妖怪の村の小さな学校 《アジェンナ国物語~少年少女編》

作者 rainy

80

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★★★ Excellent!!!

 異世界ファンタジーといえば、中世ヨーロッパがモデルの舞台になっている事が多いですが、このジャンルでありながら、アジア圏がモデル。アジア圏作品としても中国やインド等の大国ではなく、タイやベトナム、東南アジアの雰囲気です。

 今時のファンタジーの衛生観念は現代日本レベルというパターンが多く、お風呂に入る、洗濯はこまめにという事で、とにかく綺麗で清潔な世界が多いですが、人間がまだ未熟な文化でいるとき、実際はそんなに清潔なはずはなく。
 美しいものを美しく書かれた物語は多いけれど、汚いとされるものを魅力的に書く作品は少ない。その稀有な方です。

 主人公マルは貧しい物乞いで、イボイボ病。不衛生からくる皮膚の病気なのですが、刺激を与えれば潰れて膿が出る、足の裏から表情がわからないぐらい顔まですべて覆われている状態。ビジュアル的には、到底美しいとはいえないけれど、彼の性格や行動全てが可愛くて愛おしく、魔女が彼を独り占めしたいがためにそういう病気にしたのだという作中のお話が、まさにそうなのではないかと思える感じで。気付けば泥にまみれドロドロになっていても美しい。彼はしっかり生きて輝いている。才能もすさまじく、まさに原石。

 植民地支配、身分や性別での差別がメインプロットに存在し、清濁が混在し現実的。社会派的な切り口もあって奥深いです。

 真っすぐで純真なたくさんの個性的な子供達が、差別や新たな文化の潮流に翻弄されながら、ヒサリ先生という若い情熱をもって導かれていく成長の物語。先生自身も若く、成長過程にあるという。皆が、未来に向けて進んでいく力強さを覚える名著。

 学びの大切さ、世界への視野、文化への憧憬、社会の歪み。読めば必ず何かを心に残す、示唆に富んだ内容です。

★★★ Excellent!!!

妖人という身分のある国では、その上の身分を目指すことは難しい。同じ人であるのに、皆が平等で暮らせない日常がそこにある。しかし、そんな体制を少しでも変えていこうと血気盛んに村へ飛び込んだ若き女教師のオモ・ヒサリ。彼女の熱意は次第に村の子供たちに伝染し、手と手を取り合って色々な壁に立ち向かっていく姿は、作中の色々な場面で登場する「アジェンナの歌物語」と重なって見える。

見た目が悪く、周りから忌み嫌われている男の子(マル)の清らかな心とセリフ回しに酔って欲しい。読み進めるほどに、彼を応援したくなる気持ちは高まる事でしょう。彼の先生に対する小さな「好き」から、今後どこまで大きく「愛」というものが育まれていくのか……その辺りも読みどころの一つです。

少年少女編を終え、新たな局面を迎えた子供たちと先生。次なる新編も大いに期待しています☆

★★★ Excellent!!!

教育の理想に燃える若き女教師オモ・ヒサリ先生。彼女はカサンという帝国の出身であり、帝国の植民地であるアジェンナ国のさらに田舎にある村に自らの希望で赴任します。そこには差別されている「妖人」と呼ばれる身分の人々がおり、さらに貧しい人々もいます。
そこで出会ういろいろな子供達、中でも皮膚病を患うマルという少年は歌を歌って物乞いをして生きています。ヒサリ先生は彼の中にとんでもない宝物、まさに天賦の才を見出し、彼を「立派なカサンの臣民」に育てようと心に誓うのですが……

マルをはじめとした子供達の行動や思いが、いわゆる「大人が思い描く子供」ではなく、大変リアルにみずみずしく描かれています。読んでいるうちに、彼らと一緒に心が子供時代に戻るような感覚がありました。あの頃周囲にいた大人やクラスメイトの行動、自分が抱いていた苛立ち、大切な友人、初恋……。
大人になった私がいつの間にか忘れていたもの、仕方がないと清濁併せ飲んでしまっていたものが、当時の感覚のままよみがえり、とても素敵な読書経験をさせていただいております。

そしてヒサリ先生。若く理想に燃える先生は、きっと子供の頃に出会っていれば私の大好きな先生になっていたでしょう。彼女は子供たちに教えます。「人はみな平等です」「カサン帝国の臣民であることに、何ら違いはありません」「知識だけでなく、カサンの精神を身に着け、立派な帝国臣民とならなければいけません」……彼女の言葉にマルは純粋に思います「立派な帝国臣民にならないと、どうしていけないのかなあ。そんなことより先生にほめてもらいたいし、喜んでもらいたい」と。

作者様いわく、お話は最終章に入っています。(私は115話ほど読んでいますが、まだ最終章ではありません)作中ではすでに何年もの時が過ぎ、生徒達の中にはそろそろ将来のことを考え始める子も。そうなのです。「学校」という場所には、人生で… 続きを読む

★★★ Excellent!!!

寒い冬の中で、松のような常緑樹の「緑」が長く残っていることを知ることができる――という論語の言葉です。

カサン帝国のオモ・ヒサリという若き女教師は、植民地であるアジェンナ国の田舎の村のスンバへとやって来ます。
そこは、妖人と呼ばれる、あまり良くない扱いを受ける人々がいます。
彼ら妖人は妖怪を相手にできるという異能がありますが、それゆえにこそ、「平民」を始めとする他の集団、人種から蔑まれています。
――その妖人の子どもたちに、教育を施すという使命を胸に抱くヒサリ。
彼女にとって、「寒い冬」ともいうべきスンバ村において、彼女は「緑」=教えを示すことができるのか。
また、妖人の子どもたちもまた、酷い扱いという「寒い冬」の中、「緑」=心や才能を示すことができるのか。

……アジア風な国と、近現代の雰囲気の時代の中、彼女と子どもたちが、どこまで「緑」をくっきりと表すことができるのか。
それを見守っていく物語です。
是非、ご一読ください。

★★★ Excellent!!!

物語の社会的背景は現在とは違いますが、
各エピソードが伝えるアンチテーゼは、
時代や文化等の垣根を超えた
人が持つ普遍的な部分 として強く考えさせられます。

また、
生徒自身の潜在意識に
妖怪の言動が影響を受けている描写や、
死生観について深く考えさせられるような心像世界の描写には、
作者様の高い文才が感じられます。

引き続き更新も期待させていただきます。





★★★ Excellent!!!

40話くらいまで読み進めた段階でのレビューです。

 異民族が混在することによって差別や偏見もある世界観です。この世界観が良く練られていて、民族によって異なる言語を持っています。

 この言語が植民地時代の朝鮮半島における日本語教育のように差別の演出として使われていたり、登場人物の行動や思想にも影響しています。

 ファンタジー世界で言語を人々の文化や思想、感情まで反映させるには相当な世界観の作りこみが必要です。なのでテンプレファンタジーでは、少なからず言語については触れずに、唯一の異世界言語=日本語として言語の問題を回避したりします。(酷い作品では回避したのに異世界人が主人公の知らない英語やドイツ語を使ったり)

 そこにあえて踏み込めるという事は作者様はおそらく外国語でも会話できる方でいらっしゃるか、もしくは相当アジア圏の旅行経験をお持ちでいらっしゃるかのどちらかであろうと感じました。そう感じさせるだけの練り込まれています。

 また、学校がテーマであるからか、子供の理解力についても作者様はよく調べたのではないかなと感じました。
 子供には発達段階というものがあり、ある一定の年齢に至らなければそもそも思考自体ができない物事があります。特に客観視や物事の抽象化の概念は小学生高学年から中学生にかけて身に付く能力ですが個人差が大きく、詰め込み式の教育が横行した日本においては乏しいまま大人になっている人も少なくありません。
 登場する生徒たちにこれらの客観視や抽象化の能力のばらつきが適度にみられるのに驚きを感じました。

 子供をリアルに描きたい作家さんにも勉強用におすすめできる作品だと思いました。

★★★ Excellent!!!

舞台は帝国の植民地。登場人物は、差別や貧困にくるしむ子供たちと、帝国から派遣された女教師。
理想と正義感に燃える女教師は、みにくく不潔な風貌だけれど清らかな魂と歌の才能をもつ少年に惚れ込んで熱心に教育しようとするのですが――

一面的な正義で主役を美化するのでなく、単純な善悪で割りきるのでもないストーリーが、物語を読みごたえあるものにしています。
人間と妖人と妖怪が身近に同居する夢幻的な世界。宗主国が交代し、植民地の住民たちの間でも対立や差別があったりと、東南アジア/南アジアを髣髴とさせる社会構造の描写が世界観を重厚にしています。
そして少年の明るく清らかな魂、そこから湧き出る歌の詩情が、物語をうつくしく彩ります。
子供たちだけでなく女教師の成長も楽しみな、夢幻の世界をぜひおたのしみください。

★★★ Excellent!!!

 私が子供の頃に、もしこの物語に出会っていたら――
 この世界に足を踏み入れたとき、最初に思い出したのは子供の頃の自分でした。
 中つ国を妄想し、自分を夢の世界に沈めて旅をした幼くも楽しい日々。
 あの瞬間にこの物語があったら、どんなに素敵だったか!

 作品の舞台となるのは、架空の異世界。
 言語、文化、人種の異なる人々の交流やすれ違いを児童文学のような優しい文章で描き出し、ときに静かに、ときに華やかに、幻想世界の息遣いが確かな筆致で紡がれていきます。

 物語の主軸となるのは主人公の女教師オモ・ヒサリ。
 そして彼女に導かれる教え子たち。かけがえのない教えや奇跡のような出会や事件を経て、彼らは様々な問題に直面し、共に手を取りあい、苦しみ喘ぎながら、それでも諦めずに乗り越えていきます。綺麗なお話しばかりではなく、辛い場面も多いですが、その裏に秘められた人の情熱と愛の鼓動は、きっと誰の心にも響く素敵な音色で読者を満たしてくれるはずです。

 ああ、この世界の住人になりたい!
 思わずそんな風に声を上げてしまうような、優しく不思議な子供たちの成長譚。
 是非是非、ご覧下さい。

★★★ Excellent!!!

社会派の視点を保ちつつ、ファンタジーの世界が次々と見事に展開されており、この作品に思わず引き込まれている自分に気付きます。

純粋でまっすぐで、だから時に悩みも抱えるヒサリ先生。バダルカタイ先生が上手く脇を固めています。こんな2人を先生に持つことが出来ただけでもマル達は幸運だったと言えるのではないでしょうか?

子ども達にとって人生を左右する「大切な人との出会い」。作者がこの作品に込めた熱い思いをぜひ多くの人に受け取って欲しいです。

★★★ Excellent!!!

若き新米教師であるヒサリ先生と、植民地であるアジェンナ国に暮らす十二人の生徒たちのふれ合いを描いた作品。個性豊かな生徒たちは勿論、アジェンナ国に根付く差別や偏見、それらの枷に縛られながらも彼らなりに生きようともがく人々の生き様にも魅せられます。現代社会においても課題と言える題材を取り扱ってはいますが、重たく濁り続けているのではなく、そういった影の部分がありながらもたくましく生活を営む民の瑞々しさがこの作品を彩っています。現代に生きる私たちだからこそ、より多くの人に読んでいただきたい作品です。

★★ Very Good!!

10話まで読んだところですが、この方はシナリオの適性があるのではないかと思います。小説としては、少しゆっくりと刷り込むようにしていただくといいのではないかと思います。

■追記: 31話で★を2つにしました。前のコメントは序盤でしたが、それからいろんな話がありつつも読みやすく詩的になってきて、この辺は展開も個人的には好みです。