その花をやたらと送ってはいけない……。
その花をむやみに受け取ってはいけない……。
何故なら、その花の裏の花言葉は、とても恐ろしいものだから……。
一つ一つに隠された、もう一つの顔を持つ花言葉。それは裏の花言葉になって、受け取る人に影の様に、恐怖を連れて忍び寄ってくる。
それは送り主の知らない事なのか、それとも知っている悪意なのか?
いいや、悪意によるモノだろう。だから、人の闇を伴って贈られてくるのだ。
短編読み切りの、人の悪意が絡みついた、裏花言葉によるホラー集。
花を贈る時は、もう一度よく考えてほしいものだ……。
花言葉と言えば「愛情」を意味する「バラ」や「思いやり」を意味する「チューリップ」など様々なものがあり、贈り物にもあえて花言葉を意識して渡すこともあると思います。
しかしこの作品の中で紹介される花言葉は「疑惑」「復讐」など不穏なものから「永遠の愛」「優れた美人」など一見肯定的なものまで様々です。
そしてその数々の花言葉をテーマにした短編がつづられており、時に恐ろしく時に切ない物語を楽しむことができます。
ある物語は一見ごく平穏な日常が些細なきっかけで怨念ただよう恐ろしい展開を見せ、またある物語は不穏な雰囲気を感じさせる独白から背筋の凍る真相が最後に明らかになります。
そしてその物語全てが花言葉とそれを象徴する植物を軸に展開されており、かつ短編として綺麗にまとまっているので作者さんの発想力に驚かされます。
ホラーがお好きな方は是非ご一読を。
花にはそれぞれ、花言葉がある。いい意味を持つ花もあれば、悪い意味を持つ花もある。この作品名は『畏怖の花言葉』である。「畏怖」は「If」にも通じると思う。そんな、「もしも」の短編集だ。それも、極上に恐ろしい物ばかりを、まるで花束に仕立てたような、不穏で残酷なものばかりだ。
特に小生が恐怖を感じたのは、先生が生徒の作文を読む形式の物語群だった。ある少女は、両親が恋しい余りに、生まれたばかりの赤ん坊を、ある場所に隠したことを、作文に書いた。そこで添えられていた花言葉は……。その他にも、この先生が担任を勤めるクラスには、カウンセリングを受けた方がいいと思われる生徒が、複数いた。つまり、幼いからこその、無邪気さと狂気がそこにはあるのだ。そしてその狂気と花言葉が、一対となって、物語を構成している。
話数が多いが、1話千字程度なので、するする読めてしまいます。怖いもの見たさのような部分をくすぐられ、一気読みしてしまいました。
花言葉を知ると同時に、贈る時に気を付けるべきことも書いてあり、実用的な機能も兼ね備えています。
是非、御一読下さい。