単刀直入にいって、この作品は個人的に商業作品のミステリーをかなり大幅に超えてくると思っています。
舞台は現代イタリア。個性豊かなメンツ、内部の人間関係、最後の数話まで決着のつかない展開。そして、洗練された文体——。出版社の人見てますか!!! この作品とってもいいですよおお!!!
ある大学教授が殺された。機動捜査部に所属するジャンニ・モレッリ警部はその殺人事件に関わることになる。が、その大学教授は訳あり。そのせいか、その捜査は芋づる式に多くの事件を呼び寄せ、難航に難航を極め……。
しかも、モレッリ警部の元に、上院議員の息子が部下として配属され……。
本当に面白かった!
毎回毎回、追いかけるのが本当に楽しみでした。
何と言っても魅力はシリアスとコメディの配分。みんなコミカルなのですが、決めるところはしっかりシリアス。そこが大変に私好みです。
続編……出るといいなあ!
POPにも書かれていますけど、この作品の主人公は直感と行きあたりばったりの捜査を連鎖的に行う警部さんです。
だらしない外見にサボり癖、口を開けば愚痴とスケベな会話。どうしようもない奴に感じますが、冴えない感じを醸しながら実は……! と言うハードボイルドの定石を撃ち破り、本当にどうしようもない奴なのでした。
ただ、そこに魅力がないのかと問われればそうでもなく、暴言の中に光る台詞回しや熟練者らしい勘に基づいた捜査と推理(当たっているかどうかは不明)は『彼らしいなぁ』と感じてしまい、難なく読み進めることが出来ます。
脇を固めるのは出世欲の強い上司、熟女好きの新人、恋愛下手な同僚、軽犯罪を繰り返す留置所常習者、その他諸々の日本的な常識で考えるとおかしな人達。そこに舞台がフィレンツェ(外国)であると言う事と他の事件との絡まりも相まり、ちょっと本気で豪華&お洒落なエンターテイメントを見せられている気分に浸れます。
捜査進行だけを追っていれば良い意味での泥臭い刑事物なのですが、登場人物達の味でコメディに思えてしまうところも素敵だなと感じました。
イタリアのフィレンツェを舞台にした刑事ドラマ。というとかっこいい刑事が颯爽と事件を解決するシリアスドラマを思い浮かべそうですが、この作品はひと味もふた味も違います。なんせ主人公はホームレス風のファッションに身を包んだおとぼけ万年警部。彼の口から飛び出るユーモアと皮肉たっぷりのセリフは思わずニヤニヤしてしまう面白さで、嫌味な上司との掛け合いはさしずめイタリア風漫才です。
複雑に絡まった殺人事件の謎に、ウィットに富んだ語りが散りばめてあって、外国小説のような雰囲気を存分に味わえます。次から次へと降りかかる難題をどう紐解いていくのか、ポンコツ警部の手腕に期待しています。
また、筆者によるイラストも小説同様のお洒落でハイレベルな作品ばかり。こちらもあわせてぜひお楽しみください。