多くの人間が月に移住し、荒廃した地球に残された人々は厳しい生活を余儀なくされた世界。
地球と月を巡って環境を良くしようと励む人々の物語です。
砂嵐、噴煙、疫病、過酷な環境にも負けない人々の懸命な生き様が心に響きました。
思いと努力が実を結び、次々と希望に繋がっていく流れは感動物。
複数の主人公が織り成す構成が飽きさせずに惹き込んできました。
鬱屈し葛藤して成長する少年少女、波乱万丈な人生に折れかけながらも未来を守ろうとする大人、それぞれの巧みな心情描写。
雄大ながら時に荒ぶる自然の描写。豊かな文章が物語を彩ります。
本格的なSFであり重厚なヒューマンドラマでもある素晴らしい作品です。
こちらは随分前に読了した作品なのですが、私の中で感想をそのままにしたくて、ずっとレビューを書けずにいた作品でした。
瓦礫の街の少年、ナギから始まる物語は、過去と現在と未来が巧妙に絡み合い、独立したそれぞれのお話かと思いきや「あれ?もしや……」という伏線が気持ち良い程に明かされていく物語でもあります。
それぞれの物語の登場人物が本当に魅力的でどうか、と祈りのような感情を抱いてしまうだけに先に進む程にドキドキしてしまうのですが、人の感情の動きの巧みさ故に読み進める手が本当に止まらないのです。
一見して無関係のように見えて……と思える物語は作者様がかなり物語を練りに練られたのだろうな、とただ壮大な物語に圧倒されるばかりでした。
透明で、鮮やかで、胸が締め付けられる程、美しい願いの物語でした。
この物語はふとした時に読み返したくなります。そうして彼らの選択を、その土地の営みを見つめながら、色々と考えずにはいられないのです。
素敵な物語に出会えて良かった、と思う作品でした。
個人的にはルリさんがとても好きです……。
きっとまた、何かの折に読み返す物語の一つです。
カクヨムでいくつかSF小説を読んできました。わたしの少ない経験なので参考になるかは分かりませんが、本作はそのなかでも本格派なSF作品のひとつだと思います。
環境問題や宗教、そして人々の葛藤。SF作品にあってほしい要素がしっかり入っていて読みごたえのある作品です。
月移住者と地球にとどまった人との対比が上手く描かれていて、考えさせられる場面がたくさんありました。
個人的には、荒れ果てた地球で暮らす人々の生きざまが面白かったです。
月に移住している人がいる科学的に進んだ世界なのに、地球には原始的な宗教を信じている人がいる。よく世界観が練られていると感じて、驚きました。
ストーリーだけでなく文章も洗練されていて、するする読めるし、内容も頭にはいってきやすかったです。
初めて読むSFとしても、おススメできる一作です。
荒れ果てた地球。月への移住も遂に閉ざされ、地球に住む事を選んだ人々は生きる為に生きるような生活を余儀なくされていた。
『凪を待つ砂の海』
この美しいタイトルで始まる第1章の主人公はナギ。半陰陽の身体を持って生まれ、魅惑的で脆さいっぱいの少年。ナギの一人称で語られる物語。
えっ!どうなるの? という所で章が変わり、章毎に主人公はバトンタッチ。時間軸にも変化あり。
読者の想像のはるか上を突き進むストーリー。
1章1章に感動のストーリーがあり、そしてこの群像劇は全てが繋がり感動的に紡がれる。
愛と希望に満ちた美しい物語。生きる力となるものは何?
このジブリのような世界に落とされて、透明人間になった自分が体験してきたようなリアル感。
たくさんの方々が応援コメントやレビューを書いている事が頷ける練り上げられた素敵な作品です。
──魂の根ざす場所というものが、人にはあるんだと思います──
文中にある、この示唆に富んだ一文だけでも、この大作を読む価値がある思います。最終場面、この言葉に感情が昂りました。
舞台は、月コロニーへの人類移住計画が完了し、荒地と化した地球です。
荒廃した未来の地球に生きる三人の人物に焦点をあて、物語は進んでいきます。
ナギ、トワ、サク。
地球で生きることを選んだ三人三様の生き様は、なんとも健気で、爽やかで、『生』を応援する、そんなテーマさえ感じます。
三人の壮大な冒険と旅が、周囲の者たちを巻き込み、最終的にひとつにまとまっていくまでを丁寧に描いたSF作品です。
壮大な物語の最終場面に待つ感動的なラストには、思わず号泣されることでしょう。
おすすめです。ぜひお読みください。
月へと人類は移住していくが、荒廃した地球にも残り住む人々がいる。荒れ果てた地球で一握りの希望を持つ人達。
しかし、地球に残された彼らに奇病が襲う。蔓延する奇病。もはや地球には奇病を治す技術も薬も無い。そんな中、希望を求めて月へ旅立った男がいた。妻を想うからこその愛深き、無謀ともいえる行い。男の切なる願いが月での技術者の手によって、奇病対策の薬の素が開発される。
過酷な地球環境。妻と家族を想う強い愛情。一握りの希望に賭けた行動力。旅立った父と、残された子供のすれ違う想い。それぞれの想いと現実に抗う強い意思。加速する奇病への焦燥感と食料事情。廻る運命の輪。切なく泣けるシーンも多いです。やがて、月から地球へ希望の種は送られる。希望のバトンは意外な事から絡み繋がっていく……。
荒廃した地球が映像に浮かぶほどの卓越した描写の巧さ。愛とは?絆とは?絶望の中、希望を失わない意思の強さは生き様に現れる。登場人物の心の揺れも、ひしひしと伝わってきます。
これは、地球に残された人々を救う為に行動を起こしたある男と、その男の希望のバトンパスの軌跡を追うSFを踏まえた壮大なヒューマン・ストーリー。
とても面白かったです。
すごい作品です。
掛け値なしの感動が待っています。
それぞれ独立しているような、三人の主人公がおりなす三つの物語。
その単体だけでも十分に読み応えのあるドラマとストーリー性があります。
ですが、この三つが実に意外な形で絡み合っていくのです。
この構成が見事なのはもちろんですが、この発想が素晴らしい。
絡み合っていく三つの物語には、意外な仕掛けが施してあり、その展開には驚くばかりです。
やがて立ち現れるのは、時代の波に、過酷な環境に、立ち向かい生き抜いていこうとする人間の強さ。
それが三つ物語を貫いて鮮やかに浮かび上がってくるのです。
この物語がSF世界で展開されているのが、個性的であり、同時に作品のポイントとなっているのも見逃せません。
この設定だからこそ、この物語が紡がれたのだと分かります。
荒廃した地球のイメージ、月に築かれた未来都市、そんな対比がまた鮮やかです。
この作者さんの作品はいくつか読ませていただいておりますが、今作もまた素晴らしい作品でした。
とにかく読みやすい文章、光景が広がる美しい描写、血肉の通ったキャラクター、そして予想を上回っていくストーリー展開。
まさにどれを読んでもハズレなしのすごさです。
なかでもこの作品は人の強い意志、人と人とがつながっていく大切さ、そういったものが高らかに歌い上げられています。
近未来を舞台とした世界の描写、時折出てくる花畑の鮮やかなイメージ、などなども本当に素晴らしい。
まぁいろいろ書きましたが、とにかく読みやすくて面白い作品なのです。
ぜひ読んでみてください!
異なる場所で生まれ育った三人と、彼らに関わる者たちの視点で綴られる群像劇です。
読み始めてすぐ、心を鷲掴みにされました。
丁寧に描かれた情景は心地よく、それでいて、過酷な場面での揺さぶり方は半端ではありません。本当に、「巧い」の一言。
それは構成についても同じです。
時間経過、続きの気になるところでの場面転換、名前の意味の提示のしかた、などなど……。
あくまで自然に、そして着実に、読者の脳に刻み込むような書かれ方をしています。
物語は、荒れ果てた地球と、そこからの移住が完了した月が舞台です。
過酷な環境の中で生きる人々。彼らは不安や迷いを抱えながらも、日々「自分にできること」をして生きています。
そして、どうにも抗うことのできない運命を前にしたとき、人々は何をするのか。その姿に、想いに、何度も心をうたれました。
違う価値観を持った人が出会い、また、誰かの残した痕跡に触れる。
そうして繋がった想いは、奇跡のように素敵な結末を迎えます。
是非、皆さんにもこの感動を味わっていただきたいと思いました。
本当におすすめです。
荒れ果てた未来の地球。人類が月へ移住したあとも地上に残された棄民のような人びと。
最後の月行きの宇宙船に乗った男が、地球と月と、人びとの運命をつなぐ物語。
印象的な鈴の音、感情とリンクする風景、大自然の猛威。映像や音や匂い、感情があざやかに浮かびあがる文章が、心地よく物語の世界に引きこんでくれます。
文章にひかれて読んでいるうち、つぎつぎと繋がる人の思いとエピソード。この運命はこのさきどこへ連れてってくれるんだろうとどきどきする展開。繋がったエピソードは円環になって原点にもどって、またつぎへと旅だっていく。
さわやかな読後感でした。
巧みな物語構成に感嘆させられます。読者として純粋に堪能しましたが、同時に刺激にもなりました。
読む人にも書く人にもおすすめしたい作品です。
大半の人類が月への移住を済ませ、過酷な自然環境にわずかな居住者を残すのみとなった未来の惑星、地球。
そこでは疫病を患い死にゆく者が後を絶たず――生き延びるために、ある植物を開発し、育てることが命題として課されることに。
その植物を、登場人物たちがときに罪を犯し、ときに命を懸け、すがるような想いで人から人へと繋いでゆく。
植物に乗せられた、多くの人の願い。それが、目に見える効能よりもはるかに大きなギフトをもたらします。
作り込まれた見事な世界設定は、作者をご存知の方なら納得の一言。
けれど読者の心を一番大きく揺さぶるのは、設定ではなく、そこに生きる純朴で真っすぐで一生懸命な、愛すべきキャラクターたちの生きざまです。
さまざまなキャラクターに焦点があてられ、それぞれの目線を通して物語は進んでいきます。
そのすべてが、時を超え惑星を越えて、大きな一つの環となって繋がったとき。
待っているのは、筆舌に尽くしがたい大きな感動です。
途中、何度も涙し、自分の心臓がおかしくなるかと思いました。
外出先で読まれる方は、要注意です。
文句なしに、私の大好きな作品となりました。
美しい宇宙、広大な砂漠、大地を轟かす噴火。
ナギやトワ、サクやミカたちの生き生きとした感情、表情。
大スクリーンで映画として観られたら、どんなに幸せかと思います。
その感動を、小説でも味わうことができるのです。
是非、映画のような大きな感動を、この作品を通して味わってみてください。
地球を見限り月へと移住した人々。荒廃した土地で懸命に生きる人々。
環境と運命とに翻弄されながらも、自身の役割を見つけ強く逞しく生きていく姿を描いた群像劇。
いくつもの人間の波乱万丈な人生。
それらは決して点ではなく……強い絆で紡がれている。
SFでありながら、古典的な風習も感じさせる絶妙な世界観が、未来でありながらとても良い塩梅で懐かしさを添えています。
すべての登場人物、それぞれの抱える問題が、場所を変え、時代を超え、途絶えることなく続いていく様子が、じわじわと深い希望を与えてくれました。
時にどうにも超えられない壁にぶつかり挫けそうになりながらも、かすかな光明を見出していく「人」の姿に何度も何度も感動しました。
映画で見たいと思うほど素敵なSF群像劇でした。
荒廃した地球と、月に建造されたコロニーで生きる人々の群像劇。
主な舞台となる地球は緩やかな衰退への道を辿っており、どこか風の谷のナウシカを彷彿とさせるような世界観。腐海の森へ帰る王蟲はいないけど、人の身体を腐らせる小っちゃい虫が存在したりしています。
この作品が見事なのは、なによりもまず、作中の情報を明かしていく匙加減が抜群に上手い所。
SF小説って、どうしてもその作品独自の特殊な世界構造や、そこに存在する文化体系などの説明が長くなりがちです。まあ、「重厚な世界観あってこそのSFだ!」って方もいらっしゃるし、ぶっちゃけそこは好みの問題なんですが、「SFって重いよなぁ……」と感じて、敬遠する人もまたいるわけで……。
しかし、この「めぐりの星の迷い子たち」は、読んでいてそういった重さを全然感じさせません。
もちろん、地球が荒廃していった理由を仄めかす描写や、地球における生活の様子、月コロニー社会の説明などはちゃんとあるんです。
でもそれらが決して押しつけがましくなく、作中各所に極めてバランスよく配置されているから、文章自体はスイスイ読みやすいのに、「ああ、ここはこういう世界なんだなぁ」というのが、自然に頭に入ってくるんです。
こいつはただ事じゃありませんよ。気付いたら、「ルリヨモギギク」という単語も、スルっと頭の中に棲みついているんですもの。スピードラーニングもびっくりの記憶定着率ですよ、これは。
そしてもう一つ特筆すべきは、時系列の散りばめ方の巧みさ。
この作品は、登場キャラクターの一人称視点が切り替わって物語の場面が転換していきますが、この切り替わりによって、作中時間の流れも前後しています。
普通なら頭がこんがらがってしまいますが、そこもまた、作者さまの絶妙な匙加減と舌ざわり(?)によって、上手い具合に調理が為されており、むしろその時系列の変化を利用して、物語の続きが気になる書き方になっているんです。
「むぅっ⁉ なぜここに、ルリヨモギギクが……」ってな具合に、気付いた時にはもう、一話、また一話とページをめくる手が止まらなくなっていきます。いつの間にか、我々は作者さまの手のひらの上でコロコロと転がされているのです。恐ろしや! あな恐ろしや!
それから、なんといっても読んでいてたまらないのが、登場人物たちの心の動きと、その生き様ですね。
もうほんと、「ああ。この人たちは、ちゃんと生きてるんだなぁ……」ってことを実感させられる。時に「このリア充め! 滅せよ‼」とか思った時もあった気がしないでもないけど、思わず「頑張れー!」って言いたくなってしまうほど、キャラクターに感情移入してしまうんですよ。
しんみりしたりヤキモキしてしまう描写や場面も多々あるけれど、読後にはどこかほんわりと、心が温かい物で満たされている、そんな素敵な物語。
作者さまのオシャレ大臣なネーミングセンスも、作中で遺憾なく発揮されております。
まじでなんなの、ルリヨモギギク。もう、頭から離れないんですけど。
ヨモギ餅見るたびに、ルリヨモギギクを思い出して、「ジンさーーーん!」って、条件反射で涙してしまうんですけど。本当に困ったもんです(涙)
是非これからこの作品を読む皆さんにも、読後には涙無しでヨモギ餅を食べられない体質になってほしいと思います。
荒廃した世界で逞しく生きる人々の姿に感涙しながら、一緒に涙で塩味が付いたヨモギ餅を食べましょう。もぐもぐ。
新天地となる月コロニーに移住した人々、そして荒廃した地球に残された人々、その二つを舞台に「人の想い」が描かれたSF物語。
もうね、泣きました。そして、微笑みました。何度も何度も泣き笑いしましたとも!
群像劇と称したように主人公が変わるのですが、彼らの想いが繋がるたびにチリッと火が付いたみたいに感動が生まれて、全身に燃え広がって熱いものに満たされていく……うまく言えないけれど、そんな感じです。
またSFというと難しそうだとか取っ付きにくいといったイメージがあるかもしれませんが、その心配は一切なし。
するりと染み込むように入ってくる軽やかな文体で、まるで映像で見ているかの如くシーンがイメージできてしまう!
砂漠の場面では熱と砂塵に乾いた殺伐とした空気を、火山近郊の場面では薄暗い中に灰落ちる重苦しい空気を、月が舞台の場面では清浄ながらどこか閉塞感のある空気をと、行ったことも経験したこともない場所なのに目から入った文字が肌に臨場感として伝わってきます。
迷っても、繋いだ手は離さない。
離れても、紡いだ想いだけは手放さない。
そんな彼らの想いの種が芽吹くその瞬間に出会える喜びを、是非皆様にも感じていただきたいです!
舞台は、月と地球です。
賓(まれびと)がなせる世界と心の神との世界がうごめきます。
人を巡り、ある病とルリヨモギギクを巡り、運命は回ります。
愛した人と離れてしまったら、人はどうなるのでしょうか。
深い洞察のもと、愛と哀しみと喜びが描かれております。
ふるさとについても考えさせられました。
きっと誰もがある郷里は、遠く想い人のいる所でしょうか。
それとも、今の愛する人がいる所でしょうか。
例え、暮らす所が荒れ果てていても、きっと心に愛があるはずです。
月と地球、あなたは、どちらに心を寄せますか。
構成力がずば抜けていると思います。
サブタイトルの文字数にも拘りを感じます。
読みやすい文体です。
感動が欲しいときに、ぜひ、ご一読ください。
人間が、高度な文明と引き換えに、母なる大地を破壊した未来の物語。
荒廃した地球を捨て、月へ移住した人々。
捨てられた地球に残り、過酷な環境や不治の病に命を削られる人々。
どちらに生きる人間も、運命の潮流に逆らうことができない、とても儚くて小さな存在です。
この物語の登場人物たちはそんなちっぽけな存在であり、しかも自分の生きる意味を見つけられずにいる人たちです。
住む場所も、年齢も、生い立ちも全く共通するところのないナギ、トワ、サク。
けれども、ジンという人物の抱く強い思いがトワを動かし、ナギに届き、サクに受け継がれます。
一人ひとりの生命は儚く、運命に抗う力もなく、いつ切れるとも知れない糸のようにか細いもの。
けれど、その糸は人の思いによって強くなり、誰かと繋がることができ、思いを伝えていくことができる。
過酷な運命に翻弄される試練、それを乗り越えていく思いの強さ、未来へとつながっていく希望。
それらが随所に散りばめられつつ、最後には一つの物語として美しく紡がれていく過程で、何度も胸が熱くなります。
この物語に登場するルリヨモギギクの花のように、大地に懸命に根を張って生きる人間の弱さと逞しさがとても愛おしく思える、心に沁み入る素晴らしい作品です。
荒廃した地球を捨てて、人類は月のコロニーへ移住してしまった未来。瓦礫の山と砂漠の海となった地球には、しかし、いまだ取り残された人々が生活していた。
作物は育たず、飲み水に苦労し、謎の死病が蔓延する末期の地球。彼らは、科学を失い、原始的な文明に帰し、神に祈りを捧げて生活していた。
そんな地球を主な舞台とした物語。全5章からなる長編を複数の主人公たちの視点から語らせる壮大な抒情詩である。
父に裏切られた半陰陽の少年。月のコロニーから追放された科学者。村から疎まれつつ薬草を育てる少女。
彼らを中心に、荒廃した地球と、管理社会である月を舞台に、人と人との繋がりとは何であるのか?を、青く美しい一抹の花をキーワードに丁寧に紡いでゆく物語。
時としてすれ違い、時として運命に導かれ、出会い、別れ、そして惹かれ合って行く人々。回を追うごと、彼らの気持ちに強く同感し、美しい文章に誘われ、気づくといつしか、この荒廃した地球が、いや荒廃した地球であったとしても、愛する人々が暮らすのであれば、そこは得難い自分たちの故郷であると気づかされる。
とにかく小説としての完成度がすごい。
魅力的なキャラクターと、練り込まれたプロット。ちりばめられた伏線と、胸を打つ台詞、そして宝石のような文章。
空を巡る星の中には、惑うように時として逆行するものもある。が、彼らはわれわれと同じく、長大な円を描いて太陽の周りを巡るひとつの家族なのである。
最初、しずかに語り始められる物語は、やがて満天の星空から突き刺さるように落ちてくる流星となってあなたの心を撃ち抜き、何度も何度も感動の涙を流させるだろう。
本作は小説としての完成度も高い。読めば何度も泣ける。だが、それ以上に、『こんな物語を読みたい』と、そう思う人が、今この世界にはたくさんいるのではないだろうか?
荒廃した地球がいつか風に揺れるルリヨモギギクで満たされる、そんな美しい風景が、いまのぼくにははっきりと見える。
──風が凪ぎ、余人の目に触れずとも、静かに波打つ瑠璃色の美花が咲く風景よ、永遠に。