概要
そして個性的豊かな12人の少年少女の成長の物語。
カサン帝国の若き女教師オモ・ヒサリはカサンの植民地アジェンナ国の片田舎スンバ村に赴任する。彼女が教えるのは妖怪に関わる仕事をするため「穢れた妖人」と人々から蔑まれる子ども達だった。
しかしヒサリが出会った子らはみな意欲あふれる可能性に満ちていた。
向上心に溢れるダビ、人体の仕組みに興味を持つ探求心の強いトンニ、正義感の強いラドゥ、口が悪く反抗的だが根は優しいナティ……。
とりわけ彼女の心をとらえたのは、醜い皮膚病をわずらった物乞いの少年マルだった。無邪気に自分に向かって手を伸ばした幼い彼の思いに応えよう、とヒサリは決意する。
ある日、ダムの決壊による洪水が村を襲い
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!新米女教師と12人の生徒たちの絆と成長が、丁寧に描かれています
舞台はアジア圏を連想させる架空の国アジェンナ。
この国はカサン帝国の植民地であり、身分制度や差別が色濃く残る国です。
主人公の教師ヒサリはまだ若いながらもしっかりとした理想と志を持った女性です。
彼女はアジェンナ国の片田舎スンバ村に教師として赴任することになり、12人の少年少女がヒサリの生徒になります。
この生徒たちが非常に個性豊かな子どもたちです。
靴職人の子どもダビ。口は悪くともやさしい心を持っているナティ。みんなのリーダー的存在になっていくラドゥ。そして、もうひとりの主人公でもある物乞いの少年マル。
マルは皮膚病のために身体中をイボイボに覆われていますが、とても純真な子…続きを読む - ★★★ Excellent!!!貧困や差別の中でも前を向いて生きていく 清らかな魂が織りなす成長物語
この物語の舞台はアジアに本当にありそうな架空の国です。
植民地であるアジェンナ国にはインドのカースト制度を彷彿とさせるような根深い身分差別と貧困が蔓延しています。その世界で子供達は自分たちの文化と価値観の中で育っていきます。彼らの仕事は物乞いやくみ取りや葬儀屋といったもので、代々親からその仕事の技を引き継いで生きていく。それに対して疑問を持つことなく、貧困と共に文化を繋いでいくのです。
そこへ、カサン帝国から熱い情熱を持った若き女性教師がやって来て、学校を作ります。先生は子供達の心に、純粋に、懸命に教育の火を灯していきます。
生徒の一人マルはイボイボ病という体中イボに覆われる病を持つ物乞…続きを読む - ★★★ Excellent!!!本当の正義ってなんでしょう?
そんなのないですよねぇ。
正義は立場によって大きく変わります。身分制度が厳しければ、その階級ごとに正義が異なるのでしょう。
このお話では、それぞれの正義が激しくぶつかります。それはそれは大きく激しい音をたてて。
その戦いの中で生徒と先生が大きく生長していく物語です。
私的には主人公の正義が最も共感できるのですが、読者それぞれに好きなキャラクターがいる事でしょう。現実世界では戦争の危機が近づいています。どんなに間違った正義でも良いですから、子供たちがお腹いっぱい食べて、ヘラヘラ笑っていられる世の中を作る正義が、受け入れられますように。 - ★★★ Excellent!!!世界に人あればそこにはいつも。アジア圏モデルの異世界ファンタジー!
異世界ファンタジーといえば、中世ヨーロッパがモデルの舞台になっている事が多いですが、このジャンルでありながら、アジア圏がモデル。アジア圏作品としても中国やインド等の大国ではなく、タイやベトナム、東南アジアの雰囲気です。
今時のファンタジーの衛生観念は現代日本レベルというパターンが多く、お風呂に入る、洗濯はこまめにという事で、とにかく綺麗で清潔な世界が多いですが、人間がまだ未熟な文化でいるとき、実際はそんなに清潔なはずはなく。
美しいものを美しく書かれた物語は多いけれど、汚いとされるものを魅力的に書く作品は少ない。その稀有な方です。
主人公マルは貧しい物乞いで、イボイボ病。不衛生か…続きを読む - ★★★ Excellent!!!少年の心と口から零れ出す言葉に、心は温まり胸が躍ります☆
妖人という身分のある国では、その上の身分を目指すことは難しい。同じ人であるのに、皆が平等で暮らせない日常がそこにある。しかし、そんな体制を少しでも変えていこうと血気盛んに村へ飛び込んだ若き女教師のオモ・ヒサリ。彼女の熱意は次第に村の子供たちに伝染し、手と手を取り合って色々な壁に立ち向かっていく姿は、作中の色々な場面で登場する「アジェンナの歌物語」と重なって見える。
見た目が悪く、周りから忌み嫌われている男の子(マル)の清らかな心とセリフ回しに酔って欲しい。読み進めるほどに、彼を応援したくなる気持ちは高まる事でしょう。彼の先生に対する小さな「好き」から、今後どこまで大きく「愛」というものが育…続きを読む - ★★★ Excellent!!!正しい人、立派な人って何だろう
教育の理想に燃える若き女教師オモ・ヒサリ先生。彼女はカサンという帝国の出身であり、帝国の植民地であるアジェンナ国のさらに田舎にある村に自らの希望で赴任します。そこには差別されている「妖人」と呼ばれる身分の人々がおり、さらに貧しい人々もいます。
そこで出会ういろいろな子供達、中でも皮膚病を患うマルという少年は歌を歌って物乞いをして生きています。ヒサリ先生は彼の中にとんでもない宝物、まさに天賦の才を見出し、彼を「立派なカサンの臣民」に育てようと心に誓うのですが……
マルをはじめとした子供達の行動や思いが、いわゆる「大人が思い描く子供」ではなく、大変リアルにみずみずしく描かれています。読んでいる…続きを読む - ★★★ Excellent!!!子曰く、歳寒くして、然る後に松柏の凋むに後るるを知る也――論語「子罕]
寒い冬の中で、松のような常緑樹の「緑」が長く残っていることを知ることができる――という論語の言葉です。
カサン帝国のオモ・ヒサリという若き女教師は、植民地であるアジェンナ国の田舎の村のスンバへとやって来ます。
そこは、妖人と呼ばれる、あまり良くない扱いを受ける人々がいます。
彼ら妖人は妖怪を相手にできるという異能がありますが、それゆえにこそ、「平民」を始めとする他の集団、人種から蔑まれています。
――その妖人の子どもたちに、教育を施すという使命を胸に抱くヒサリ。
彼女にとって、「寒い冬」ともいうべきスンバ村において、彼女は「緑」=教えを示すことができるのか。
また、妖人の子どもたちもまた、…続きを読む - ★★★ Excellent!!!丁寧に社会が描かれていて文化まで見えてくる世界観
40話くらいまで読み進めた段階でのレビューです。
異民族が混在することによって差別や偏見もある世界観です。この世界観が良く練られていて、民族によって異なる言語を持っています。
この言語が植民地時代の朝鮮半島における日本語教育のように差別の演出として使われていたり、登場人物の行動や思想にも影響しています。
ファンタジー世界で言語を人々の文化や思想、感情まで反映させるには相当な世界観の作りこみが必要です。なのでテンプレファンタジーでは、少なからず言語については触れずに、唯一の異世界言語=日本語として言語の問題を回避したりします。(酷い作品では回避したのに異世界人が主人公の知らない英語…続きを読む