久里 琳

荘重で迷宮のような舞台を背景に、王族・貴族たちがしのぎを削る陰謀と策士たちの暗躍、運命に翻弄される者たちの悲喜こもごもが確かな筆致で描かれ、読み応え十分です。 登場人物は王に貴族に…続きを読む

突然の異星人の来訪。彼らの目的は地球侵略ではなく、修好通商でも地球人の教導でもなく……ただ「駅」建設予定地の近くにあったから挨拶に寄っただけ。 地球人への基本方針は「不干渉」。 な…続きを読む

お題に沿って、クリスマスまで毎日新しい短編が届きます。まさにアドベントカレンダー。 お話はそれぞれちょっとずつ趣がちがって、不思議だったり、せつなかったり、ほっこりしたり。 よくぞ…続きを読む

一癖も二癖もある人物たちの造形がそれぞれ濃くて、とてもリアル。なかでも主人公のオヤジが出色！　生き生きしたセリフまわしが最高です。 ボスをこけにしたり、さらっと自虐したり、お堅い世…続きを読む

主人公である野球少女の魅力にひっぱられて、33万字の長編も苦にならず、最後まで夢中になって読みました。 この少女、超がつくほどの野球バカ。同級生たちを強引に野球部に連れてくるし、練…続きを読む

この物語の魅力はまずなんと言っても、詩人に生まれついた少年と、その才を見出し育んだ女教師との魂の交流です。少年だった彼もいまは帝国一の大学へ進み、恋に悩む年頃になりました。一方女教…続きを読む

世界的ロックバンドが、組織犯罪に巻き込まれていく。そう聞くと、並みの腕の作家なら荒唐無稽な夢物語に堕してしまいそうですが、これは最後まで現実感を失わず、読み応えある物語となっていま…続きを読む

画狂い北斎と、その血を色濃く継いだ娘・お栄の日常。その異才ぶり、破天荒ながら画には真摯、画への執着は他の追随を許さず、、北斎の偉大な画業の秘密の一端が窺えます。 語り口調は江戸っ子…続きを読む

知力・体力を尽くした謀略・勇戦の緻密な描写と、心浮き立つ恋に友情、この二つを高いレベルで並び立たせる物語にはなかなか出会えないもの。その稀有な両立を実現した珠玉の物語です。 後に…続きを読む

名古屋の馴染みの場所、馴染みのグルメが描写されるすぐ側で展開される、不思議な物語。 物語の仕掛けの巧みさ、人物の立体的な造形、設定の説得力。たしかな筆力で描かれる物語に感嘆します。…続きを読む

舞台は幕末のとある藩、剣術道場を中心に物語は進みます。 となれば剣劇の描写がまず魅力的なのはもちろんですが、それだけではなく時代の空気、世情、そこに営まれる人びとの想いや機微が丁寧…続きを読む

世界的人気ロックバンドとなったZee Deveelのルカとテディを中心に綴られるシリーズ最新作。 過酷な運命に見舞われながらもその都度たくましく乗り越えてきた美貌のふたり。 今回は…続きを読む

スクラップから生まれたクリーチャーを狩るレアメタルハンターの活躍を描く物語。なぜクリーチャーは生まれてきたのか？　街を、愛する人たちを守れるのか、そしてハンターたちの運命は？　主人…続きを読む

七日後に世界はおわる。どうしようもなく確実に、みんなに訪れる最後。 世界のおわり、最後の日の出を迎えるシーンが秀逸です。 普通の散文が詩になる瞬間というのは確かにあって、そんなとき…続きを読む

荒れ果てた未来の地球。人類が月へ移住したあとも地上に残された棄民のような人びと。 最後の月行きの宇宙船に乗った男が、地球と月と、人びとの運命をつなぐ物語。 印象的な鈴の音、感情とリ…続きを読む

日常のなかの詩を拾い上げて、短い言葉のなかに凝縮する作業は、文章を書く人みながお手本にすべき習慣だと思います。 そこで、俳句好きの方、これから触れてみようかなという方、双方へこの句…続きを読む

人生は楽しい。いいことばっかりじゃないけれど。 そんな人生の酸いも甘いも経験された、人間愛いっぱいの心で謳いあげた日々のエッセイ。 笑えることも、落ち込むことも、舞い上がることも、…続きを読む

16世紀フィレンツェ。ルネサンス三大巨匠の活躍の記憶も生々しい、花の都を舞台に繰り広げられる本格ミステリー。 現地事情に詳しい作者様ならではの説得力ある舞台描写に、人物設定。 魅…続きを読む

人狼と聞いてまずは猛々しい姿を思い浮かべたのですが、現れたのは狼になれない、狩りもできないか弱い女の子。 ところが読み進めるうち、芯の強い心やさしさに、気品ある誇りたかさに、やっぱ…続きを読む

言葉へのこだわりが随所に感じられる文章で、美しい詩を読んでいるようです。 ひとの悩み苦しみに無理解な世間からときに遠ざかり、ときに近づこうと努力するふたり。 ふたりを見守る繊細な感…続きを読む

舞台は帝国の植民地。登場人物は、差別や貧困にくるしむ子供たちと、帝国から派遣された女教師。 理想と正義感に燃える女教師は、みにくく不潔な風貌だけれど清らかな魂と歌の才能をもつ少年に…続きを読む

現代的な情景、心情を昔ながらの定型で表す面白さ。詩はどこにでも転がってるんだとあらためて思いました。 十七文字の短い詩句から、楽しかったり切なかったりささやかな幸せだったり、そんな…続きを読む

自然の営みをあらわす美しい描写が特筆ものです。静謐で抑制のきいた文章、独特な改行のリズムに、森に響く叙事詩を読むような心地がしました。 エピソードに魔的なものが混じると、美しさのな…続きを読む

旧ソ連の置き土産、ノビチョクを進化させた猛毒を巡る冒険ミステリー。的確な説明、精細な描写がリアリティを高めます。 物語を牽引するのは、若くしてマフィアのナンバー2を務める主人公。…続きを読む

貴公子なヴォーカルと繊細な美貌のベーシストを中心に奏でられる、華麗で凛としたドラマ。 ドラッグ、恋人の共有、カメラの前でのあけすけな戯れ、酒盛り……と、いかにもロックミュージシャン…続きを読む

冒頭からまず心惹かれるのは美少年ふたり。儚げで、どこかバランスがとれずに危なっかしい可憐な転校生と、思春期らしい我の強さを持ちつつも、なんだかんだで面倒見のいいハンサム系美少年。 …続きを読む

気のいい登場人物たちが映画祭を手作りする、童心を失わないおとな向けのおとぎ話のような気のいい物語。 一話一話、つながっていく人と物語にあれあれと楽しく流されながら読み進めていました…続きを読む

架空の街を舞台に、しのぎを削るギャングたち。その怪しげな抗争に、悪魔と魔法使いがひと口噛んで、その行方はますます混沌と。 主役は、ツンな（デレはほぼない）悪魔とC調な（ときどきカッ…続きを読む

超常能力を活かし「能力者捕獲」のブラックバイトに励まされる主人公。 男前で頼りになるが、ときどき暴走するのが玉に瑕、妹溺愛の相棒。 そして優しい心と絶品手料理、なにより天使の笑顔で…続きを読む

暴れん坊将軍と大岡越前が活躍していた頃の江戸の町のお話。 長屋に住まう、訳ありらしき面々。 才と思いと運命に導かれて周囲の事件に首をつっこんでは解きほぐしていきます。 そうこうする…続きを読む

知る人ぞ知る、文武に秀でた美しい女城主の物語。 一つひとつの言葉の選び方、エピソードの背景、事件や事物の描写、いずれも深い時代理解と考証に支えられていると感じられます。 あえて定説…続きを読む

高校入学とともに出会った仲間で立ち上げた部活。登場人物は皆どこか癖があって、なにかしら特技や変わった能力を持っていて。 そんな彼らが力を合わせれば、なにか面白いことができるに違いな…続きを読む

明るい雑踏から、ちょっと暗い脇道に目をやれば、そこにありそうな物語。 ごく普通の日常のすぐ横に口を開けている深淵に引きずり込まれるように、不思議な世界に誘われます。 落ち着いた筆致…続きを読む

プロポーズと言えば、女は期待し、男は回避しようとするのが世の定番ですが、ここでは男の方が結婚する気満々、片や女の方が飄々とプロポーズを躱します。 とはいえ、ふたりの仲は絶妙な距離感…続きを読む

恋愛経験のなかった女子高生が気になるのは、新任の美術教師。一方の先生も、恋愛偏差値は高くなさそうで。 ぎこちなくも、一歩ずつ進む二人の様子が微笑ましいです。 教師と生徒という関係、…続きを読む

応仁の乱後、まだ京には足利将軍があり、管領、公家、大名はその権威を利用しようとし、ときには振り回された。豪族も商人も頼れる庇護者を求め、生き残りをかけた。 そんな時代の空気が伝わる…続きを読む

郷土愛がひしひしと伝わるお話です。 朴訥とした語り口が、読み進むにつれなんだか癖になってきます。 どこまで現実でどこからフィクションなのかが分からなくなってきて、実は本当に島津大河…続きを読む