打ち捨てられたはずの惑星に、人々の温かな想いが花開く

大半の人類が月への移住を済ませ、過酷な自然環境にわずかな居住者を残すのみとなった未来の惑星、地球。
そこでは疫病を患い死にゆく者が後を絶たず――生き延びるために、ある植物を開発し、育てることが命題として課されることに。
その植物を、登場人物たちがときに罪を犯し、ときに命を懸け、すがるような想いで人から人へと繋いでゆく。
植物に乗せられた、多くの人の願い。それが、目に見える効能よりもはるかに大きなギフトをもたらします。

作り込まれた見事な世界設定は、作者をご存知の方なら納得の一言。
けれど読者の心を一番大きく揺さぶるのは、設定ではなく、そこに生きる純朴で真っすぐで一生懸命な、愛すべきキャラクターたちの生きざまです。
さまざまなキャラクターに焦点があてられ、それぞれの目線を通して物語は進んでいきます。
そのすべてが、時を超え惑星を越えて、大きな一つの環となって繋がったとき。
待っているのは、筆舌に尽くしがたい大きな感動です。

途中、何度も涙し、自分の心臓がおかしくなるかと思いました。
外出先で読まれる方は、要注意です。

文句なしに、私の大好きな作品となりました。
美しい宇宙、広大な砂漠、大地を轟かす噴火。
ナギやトワ、サクやミカたちの生き生きとした感情、表情。
大スクリーンで映画として観られたら、どんなに幸せかと思います。
その感動を、小説でも味わうことができるのです。
是非、映画のような大きな感動を、この作品を通して味わってみてください。

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