貧困や差別の中でも前を向いて生きていく 清らかな魂が織りなす成長物語

この物語の舞台はアジアに本当にありそうな架空の国です。
植民地であるアジェンナ国にはインドのカースト制度を彷彿とさせるような根深い身分差別と貧困が蔓延しています。その世界で子供達は自分たちの文化と価値観の中で育っていきます。彼らの仕事は物乞いやくみ取りや葬儀屋といったもので、代々親からその仕事の技を引き継いで生きていく。それに対して疑問を持つことなく、貧困と共に文化を繋いでいくのです。

そこへ、カサン帝国から熱い情熱を持った若き女性教師がやって来て、学校を作ります。先生は子供達の心に、純粋に、懸命に教育の火を灯していきます。

生徒の一人マルはイボイボ病という体中イボに覆われる病を持つ物乞いの子供。彼は言葉を紡ぐ素晴しい才能を開花させていきます。

子供達が自国の文化とカサン帝国の文化の違いや、自ら置かれている貧困や差別といった境遇の狭間で悩んだり勇敢に戦ったりしながら成長して行きます。

子供達の幼いながらも気高い姿や、先生の熱い情熱に心を激しく動かされつつ読み進めていきました。
架空の国の物語ですが、現実世界を映す鏡のような一面もあり、考えさせられることもしばしばありました。

本当の幸せって、何だろう。本当の正義って、何だろう。
そんなことを考えさせられる物語です。

答えはまだ見つかりません。

続編となる「青春編」が連載中ですので、彼らの成長を見守りながら一緒に考えていこうと思います。

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