丁寧に社会が描かれていて文化まで見えてくる世界観

40話くらいまで読み進めた段階でのレビューです。

 異民族が混在することによって差別や偏見もある世界観です。この世界観が良く練られていて、民族によって異なる言語を持っています。

 この言語が植民地時代の朝鮮半島における日本語教育のように差別の演出として使われていたり、登場人物の行動や思想にも影響しています。

 ファンタジー世界で言語を人々の文化や思想、感情まで反映させるには相当な世界観の作りこみが必要です。なのでテンプレファンタジーでは、少なからず言語については触れずに、唯一の異世界言語=日本語として言語の問題を回避したりします。(酷い作品では回避したのに異世界人が主人公の知らない英語やドイツ語を使ったり)

 そこにあえて踏み込めるという事は作者様はおそらく外国語でも会話できる方でいらっしゃるか、もしくは相当アジア圏の旅行経験をお持ちでいらっしゃるかのどちらかであろうと感じました。そう感じさせるだけの練り込まれています。

 また、学校がテーマであるからか、子供の理解力についても作者様はよく調べたのではないかなと感じました。
 子供には発達段階というものがあり、ある一定の年齢に至らなければそもそも思考自体ができない物事があります。特に客観視や物事の抽象化の概念は小学生高学年から中学生にかけて身に付く能力ですが個人差が大きく、詰め込み式の教育が横行した日本においては乏しいまま大人になっている人も少なくありません。
 登場する生徒たちにこれらの客観視や抽象化の能力のばらつきが適度にみられるのに驚きを感じました。

 子供をリアルに描きたい作家さんにも勉強用におすすめできる作品だと思いました。

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