


 そして2年後───


 我々は、Marryさんにもご助力頂き、関西に向けて高速で西へ西へとひた走っていた。途中うんまいハンバーグ屋「さわやか」にて超絶ハンバーグをぐにぐに味わったり、サービスエリアでの美味いものを片っ端から食べて英気を養う。そして写真をツイッターに───


 ち、違うよ! 単なる飯テロじゃないんだからね!?(飯テロです)


 ───これは単なる旅ではない。翌日からの二日間始まるのは、そう。


『大阪LARP武器作成・演技戦闘セミナー』

『大阪LARPゲーム』


 この二つのCLOSS主催イベントを行うためだったのである!!


 その日はGo West☆12時間ぶっ飛ばし耐久コース(途中休憩有)で、そのまま爆睡。翌日はいよいよ、『大阪LARP武器作成・演技戦闘セミナー』の開催である。


 今回もコストマリー事務局さんの大いなるご協力を頂き、使用する上で非常に素晴らしい会場を使用させて頂くこととなった。27日の会場も含めて、心から感謝したい。


 『大阪LARP武器作成・演技戦闘セミナー』では、主にLARP武器作成講師を猫目秋さんが、演技戦闘講師を代表の星屑が行うことになった。


 LARP武器作成コーナーでは、今までの私たちのリポート記事などを読んでいただけた方が多かったためか、猫目さんを皆、親しみを込めて「魔王様」と呼ぶのがこの日の大きなハイライトだった。猫目さんはLARPで戦うと(※2)という事実は、もはやCLOSS・レイムーンのLARPゲーム界隈において常識となりつつあるようである……(笑)。


 (※2)……どれだけ強いのかと言うと、LARPゲーム演技戦闘において最強の名を欲しいままにしている星屑と対をなすほどの強さである。ていうか星屑たまに負けるし。めちゃんこ強い。


 そんな魔王様猫目さんの教え方は非常にわかりやすく、何よりどれだけ失敗しても復旧が容易、かつ致命的な場所はちゃんと教えてくれる上、気軽に作ることができると大好評を博した。今後も、猫目さんの武器作成セミナーは様々な所で行いたいと思えるほどに、本当に良いセミナーになったと思う。


 次に行うのは演技戦闘セミナーだ。ここでは星屑が前に出、様々な注意点や体の動かし方を指導していく。後半から皆が体を動かし実際に演技戦闘を行い戦う場面で、会場の興奮は再頂点に達した! 同時に、様々な面において危険も伝えることが出来、こちらも良いセミナーとなったのではないかと思う。


 さて、ここまでは前哨戦だ。


 翌日からが本番───本ゲーム。「求めるは果てなき水月の秘宝」が火を吹く時が来たのだ。ちなみにこのシナリオはレイムーンLARPで有理さんにも体験してもらっており(第33話参照)、LARPゲームを体験してもらう上でも非常に有効な評価を得られ、さらにバランスも取れたガチLARPシナリオゲームの本番なのである。


 その当日は、まさかの雨。


 雨。


 ……雨?


「雨か────ッ!!! 前日晴れてたのにーッ!!?」


 ……どうにも、我々はここぞというイベントにおいて、雨と縁深いらしい。とはいえめげず、なんとか着替えてもらいつつルール説明も済ませ、本会場へと移動していく。途中細かな行き違いはあったものの、いよいよ大阪で初となる中世ファンタジーLARPゲームが開かれることとなった!


 さて、CLOSSのイベントは今後もそうだが、基本的に高品質のLARPゲームをただ体験してもらうだけと言うよりも、現地の公共施設でも表現できる見立て表現を積極的に活用し、「うちでも出来そう」と思ってもらうことを趣旨としている。これは、日本全国にLARPゲームを普及したいという意図の元、地域でサークルを立ち上げていってほしいという願いから来ている。


 また、この中世ファンタジー世界に関しては、未だCLOSSで固まりきれていないため、敢えて細かい所は伝えていない。エルフとドワーフ、小人族がいるトールキンの中世ファンタジーに「近い」世界での冒険譚だ(レイムーンLARPで使用させて頂いている、富士見書房・グループSNE著作のファーランド大陸とは別である)。


 そのシナリオ詳細は割愛するとするが、結論から言うととんでもなく熱いゲームとなった!! まず、市場の時点で、


「ねえねえ、このポーション、多めに買うから安くしてくれへん?」


 と、女軽戦士アティの値切り交渉が決まったり、下位古代語(CLOSSの場合は英語)のスクロールを読む際に、実にネイティブな発音でスラスラと読める魔法使いシャルロットが現れたり(本当に魔法使いみたいで素敵だった!)、その儀式が成功すると現れる「光の魔法陣(※3)」にどよめいたり。


 (※3)……本ゲームのために、小型のプロジェクターマシンをえいやっと買ったのである。諭吉さん4人が天へと登っていったのだった。合掌。


「お前、盗賊の新人かい?へっへっへ……」


 と、盗賊ギルドで囲まれるは、ガラの悪い面々。特に体が山のように大きく、謎の威圧感がある有理さんまで居る始末。これにたった一人で行くことになってしまった(基本盗賊ギルドの構成員でなければ入れない、と言う設定だったので致し方ないのだが)盗賊アッシュには盛大なる賛辞を送りたい。ハラショー!! あんなの私でもビビるわい!!(笑)


 しかし、こういった「人と人が対面しての」「現実世界ではあり得ない、リアルな精神の拮抗、肉薄」はLARPゲームの醍醐味だったりする。実際、レイムーンLARPの毎月のゲームでも、対立構造を作るシーンは必ず一つは挿入している。そうすることで場面が引き締まり、なおかつ、未知の体験を味わうということにプレイヤーも楽しんでくれるのだ。(また、嫌な後味にならないよう、そこは適宜調整している)


 途中の展開される試練のシーンも、大いに盛り上がった。今回NPC参加された方々も初体験の参加者がほとんどなのだが、たった一回の打ち合わせだったのにもかかわらず、見事な連係プレイで挑んで頂けた。


 なおかつ本当に嬉しかったことは、ゲームに楽しんでもらえたのはもちろんだが、事故による怪我が一つもなかったことだ。これは、本当にイベンターとして喜ばしい。この時参加された方々はほとんど、前日の演技戦闘セミナーを受講しており、やはりそれを体験してこその安全への配慮だったように思う。


 全員が一丸となって「」ことを念頭に置かなければ、LARPゲームはいつでも、簡単に事故を起こすだろう。これは私も口酸っぱく言っている事だが、「自分良し他人は知らぬ」で自分だけ楽しむだけ、他人の迷惑は省みぬ人ほど、LARPゲームおいてはなのである。


 ───そう。


 LARPゲームは、単にゲーム内で助け合うだけではない。


 助け合うことが必要な、そんなゲームなのだ。


 こうしてクエストは見事成功を収め、最後は酒場で成功を祝して乾杯。このあと新人冒険者たちがどんな冒険の道を繰り広げて行くのか───それはまた、別のお話。そして、物語は大成功の後に幕を下ろしたのである。


 正直な所、遠征地で、なおかつ初めて使用する会場での本番ゲームは完全に初めてだったので、ヒヤヒヤしていたことは事実だった。しかしやってしまえば、そこはそれ。私たちの三年間培って来たLARPゲームをマスタリングする対応・調整する実力は、柔軟性と土壇場への対応力で十分に発揮できていた。それも、本当に嬉しかった。


 最後の軽食会は賑やかなものとなった。同時に、その場で「大阪LARPサークルを今、立ち上げよう! というか、たった今立ち上げた!!」と、様々な人たちが行動を起こし始めていた。

 それをぼんやりと眺めつつ、著者は星屑に話しかける。


「ねねね、星屑さん」

「なんだい、ゆーさん?」

「なんかさ。我々、『地域でサークルを立ち上げてもらう、そんなワクワクの種を植えられればいいね』って話してたじゃん?」

「そうだねえ」

「……なんかさ。種どころか、種火……どころか、もう燃え上がってない?」

「そうだねえ」

「てか、ぶっちゃけちょっと良い意味で燃え広がってない??」

「そうだねえ」

「………大阪、しゅごい」


 そのパワフルな雰囲気と熱気に包まれたSNSアカウント交換を見つつ、我々はへらっと笑ったのだった。


 その日爆睡した我々は、翌日の朝、一路東京に向けて走り出す。その前に、今回も様々お世話になったBranさんと語り合う時間を設けた。


「いやあ、2年前でしたね。大阪LARPしたいですよねって話したの」

「そうそう、そうだったねえ。あの時は観光も一緒にしつつ、施設の下見で、ゆーさんたちやって来たよね」

「うんうん。2年……そう、2年かかりました。けど、2!! 約束は守りましたよ、Branさん!!」

「そうだねえ! 今後はもっと、大阪も盛り上がると思う。来てくれてありがとう、心から楽しかったよ。また遊びに来てね!」


 そう言って、黒い髭を揺らしてニコリと笑うBranさん。その大きな手と握手を交わし、心が温かくなる。ああ、良い人たちと一緒に歩けてるなあと、しみじみ思う瞬間だ。


 別れを惜しみつつ、大阪を後にする。今回は観光などは一切抜きにして来てしまったので、なんとも大阪に来た実感が湧かないままの帰還になってしまったが、それでも───


 ツイッターを開けば、LARPという単語での熱い熱い感想戦。


 (こりゃもう、西の端まで燃えていってしまいそうな勢いだなぁ)


 大阪に来た実感は、これだけで味わうことができる。私たちはまた、大きなうねりを作ったのかもしれない。それは小さく大きく、わさわさとしながら、きっと大きな炎となるだろう。それこそ、様々な人たちを巻き込んで。


 「また楽しくなるなあ、こりゃ」


 にまにまと車に乗りつつ、車内ですぐさま始まるのは、今回のイベントについての語り合いだ。そんな中、遠い遠い水平線と大きな橋が、我々の帰路を出迎えてくれる。

 終点の東京はまだまだ先だったが───我々の心はさらに遠くの未来に向けて、熱く高鳴るのだった。


 今回のイベントの詳しい写真とリポートは、下記にてまとめてあるので、ぜひご覧頂きたい。


 【リアル中世ファンタジー】

 2016年11月26・27日大阪LARP武器作成&演技戦闘・ゲーム開催リポート

 http://togetter.com/li/1054187

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