江戸時代。元旦、夜明け前。
筆頭家老が単身密やかに殿様の前に現れて。
「討幕の準備は万端、整っておりますが?」と問えば。
殿様、「いや。未だ機にあらず」と答える。
毛利家には、そんな正月の秘儀があったと伝わる。
そして、幕末。尊皇攘夷から討幕へと、終始中心的役割を担ったのが毛利長州藩である。
時代は移り現代に於いても、山口(長州)出身者が数多く首相の座に就いていることは自明だ。
戦国末期から現代に至るまで。本邦に絶大な影響を与え続ける毛利長州。その産みの親が『毛利元就』、その人である。
本作は、そんな毛利元就が『多治比元就』と名乗っていた、若かりし頃の物語。
是非ご一読を。オススメですっ!
戦国時代、中国地方に覇を唱えた英雄、毛利元就。
歴史が苦手でも作者様の巧みな筆致で入り込み易く、初々しい恋も描かれ、歴史が初見でも存分にお楽しみいただけます。
血生臭い西国の戦乱を生き抜き力を得た謀の神。
その厳しい青春時代を描ききった本作ですが、その中心にある少年・元就はその肩書から想像されるであろう人柄からかけ離れ、控えめで思い遣りにあふれる人格者。
ともすれば後ろ向きになりがちな彼を果敢に攻めるのは、勝気にして純粋な戦国美少女、妙弓の異名をもつ姫武者でもある雪。
元就が深謀は侵食する敵を絡め取り、果敢に攻めて撃ち滅ぼす。その傍らにあって馬を駆り、弓を放つ雪の姿は非常に綺麗なペアであり、戦場にあって清涼感すらを感じさせます。
さて、少年から青年に至るまでを描いた本作ですが、更に前日譚である「こじき若殿 - rising sun -」を読まれると一層物語の趣が深まります。
各話応援コメを見られると分かりますが、読まれた方は皆、その読み応えに圧倒され支持されている名作。
これから迎える秋、その読書の候補に本作はいかがでしょうか。
臨終の間際、毛利元就は「一本の矢は簡単に折れてしまうが、三本も束ねれば容易には折れぬ。力を合わせることが肝要だ」と三人の息子達に言い残したと伝わっています。この話が史実か創作かという議論はさておき、本作は中国地方の覇者と呼ばれた毛利元就が大成する以前、その黎明期を描いた歴史小説です。ただ読むにあたり、難しい予備知識はいりません。時代は戦国の世、多治比家=毛利家の分家=元就は毛利家の血筋、という程度が把握できれば、あとは作中の説明と空気が教えてくれます。またコミカルに描かれる仲良し吉川家や一癖も二癖もある武将達が随所に登場するなど、ヒューマンドラマとしての魅力にも溢れてます。元就を中心に描かれる戦国時代の知られざる英雄譚、是非ご覧ください。
知力・体力を尽くした謀略・勇戦の緻密な描写と、心浮き立つ恋に友情、この二つを高いレベルで並び立たせる物語にはなかなか出会えないもの。その稀有な両立を実現した珠玉の物語です。
後に中国を制覇する元就の初陣は、幾重にも苦難に囲まれたものでした。
並みの戦い方では勝ち筋は見えないその逆境を、次から次へと繰り出される謀略と、自ら死中に飛び込む勇気で切り開いていく元就。その様子が説得力をもって語られ、戦闘の描写は目に浮かぶように鮮やかです。
手に汗握る戦いと謀略の合間に描かれる、姫武者との反りの合った掛け合いが楽しいのも出色の戦記物語、ぜひお楽しみください。
一五〇〇年から一五五〇年くらいの中国地方は、大河ドラマとして扱われる優先度が低い時期・地域かもしれません。この作品では、そこに生きる一人の武者が巨大な苦難を乗り越え、中国地方の覇王へと突き進む戦いを描いてあります。
信長・秀吉・家康が登場しなくても、これほど面白い戦国時代小説が書けるのです。それはもちろん作者さんの力量があるから実現できたこと。これには脱帽するしかありません。
若い頃の斎藤道三も登場します。信長の奥さんのお父さんになる人です。
鉄砲の広まっていない頃ですから、合戦シーンでは刀・槍・弓が大活躍します。思わず手に力が入るような、これぞ武士の戦いと云えます。
中でも「鬼吉川の妙弓」と呼ばれる姫武者の洗練された弓さばきは、臨場感溢れる圧巻の名場面を生みだし、読めば震える人が多いことでしょう。
一般的に歴史小説と云うと、お固いイメージがあるのかもしれませんが、この作品では「ラブコメディ的展開」が、ふんだんに盛りこまれていて、ライトノベルを読んでいるかのように、とても愉快・爽快な気分になり、また少女小説で得られるような「トキメキ感」もあります。
大河ドラマ・読み応え・ラブコメ要素・大きな感動――これらが旨く調和している、まさに四倍おいしい歴史小説です。
戦国時代物がお好きな方はもちろんですが、ラブコメやファンタジーがお好きな方も、是非お読みになってみてください。わくわくドキドキ、そしてジーンと胸の熱くなる名作です。
明治期の長州藩でも名を轟かしめる「毛利家」の祖、毛利元就。一代のうちに一国人領主から芸備防長雲石の六ケ国を支配する太守へとのし上がった戦国大名だが、その名が知れ渡るのは彼も歳を重ねた頃のこと。そんな元就の若かりし時代を、初々しく躍動感に溢れた描写で綴ったのがコチラの作品。
少数(元就軍)で大軍(武田氏)を屠るシーンは圧巻の一言。後年、謀神と崇められた片鱗を見せつけると共に、若さ故の初々しさと大胆な行動にも胸が熱くなる。とにもかくにも、読者に向けて「戦の熱量」を出し惜しみせずに浴びせてくれるのが心地良い。
妻(妙玖)との馴れ初めと漫才のようなやり取りにも注目!(←ココ大事)
タイトルの通り、物語は序盤も序盤ですが、ここまで面白いと元就の生涯を通して拝読してみたいです。成り上がりの人生を、作者さまの確かな筆致で読み続けたいものです☆
毛利くんという男の子がいまして。
特に仲が良かった訳でもなく、今となっては眼鏡をかけていた事と少しナヨっとした印象だった事しか思い出せません。あ、運動は苦手だったかな。
その毛利くん、名前も思い出せません。何故なら、皆から「モトナリ」と呼ばれていたからです。言わずと知れた「毛利元就」ですね。本人も普通に受け入れていたような。
そんな思い出を持つ私が、作者様の『西の桶狭間〜』を拝読したのは必然だったと言っていいでしょう(ここまで前振り)。
さて本作ですが、作者である四谷軒様の他作品同様に、歴史上の人物の一時期にフォーカスして、資料と四谷軒様の解釈を交えた興味深い読み物となっています。
歴史好きの方はご存知な内容かもしれませんが、学校の授業と歴史SLG止まりな自分には「そんなエピソードもあったのか」と手を打つものでありました。
合戦の描写もさることながら、登場人物が生き生きと動いています。恋愛あり、親愛あり、駆け引き、憎悪、欲望の感情の揺れ、ぶつかり合いが時に生々しくもあり、史実を知っていながら息を呑む事さえありました。
そしてこれも四谷軒様の他作品同様でありますが、多くの人が知っているであろう歴史上の大事件に繋がる形で物語は幕を閉じます。これがまた「上手いなあ」と、底辺作者目線で申し訳ないのですが思いました。
歴史に興味の無い方でも、普通の読み物として肩肘張らずに読み切れるでしょう。是非ご一読を。
本作には登場しませんが、毛利元就の「三本の矢」の故事は史実かどうか怪しいのだとか。知らなんだ…
安芸広島に動乱が起きる。安芸の項羽とも呼ばれる(自称する)武田元繁が尼子経久と手を結び、大名・大内義興の不在を狙って攻め入ったのだ。怒りに震える大内氏の命を受け、毛利興元が領土奪回に名乗りを上げる。だが、興元は戦死、後継ぎは幼年、毛利家は絶体絶命の危機に陥った……。
奇跡の逆転劇でスポットが当たるのは、我らが毛利元就である。しかし、彼は完全無欠の英傑でもなければ、さらに正統な後継者ですらない。その立場にあって、いかに多勢に無勢な状況を撥ね退け、毛利家に勝利をもたらしたのか?
前作「こじき若殿」で自立心と行動力を得た主人公がついに真の試練に立ち向かう。すでに知られているはずの歴史上の対決が、筆者の情感たっぷりの記述と、登場人物の人間臭くも活力に満ちた描写によって、息もつかせぬスペクタクルとなって読者に迫ってくる。大きく時代が動く興奮、知恵と勇気によって未来を切り拓く若者たちのドラマ、歴史小説の醍醐味を刮目して見よ!
毛利元就。
中国地方における稀代の謀将として、厳島での快勝とともに現代でも語り継がれていますが、その彼が大名と呼ばれた時にはすでに老境。ではそこに至るまでの前半生は何をしていたかと言えば、強大な国に挟まれて、応仁より始まる激動の黎明期を必死に生き延びていたような状態でした。
これは、そんな青年時代の中でも、最大とも呼べる毛利家存亡の一幕劇。
優秀な息子たちは当然生まれておらず、兄は死に家督は宙吊り、家中も血縁者も盟友も虎視眈々と毛利の領地を狙い、そして敵はいにしえの覇王項羽の異名を持つ猛将に率いられた圧倒的な兵力。
厳島よりも絶望的な内憂外患の中、元就はいかに謀を巡らせ、そして勝利を収めることができたのか?
基本的に忠実な硬派な作風ながらも、細部まで踏み込んでシナリオが構成されているので、戦国時代に造詣が深い方でも新鮮な知識として楽しむことができます。
そして他作と同様、魅力はなんといっても良い意味で軽やかに作中を動き回るキャラクター達。
ヒロインの雪姫をはじめ、上記とは役に歴史を知らずとも、そのアクションや心の移り変わりは、ライト層にも十分読み物として楽しめること疑いもありません。
元就と毛利家を題材とした作品として、大河ドラマと合わせて押さえておきたい名中編歴史小説です。
以前、大河ドラマにて毛利元就を視聴したことがあったので、連載開始前から楽しみしていました。
今作品を読んで感じたのは、当時の中国地方の情勢の難しさです。尼子氏や大内氏というのは何となく聞いたことがある方もいるでしょうが、読んでみて複雑で、尚且つ、一つ一つの判断するのが難しい時代であったと再認識させられました。
また、作中の雪姫と元就の二人のやり取りも魅力の一つ。二人の関係が難局を乗り越える上で、重要な要素になっています。作品をワクワクしながら読めるので、歴史小説としてだけでなく、エンターテイメント的視点からも楽しめます。
特に広島県民の方には、郷土の英傑の物語に触れる良い機会になるので、ぜひオススメです。
私は広島県人だというのに、地元の英雄毛利元就について「三本の矢の教えの人だよね~でもなんか地味っ!」位の認識しかありませんでした。
そんな元就の魅力と凄さをタップリ教えてくれたこの小説には、もう感謝感謝、の気持ちでいっぱいです!
初陣で味方よりも何倍もの勢力の強敵を打ち破るなんて、凄すぎませんか!!
どん底の生活から這い上がるハングリー精神。
大国に挟まれて、生き残りをかけて策略を巡らす知力。
実戦となれば獣のごとき野性味を見せる泥臭さ。
口には出さずともさりげなく女性を気遣う優しさ。
どこを取っても男の魅力に溢れています!
読み終えた時にはきっとあなたもゆかりの地である厳島神社を訪れ、夜空の星を見上げたくなるに違いありません。
漢(おとこ)のなかの漢を描かせたら天下一ならぬカクヨム一だった四谷軒さん。
今回の作品は打って変わり、キュートな魅力いっぱいの姫武者を冒頭から登場させてくれました。(´▽`*)
ですので、画数の多い漢字がいっぱい出て来るし、歴史に熟知していないと専門的過ぎてちょっと難しそう……と及び腰だった女性読者にもお勧めの楽しい歴史読みものに仕上がっています。
じつは、かく言うわたしも「元就」の「就」の字ですでに腰が引けていたのですが(笑)、主人公の元就はもちろん、それぞれひと癖ふた癖ある周辺の武将たちについても丁寧かつ分かりやすく描写されていますので、大人も子どもも、いろいろな視点からのエンターテインメントとして楽しめると思います。ぜひご一読くださいませ。