血が通った台詞廻しと、人間臭さあふれる人物を描かせたら右に出る者なし

16世紀フィレンツェ。ルネサンス三大巨匠の活躍の記憶も生々しい、花の都を舞台に繰り広げられる本格ミステリー。

現地事情に詳しい作者様ならではの説得力ある舞台描写に、人物設定。
魅力たっぷりの台詞まわし。人間臭さあふれる登場人物たち。
なかでも、清濁併せ吞む(濁の成分多めな)親方の、飄々とした人物像が出色の魅力。彼はもう、息をするように自然と下ネタを繰り出しますが、それがまた粋なのです。紳士淑女の皆様方にも安心して笑って頂きたいと思います。
親方以外の人々も多様な罵り言葉、厭味や誘惑の言葉では負けていません。台詞のひとつひとつに血が通っています。こんな台詞で市井の人々を生き生きと描き出すことにかけては、右に出る人がいないんじゃないかと思います。
もちろんミステリーも読みごたえたっぷりです。

現在は、舞台を二十一世紀に移した番外編を連載中。主要登場人物の魅力はそのまま、ときどき五百年前の小道具や人間関係や性癖が出てくるのも楽しい、ファン垂涎の豪華番外編です。

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