過去は変えられない。
その絶対的な真理を覆す、タイムリープ。
戻った過去にて以前とは異なる行動をとることでより良い未来を望めるというのが魅力的な題材ですが、本作ではとくに「過去の側面を新たに知る」という点が見事に描かれています。
主人公の英凜は、とても俗っぽい言いかたをすると、共感力の低い女性です。
それゆえ、高校時代に付き合っていた侑生や、彼の親友である昂夜、同級生など、さまざまな人とのすれ違いを経験してきました。そして頭が良いとはいえ精神はまだ成熟しきっていない高校生だからこそ、英凜はのちに大きな後悔となる出来事の原因となってしまう――
十数年もの時を積み重ねて戻ってきた英凜自身の、当時から変わったもの、変わらないもの。
その二つが絶妙に折り重なり、後悔ばかりの過去に変化を与えていくさまがとても鮮やかです。表現が少し難しいのですが、過去そのものというより(もちろんそちらにも変化はありますが)過去を見つめる英凜の変化に焦点を当てた流れが秀逸だと感じました。
また、侑生や昂夜にそれぞれ抱く特別な想いを認識する場面も素晴らしい。些細な心のやりとりにこちらまで揺さぶられます。
希望の見える読後感もよく、あらためて『リライト・ザ・ブルー』というタイトルや各サブタイトルを眺めれば、にやにやすること必至。おすすめです。