読み応え抜群の戦国物語でラブコメ要素も豊富な四倍おいしい歴史小説

 一五〇〇年から一五五〇年くらいの中国地方は、大河ドラマとして扱われる優先度が低い時期・地域かもしれません。この作品では、そこに生きる一人の武者が巨大な苦難を乗り越え、中国地方の覇王へと突き進む戦いを描いてあります。
 信長・秀吉・家康が登場しなくても、これほど面白い戦国時代小説が書けるのです。それはもちろん作者さんの力量があるから実現できたこと。これには脱帽するしかありません。
 若い頃の斎藤道三も登場します。信長の奥さんのお父さんになる人です。

 鉄砲の広まっていない頃ですから、合戦シーンでは刀・槍・弓が大活躍します。思わず手に力が入るような、これぞ武士の戦いと云えます。
 中でも「鬼吉川の妙弓」と呼ばれる姫武者の洗練された弓さばきは、臨場感溢れる圧巻の名場面を生みだし、読めば震える人が多いことでしょう。

 一般的に歴史小説と云うと、お固いイメージがあるのかもしれませんが、この作品では「ラブコメディ的展開」が、ふんだんに盛りこまれていて、ライトノベルを読んでいるかのように、とても愉快・爽快な気分になり、また少女小説で得られるような「トキメキ感」もあります。

 大河ドラマ・読み応え・ラブコメ要素・大きな感動――これらが旨く調和している、まさに四倍おいしい歴史小説です。
 戦国時代物がお好きな方はもちろんですが、ラブコメやファンタジーがお好きな方も、是非お読みになってみてください。わくわくドキドキ、そしてジーンと胸の熱くなる名作です。

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