インカ帝国でイネスという女の子として生きた記憶を持ち、現代日本に生まれ変わってもなおチチカカ湖に想いを馳せる女子高生、翡翠。そんなちょっとヤバい翡翠に小気味よいツッコミを繰り出す悪友、沙羅。
そんな二人の、微笑まし……くもありますが、思わず吹き出してしまうようなやりとりから物語ははじまります。
イネスの記憶もあり、草食系男子なんて許せない!な翡翠が出会ったのは、そのザ・草食系男子の四条。しかし彼は、そこいらではお目にかかれないほどの歴史ヲタクで――?
何だかんだで優しい沙羅の思いと、時折はっとするような言葉を発する四条の強さ。
二人と関わることで、イネスと翡翠との間で揺れ動く心にも変化が訪れます。
風の感触や水の匂いからチチカカ湖を思い出すようすは何とも切なく、本当に実感しているかのように引き込まれる描写が素晴らしいです。
そしてバッチリ、トトラ(葦)でできた浮島の上を歩いてみたいという衝動に駆られました。
ニッチなラブコメ?確かにそうでしょう。
ですがこれは、ニッチはニッチでも、思い出の写真やお気に入りの本を置いておきたくなるようなニッチ(もはや壁がん)。おすすめです。