図書室の一冊に

 私が子供の頃に、もしこの物語に出会っていたら――
 この世界に足を踏み入れたとき、最初に思い出したのは子供の頃の自分でした。
 中つ国を妄想し、自分を夢の世界に沈めて旅をした幼くも楽しい日々。
 あの瞬間にこの物語があったら、どんなに素敵だったか!

 作品の舞台となるのは、架空の異世界。
 言語、文化、人種の異なる人々の交流やすれ違いを児童文学のような優しい文章で描き出し、ときに静かに、ときに華やかに、幻想世界の息遣いが確かな筆致で紡がれていきます。

 物語の主軸となるのは主人公の女教師オモ・ヒサリ。
 そして彼女に導かれる教え子たち。かけがえのない教えや奇跡のような出会や事件を経て、彼らは様々な問題に直面し、共に手を取りあい、苦しみ喘ぎながら、それでも諦めずに乗り越えていきます。綺麗なお話しばかりではなく、辛い場面も多いですが、その裏に秘められた人の情熱と愛の鼓動は、きっと誰の心にも響く素敵な音色で読者を満たしてくれるはずです。

 ああ、この世界の住人になりたい!
 思わずそんな風に声を上げてしまうような、優しく不思議な子供たちの成長譚。
 是非是非、ご覧下さい。

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