つながり重なる運命の環の上で。めぐる思いはやがて希望へつながっていく。

人間が、高度な文明と引き換えに、母なる大地を破壊した未来の物語。

荒廃した地球を捨て、月へ移住した人々。
捨てられた地球に残り、過酷な環境や不治の病に命を削られる人々。
どちらに生きる人間も、運命の潮流に逆らうことができない、とても儚くて小さな存在です。

この物語の登場人物たちはそんなちっぽけな存在であり、しかも自分の生きる意味を見つけられずにいる人たちです。
住む場所も、年齢も、生い立ちも全く共通するところのないナギ、トワ、サク。
けれども、ジンという人物の抱く強い思いがトワを動かし、ナギに届き、サクに受け継がれます。

一人ひとりの生命は儚く、運命に抗う力もなく、いつ切れるとも知れない糸のようにか細いもの。
けれど、その糸は人の思いによって強くなり、誰かと繋がることができ、思いを伝えていくことができる。

過酷な運命に翻弄される試練、それを乗り越えていく思いの強さ、未来へとつながっていく希望。
それらが随所に散りばめられつつ、最後には一つの物語として美しく紡がれていく過程で、何度も胸が熱くなります。

この物語に登場するルリヨモギギクの花のように、大地に懸命に根を張って生きる人間の弱さと逞しさがとても愛おしく思える、心に沁み入る素晴らしい作品です。

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