酷い戦災に巻き込まれて家族を失った少女が、唯一生き残った弟と共に、厳しくも美しい大自然の中で、自分の生きる意味を模索する様に、或いは何かを探し求める様に生活する様子を、淡々と描いた質の高い佳作です。
まずこの物語の舞台となっている自然豊かな「トワトワト」の描写が繊細で緻密で美しく、目に映る景色のキラキラとした光の加減や、足元の感触まで伝わる様で、とても臨場感があります。
同時に物語の主人公である少女・アマリリスが、少し風変わりでありつつも、とても現代的というか、女の子らしい女の子であり、同時にフラフラと危険な場所へ足を踏み入れてしまう危なっかしい様子も、実在感がある様で好感が持てます。
また、作中に登場する「魔族」の少年・アマロックの、危険すぎる気配と妖艶ともいうべき魅力の共存する佇まいが、この現代的な女の子であるアマリリスを惹きつけてしまうという、この二人の距離感も見どころのひとつだと思います。
この魔族の少年・アマロックの、危険な気配と魅力的な佇まいという二面性は、そのままこの作品の舞台となっている広大な自然と合致している様で、それだけにここで生活を続ける少女・アマリリスが、この場所でどう過ごす事になるのか、興味深く見守りたくなります。
美しい自然環境を楽しみながら、アマリリスの冒険と生活を彼女の視点でゆったりと辿る……不思議な魅力に満ちた物語です、読んで損の無い逸品だと思う次第です。
(287話まで読んだ感想です)
物語の舞台は世界の果て……トワトワト。
静かな筆致で紡がれる、この半島における雄大な自然の描写は、疲れてささくれだった神経を、ひとつひとつ調律してくれる妙なる音楽のようです。
傷ついた美しい少女と、金色の瞳を持つ魔物である少年の出会いは、何をもたらすのか。この先、その美しい少女に待ち受けるものは、何か。
少女の成長を通して描かれる、生き生きとしたこの世界を、覗いてみませんか?
また、この地に生息する魔物さえも美しく、まるで実在しているかのように、半島におけるあらゆる動植物のダイナミックで生々しい生態の秘密を、垣間見ることが出来るのも、この物語の醍醐味でもあります。
どんな時も文字を追うだけで、すっとこの雄大な自然のある世界に入り込むことの出来る幸せ。
深呼吸をして目を閉じると、忘れてしまいがちな季節の匂いを、ふと感じる。
ここには確かな季節が、あるのでした。
自然の営みをあらわす美しい描写が特筆ものです。静謐で抑制のきいた文章、独特な改行のリズムに、森に響く叙事詩を読むような心地がしました。
エピソードに魔的なものが混じると、美しさのなかに妖しさを孕んで、仄かな色気さえ漂います。
本作は第二部ですが、エピソードはほぼ独立しているので、こちらから読みはじめても問題ないと思います。(第一部を読んでからだと、さらに良し。第一部は、祖国を失った主人公たちが安住の地を求めて彷徨する物語でした)
第一部で幾多の苦難を経た美少女に幸あれと祈らずにいられません。幻力の森を危なっかしく冒険するのを、はらはらしながら見守っています。