概要
砂嵐と噴煙に塗れ、疫病の蔓延る不毛の大地で、何が人々の希望となり得るか。
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双子の妹と共に半陰陽の身体で生まれたことにより、『神の化身』と崇められる少年・ナギ。
家族を捨てて姿を消した父親を憎む彼は、ある日キャラバンの巡行に誘われて旅立ちを決意する。
月コロニーで禁を犯し、地球へと追放された植物遺伝子学者の青年・トワ。
かつて地球から月へやってきた友人と交わしたある約束を果たすため、彼は遠い地を目指す。
村人たちに疎まれながら、病気の母と二人で暮らす孤独な薬草師の少女・サク。
神を信じない彼女が出会ったのは、『神の使い』とも言われる異国からの賓(まれびと)だった。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!終末世界を巡り重なる、人の願い
多くの人間が月に移住し、荒廃した地球に残された人々は厳しい生活を余儀なくされた世界。
地球と月を巡って環境を良くしようと励む人々の物語です。
砂嵐、噴煙、疫病、過酷な環境にも負けない人々の懸命な生き様が心に響きました。
思いと努力が実を結び、次々と希望に繋がっていく流れは感動物。
複数の主人公が織り成す構成が飽きさせずに惹き込んできました。
鬱屈し葛藤して成長する少年少女、波乱万丈な人生に折れかけながらも未来を守ろうとする大人、それぞれの巧みな心情描写。
雄大ながら時に荒ぶる自然の描写。豊かな文章が物語を彩ります。
本格的なSFであり重厚なヒューマンドラマでもある素晴らしい作品です。 - ★★★ Excellent!!!人から人へ。繋がる願いの物語。
こちらは随分前に読了した作品なのですが、私の中で感想をそのままにしたくて、ずっとレビューを書けずにいた作品でした。
瓦礫の街の少年、ナギから始まる物語は、過去と現在と未来が巧妙に絡み合い、独立したそれぞれのお話かと思いきや「あれ?もしや……」という伏線が気持ち良い程に明かされていく物語でもあります。
それぞれの物語の登場人物が本当に魅力的でどうか、と祈りのような感情を抱いてしまうだけに先に進む程にドキドキしてしまうのですが、人の感情の動きの巧みさ故に読み進める手が本当に止まらないのです。
一見して無関係のように見えて……と思える物語は作者様がかなり物語を練りに練られたのだろうな、とただ壮大な…続きを読む - ★★★ Excellent!!!終末世界世界を舞台にしたSFヒューマンドラマ
カクヨムでいくつかSF小説を読んできました。わたしの少ない経験なので参考になるかは分かりませんが、本作はそのなかでも本格派なSF作品のひとつだと思います。
環境問題や宗教、そして人々の葛藤。SF作品にあってほしい要素がしっかり入っていて読みごたえのある作品です。
月移住者と地球にとどまった人との対比が上手く描かれていて、考えさせられる場面がたくさんありました。
個人的には、荒れ果てた地球で暮らす人々の生きざまが面白かったです。
月に移住している人がいる科学的に進んだ世界なのに、地球には原始的な宗教を信じている人がいる。よく世界観が練られていると感じて、驚きました。
ストーリーだけでなく…続きを読む - ★★★ Excellent!!!荒れ果てた世界で生きる力となるものは何? 紡がれて巡る命の環《わ》
荒れ果てた地球。月への移住も遂に閉ざされ、地球に住む事を選んだ人々は生きる為に生きるような生活を余儀なくされていた。
『凪を待つ砂の海』
この美しいタイトルで始まる第1章の主人公はナギ。半陰陽の身体を持って生まれ、魅惑的で脆さいっぱいの少年。ナギの一人称で語られる物語。
えっ!どうなるの? という所で章が変わり、章毎に主人公はバトンタッチ。時間軸にも変化あり。
読者の想像のはるか上を突き進むストーリー。
1章1章に感動のストーリーがあり、そしてこの群像劇は全てが繋がり感動的に紡がれる。
愛と希望に満ちた美しい物語。生きる力となるものは何?
このジブリのような世界に落とされて、透明人間に…続きを読む - ★★★ Excellent!!!荒廃した地球で、懸命に生きる人々の物語。感動しかありません
──魂の根ざす場所というものが、人にはあるんだと思います──
文中にある、この示唆に富んだ一文だけでも、この大作を読む価値がある思います。最終場面、この言葉に感情が昂りました。
舞台は、月コロニーへの人類移住計画が完了し、荒地と化した地球です。
荒廃した未来の地球に生きる三人の人物に焦点をあて、物語は進んでいきます。
ナギ、トワ、サク。
地球で生きることを選んだ三人三様の生き様は、なんとも健気で、爽やかで、『生』を応援する、そんなテーマさえ感じます。
三人の壮大な冒険と旅が、周囲の者たちを巻き込み、最終的にひとつにまとまっていくまでを丁寧に描いたSF作品です。
壮大な物語の最…続きを読む - ★★★ Excellent!!!巡り会う希望のバトンはルリの花。絡み合う人の繋がりに奇跡は起きる!
月へと人類は移住していくが、荒廃した地球にも残り住む人々がいる。荒れ果てた地球で一握りの希望を持つ人達。
しかし、地球に残された彼らに奇病が襲う。蔓延する奇病。もはや地球には奇病を治す技術も薬も無い。そんな中、希望を求めて月へ旅立った男がいた。妻を想うからこその愛深き、無謀ともいえる行い。男の切なる願いが月での技術者の手によって、奇病対策の薬の素が開発される。
過酷な地球環境。妻と家族を想う強い愛情。一握りの希望に賭けた行動力。旅立った父と、残された子供のすれ違う想い。それぞれの想いと現実に抗う強い意思。加速する奇病への焦燥感と食料事情。廻る運命の輪。切なく泣けるシーンも多いです。やが…続きを読む - ★★★ Excellent!!!三人の運命と三つの物語が交錯する時、感動のクライマックスが訪れる!
すごい作品です。
掛け値なしの感動が待っています。
それぞれ独立しているような、三人の主人公がおりなす三つの物語。
その単体だけでも十分に読み応えのあるドラマとストーリー性があります。
ですが、この三つが実に意外な形で絡み合っていくのです。
この構成が見事なのはもちろんですが、この発想が素晴らしい。
絡み合っていく三つの物語には、意外な仕掛けが施してあり、その展開には驚くばかりです。
やがて立ち現れるのは、時代の波に、過酷な環境に、立ち向かい生き抜いていこうとする人間の強さ。
それが三つ物語を貫いて鮮やかに浮かび上がってくるのです。
この物語がSF世界で展開されているのが、個性的であり、…続きを読む - ★★★ Excellent!!!荒れた惑星にも、その想いは確かに根付いた
異なる場所で生まれ育った三人と、彼らに関わる者たちの視点で綴られる群像劇です。
読み始めてすぐ、心を鷲掴みにされました。
丁寧に描かれた情景は心地よく、それでいて、過酷な場面での揺さぶり方は半端ではありません。本当に、「巧い」の一言。
それは構成についても同じです。
時間経過、続きの気になるところでの場面転換、名前の意味の提示のしかた、などなど……。
あくまで自然に、そして着実に、読者の脳に刻み込むような書かれ方をしています。
物語は、荒れ果てた地球と、そこからの移住が完了した月が舞台です。
過酷な環境の中で生きる人々。彼らは不安や迷いを抱えながらも、日々「自分にできること」をして生きて…続きを読む - ★★★ Excellent!!!打ち捨てられた地球と月とをつなぐ運命の糸。心地よい文章と巧みな物語構成
荒れ果てた未来の地球。人類が月へ移住したあとも地上に残された棄民のような人びと。
最後の月行きの宇宙船に乗った男が、地球と月と、人びとの運命をつなぐ物語。
印象的な鈴の音、感情とリンクする風景、大自然の猛威。映像や音や匂い、感情があざやかに浮かびあがる文章が、心地よく物語の世界に引きこんでくれます。
文章にひかれて読んでいるうち、つぎつぎと繋がる人の思いとエピソード。この運命はこのさきどこへ連れてってくれるんだろうとどきどきする展開。繋がったエピソードは円環になって原点にもどって、またつぎへと旅だっていく。
さわやかな読後感でした。
巧みな物語構成に感嘆させられます。読者として純粋に堪能し…続きを読む