種は花に、魂は愛に、迷えど想いは巡り廻る

新天地となる月コロニーに移住した人々、そして荒廃した地球に残された人々、その二つを舞台に「人の想い」が描かれたSF物語。

もうね、泣きました。そして、微笑みました。何度も何度も泣き笑いしましたとも!

群像劇と称したように主人公が変わるのですが、彼らの想いが繋がるたびにチリッと火が付いたみたいに感動が生まれて、全身に燃え広がって熱いものに満たされていく……うまく言えないけれど、そんな感じです。

またSFというと難しそうだとか取っ付きにくいといったイメージがあるかもしれませんが、その心配は一切なし。

するりと染み込むように入ってくる軽やかな文体で、まるで映像で見ているかの如くシーンがイメージできてしまう!

砂漠の場面では熱と砂塵に乾いた殺伐とした空気を、火山近郊の場面では薄暗い中に灰落ちる重苦しい空気を、月が舞台の場面では清浄ながらどこか閉塞感のある空気をと、行ったことも経験したこともない場所なのに目から入った文字が肌に臨場感として伝わってきます。

迷っても、繋いだ手は離さない。
離れても、紡いだ想いだけは手放さない。

そんな彼らの想いの種が芽吹くその瞬間に出会える喜びを、是非皆様にも感じていただきたいです!

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