荒れた惑星にも、その想いは確かに根付いた

異なる場所で生まれ育った三人と、彼らに関わる者たちの視点で綴られる群像劇です。

読み始めてすぐ、心を鷲掴みにされました。
丁寧に描かれた情景は心地よく、それでいて、過酷な場面での揺さぶり方は半端ではありません。本当に、「巧い」の一言。
それは構成についても同じです。
時間経過、続きの気になるところでの場面転換、名前の意味の提示のしかた、などなど……。
あくまで自然に、そして着実に、読者の脳に刻み込むような書かれ方をしています。

物語は、荒れ果てた地球と、そこからの移住が完了した月が舞台です。
過酷な環境の中で生きる人々。彼らは不安や迷いを抱えながらも、日々「自分にできること」をして生きています。
そして、どうにも抗うことのできない運命を前にしたとき、人々は何をするのか。その姿に、想いに、何度も心をうたれました。

違う価値観を持った人が出会い、また、誰かの残した痕跡に触れる。
そうして繋がった想いは、奇跡のように素敵な結末を迎えます。

是非、皆さんにもこの感動を味わっていただきたいと思いました。
本当におすすめです。

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