小学校の同級で

毛利くんという男の子がいまして。

特に仲が良かった訳でもなく、今となっては眼鏡をかけていた事と少しナヨっとした印象だった事しか思い出せません。あ、運動は苦手だったかな。

その毛利くん、名前も思い出せません。何故なら、皆から「モトナリ」と呼ばれていたからです。言わずと知れた「毛利元就」ですね。本人も普通に受け入れていたような。

そんな思い出を持つ私が、作者様の『西の桶狭間〜』を拝読したのは必然だったと言っていいでしょう(ここまで前振り)。

さて本作ですが、作者である四谷軒様の他作品同様に、歴史上の人物の一時期にフォーカスして、資料と四谷軒様の解釈を交えた興味深い読み物となっています。

歴史好きの方はご存知な内容かもしれませんが、学校の授業と歴史SLG止まりな自分には「そんなエピソードもあったのか」と手を打つものでありました。

合戦の描写もさることながら、登場人物が生き生きと動いています。恋愛あり、親愛あり、駆け引き、憎悪、欲望の感情の揺れ、ぶつかり合いが時に生々しくもあり、史実を知っていながら息を呑む事さえありました。

そしてこれも四谷軒様の他作品同様でありますが、多くの人が知っているであろう歴史上の大事件に繋がる形で物語は幕を閉じます。これがまた「上手いなあ」と、底辺作者目線で申し訳ないのですが思いました。

歴史に興味の無い方でも、普通の読み物として肩肘張らずに読み切れるでしょう。是非ご一読を。



本作には登場しませんが、毛利元就の「三本の矢」の故事は史実かどうか怪しいのだとか。知らなんだ…

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