第28話 日本初の汎用ホラーLARPルールブックをリリース!
少し時間を戻そう。
「そろそろ、俺たちのオリジナルLARPゲームを作ってみない?」
それを話し合い始めたのは、丁度ニコニコ超会議に参加する直前のことだった。
純粋に日本人だけで作り出すLARPゲームというのは、実は、世界初の試みだ。少なくとも、前例は見かけていない。もしかしたら、アナログゲームの歴史としてかなり大きなことを我々はやるのかもしれない、と思うほどに、ほんとに無いのだ。
「だとすると、やっぱり、中世ファンタジーLARPゲーム?」
「ほんとはそっちにしたいけどねえ」
とはいえ。
中世ファタンジーLARPは最終的には是非広めたい所だ。とはいえ、私たちも運営してみて分かったことだが、とにかく運営側とプレイヤー側の負担が大きい。日本で中世ファンタジーLARP用として販売されていない服や衣装、革装備、武器をかき集め、作成し、利用するのは、なかなかスタート地点で骨の折れることに違い無い。
中世ファンタジー世界では、全部揃えなければならず負担なのだ。
だとすれば──
「じゃあ、現代ホラーは? ほら、最近クトゥルフ動画とかニコニコ動画で流行ってるじゃない?」
「──それだ!!」
「え?」
流行りものについて話しただけだった著者に、星屑はえらく食いついた。
「それは結構いいぞ。現代日本なら、まず、プレイヤーの衣装はそのまま普段着でもOKだ。運営側が特殊な衣装を揃えるにしても、スーツとか着物でいいじゃないか。比較的手に入りやすいよね」
「あ、たしかに!!」
「武器に関してはさすがに売ってないだろうけど、既にレイムーンLARPには自作武器のノウハウを確立した武器職人がたくさんいる。ひとまずは手作りで、バールのようなものや、包丁、ペンチなんかを作る方向でいいんじゃないかな」
「なるほどね。しかも現代日本なら、普段武器なんて持ってるわけ無いんだから、だいたいは現地調達だろうし」
「それでいいなら、運営側が武器を用意するだけで済むね!!」
「あ、そうだ。インセインみたいに、世界観も現代日本に縛るんじゃなくて、舞台を自由に設定出来る汎用ホラーにするといいんじゃないかな?」
「ゾンビパニックや、クトゥルフや、ゴシックホラーができるのか! いいねいいね」
そんな感じで、まずは試作版を作ったのが、ニコニコ超会議の時。そして今度は冬コミに向けて、こちらの完全版を作ろうという流れになっていた。今から考えても、レイムーンLARP野外ゲームの傍らこの作業をしていたわけで、土台を作っていたにしても、なかなかハードな作業だったことを思い出す。
著者は主にDTPデザイン担当で、カラー表紙とカットイラストをマダムさん、ルールの精査と新たな概念の作成は星屑が担当した。どちらかというと著者はルールに関してはあまり得意では無いため、星屑とマダムさんに委ねる形にし、その分DTPデザインにかなり力を入れた。
完全版にあたり、エラッタ修正作業と共に新たに入れ込んだのは、クイックスタート、銃火器ルールの適用、正気を表す
最終的にすったもんだ作業しながら、なんとかギリギリになって刷り上げることができた。大判ポスターも頼み、やる気は満タンだ。
C89コミックマーケットはまさに年末。
クリスマスも過ぎ、凍るような真冬の空気は、すぐそこまで迫ってきていた。
そして、あっという間のC89コミックマーケット当日。
今度は星屑と著者は、現代ホラーを意識した衣装でサークル参加することに。著者はメイド、星屑は袴の着物姿だ。ただし今回は書生というより、古屋敷の旦那といった趣きだった。
2013年最初の冬コミ参加に比べ、スタートしてみれば売れ行きは明らかに好調だった。隣に槍さんのサークルスペースを配置して頂けたため、「小さな」LARPゲームジャンルのスペースができ、見た目華やかだったこともあると思うが……
それにしても、一直線に向かってきては新刊メメント・モリ完全版を求める一般参加者のなんと多いことか!! これには本当に驚いた。それだけ、この2年間の我々の活動は認知度が広まりつつあるということなのだろう。感慨深かった。
今回も冒険企画局の河嶋陶一朗氏が来訪され、メメント・モリをご購入頂くこととなり非常に光栄だったし、海外のLARPゲーマーも興味を持ったようで、様々な質問を私たちや槍さんにしてくれたのも、本当に嬉しかった。特に、なんと愛知県名古屋で(日本人ではなく、全員海外のプレイヤーではあるが)LARPゲームサークルを発足し、活動している団体『Underworld LARP Japan-Guildhouse: Havenhollow』のメンバーとも話すことができたのは、大きな収穫だった。
メメント・モリもどれだけ頒布できるか正直未知数だったが、予想を大きく超えての売り上げを見せ、改めて日本人のLARPゲームへの興味が近年高くなってきたことを感じた。
流れは、少しずつ来ている──
前回の参加と、大きく意味を違えた参加となって、C89も終わりを告げる。
冬の空気は寒かったが、我々の心は熱く熱く燃え盛っていた。
そして年明け、我々は節目となるほどの大きな来訪者を迎えることとなる。
その方は──
パトリア・ソーリスの作者であり、日本にLARPゲームを伝えた恩人。
ニコ・シュタールベルク氏その人であった。
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