主人公である野球少女の魅力にひっぱられて、33万字の長編も苦にならず、最後まで夢中になって読みました。
この少女、超がつくほどの野球バカ。同級生たちを強引に野球部に連れてくるし、練習になればスパルタだし、見た目は美少女なのに、いつしかチームメイトたちが彼女を女性扱いしなくなるほど。
でもどれだけ一生懸命でも、野球の才能に恵まれていても、彼女が男子部員に混じって公式試合に出ることは叶いません。おまけに選手生命をおびやかす爆弾も抱えていて――
読めば、彼女の魅力にやられてしまうこと請け合いです。そして、爽やかな読後感に浸れることも間違いありません。
作品ごとに違った魅力を見せてくれる作者さん。
今回は高校野球を舞台に、読み応え満点の熱くて、面白い作品となっておりました!
特筆すべきはなんといっても主役です。なんと女の子です。男子に交じって甲子園を目指します。
彼女の名前は『嶋廻愛琉(しまめぐりめぐる)』、美人で気取らなくて明るくて男子以上の野球バカ。最高ですね。
速球と多彩な変化球にあわせて天才的なピッチングセンス。
先輩だろうと後輩だろうと容赦なく野球に巻き込んでいくさまは実に爽快です。
でももちろん問題もあります。
高校野球に出られるのは男子だけなのです。現実もそうですね。
だから彼女も他の選手と一緒にマウンドには立てないんです。
それでもきっちりと練習をこなし、女子の試合では大活躍する。
公式戦になればだれよりも熱く応援し、遠慮なく叱ったりもする。
とにかく彼女の一挙手一投足に目が離せないわけです。
しかも彼女があこがれているのは監督のおっさん『繁村さん』。
野球バカ同士のような二人が今後どういう関係になるのかもまた目が離せないところ。
さらに『めぐる』には選手生命に関わる重大な秘密もあり……
とまぁ、盛りだくさんです。
入部から練習、試合、個性的なチームメイト、そして甲子園。
そのすべてが丁寧に描かれていき、主人公はもちろん、チームメイトの魅力が増していきます。
もちろん試合シーンもしっかりと描かれ、手に汗にぎる展開を盛り上げてくれます。
ラストにかけての盛り上がりは本当に素晴らしくて、面白かった!
発表する作品ごとにジャンルもキャラクターも様々な物語を読ませてくれる作者さん。
ミステリーが多い印象だったのですが、野球物までこんなに面白く書けるなんて本当にすごいです。
そして面白さの秘訣はやっぱり世界に引き込む描写力と文章力、そしてキャラクターメイクのうまさだと思いました。
ということで、野球好きな人はもちろん、なじみのない人でも楽しめる作品です!
ぜひ読んでみてください。
この小説は自主企画の縁で読ませていただきました。
最近は男女平等が訴えられてますけど、スポーツ界ではしっかり分けられてますよね。
特に、野球。サッカーではなでしこジャパンが活躍してニュースになりますが、女子プロ野球はどうでしょう。近年は高校で女子硬式野球部が作られ、甲子園が開かれていますが、プロは依然……。
この小説は監督の立場から語られる小説です。女子球児の愛琉(めぐる)がどんな形で入部するかにまず(゚д゚)! そんな彼女の脳に入っている危険に(゚д゚)! 愛琉がもつ能力に(゚д゚)!
ビックリさせられまくって、でもめっちゃ面白い小説。
愛琉というキャラクターはとても面白い子でした。野球能力もめっちゃ高くて、男子に劣らない、いや、むしろ勝る能力を秘めています。
でも、性別の差ということで試合に出ることはできません。彼女が出られればもっと試合は面白くなり、チームも強くなる。でも、チームは出したくても性別の縛りという規則で愛琉を出すことができないのです。
そんな中、愛琉はめげずにチームの練習に参加して、選手を陰から磨き、声援を送り続ける。やり方はひどい時もあるけど(笑)
そんな愛琉が色んな課題にぶつかりながらも、愛琉らしい青春を送る高校の三年間。野球のプロとして、エース級の実力を持つピッチャーとして、そして何より、男女関係なくチームで騒ぐ日々はいつ来るのでしょうか。
ラストの結末は、本当の意味で愛琉の球児としての奮闘を終わらせる結末に!!
ぜひ、愛琉のグラウンド、そしてベンチで進むアオハルをあなたも頭の中で焼き付けてください!!
高校の男子野球部の監督を務める繁村と、男子野球部に入部した女子生徒のメグル。
たとえ試合に出れなくてもいい。繁村のもとで野球がしたい。
そんな強い思いを持つメグルが、入部してから全国に羽ばたくまでの3年間の物語。
天才的なセンス、誰にも負けない野球に対する熱意、明るい性格、男子部員すら引っ張っていくようなカリスマ性。
とにかく彼女の輝きがすごい作品です。
そしてストーリーの密度がものすごく高いです。部員の一人ひとりが、緊迫する試合の一つひとつが、丁寧に描かれていて、この世界にどっぷり浸かってしまうこと間違いなしです。勝ったときは嬉しいし、負けたときは悔しい、というように。
メグルだけではなく、男子部員もそれぞれ魅力的でした。
メグルの代のエース、畝原くん。
口数は少なく、プレーですべてを語る、みたいなところが格好良いです。勉強もできるのがさらに素敵。
未経験ながら、持ち前の運動神経でぐんぐん伸び、活躍しまくった栗原くん。
最初はメグルに思うところがあった彼ですが、少しずつメグルのことを認めてて、そういうところもこの作品は上手く描かれてるなぁ……と思いました。
メグル先輩のファンのチャラごーりくん。
先輩に対するチャラい口のきき方のせいで、たくさん走らされることになるのですが、その成果も出てきた終盤の彼の活躍が嬉しくなってしまいます。
そして私の推しはなんといっても横山くんです。
努力家で、学年トップレベルの頭脳を持ちながら、運動部にも挑戦したい。そんな向上心を持って入部した彼は、一度は挫折しかけますが、彼なりのやり方で参謀として部活に貢献し、人一倍練習し、野球の実力もつけて、3年生のときにはしっかり頼れる選手になってくれました。最高かよ。
ここまで書いてて気づいたのですが、上記の彼らの成長って、全部メグルが密接に関わってるんですよね……。
本当にすごい。
途中で色々とヒヤヒヤする展開もありますが、それがまたいいスパイスになっています。
皆さんにもぜひ、最後のスペシャルな試合、そして素敵なメグルと繁村の未来までたどり着いてほしいです。
これは、野球に魅せられ、野球によって築かれた絆に魅せられた人たちの物語。
ある年、サウスポー投手・愛琉が高校野球部に入部した。
どんなに実力があっても、愛琉は決して選手として晴れ舞台に立つことはない。
何故なら、「彼女」が入部したのは「女子野球部」ではなく、普通の「男子野球部」だったから。
野球部監督・繁村に惚れ込んだという愛琉は、稀有な実力と強烈なキャラクターであっという間に野球部全体の心を掴みとってしまいます。
練習内容でもメンタルでも、繁村が舌を巻くほどの影響力で部を引っ張ってしまう彼女は、それでも決して公式戦に出られることはない……。
多くの人たちが、この事実に歯痒い思いをします。
部員たちとの交流や衝突、数々の試合、女子野球選手としての校外での活動など、愛琉を取り巻く物語は止まることを知りません。
色鮮やかな花のように、輝ける素質を持ちながら、それを活かしきれない環境。
彼女の「繁村が好き、彼のもとで野球がしたい」という気持ちは、時に繁村本人に伝わらず空回りしてしまうことも。
愛琉や部員たちのキャラクターや、まるで目の前で実際に行われているようなリアルな試合風景、高校野球の裏側など、細部に至るまで読み応えは抜群です。
愛琉の動向にやきもきしながらも、どっぷりと没入して高校野球の世界に浸ることができます。
高校野球がお好きな方はもちろん、よく知らない方でも文句なしに楽しめます。
ちょっと変わった、元気女子が引っ張る野球物語、ぜひ楽しんでみてください!
タイトルが素晴らしいです。一見すると、関連なさそうなワードの組み合わせはそれだけで引きが強いです。そして読み進めるうちにこれ以上、相応しいタイトルはないと気づかされます。
着眼点も良いと思いました。近年、女子野球は注目されていると思いますが、男子部員に混じって、しかも試合に出れない女子部員がチームをまとめ上げて甲子園に導く。それは想像以上に困難な道のりです。大きなスケール感を感じますね。
試合運びについてですが、相手のミスを誘うなどの戦略は決して派手ではありません。ですが、どの戦略も理詰めで語られるので説得力やリアリティがあります。野球好きな方は勿論楽しめますが、それほど詳しくない方でも理解しやすく描写されているので、置き去りにされることなく楽しめるかと思います。
野球を扱う以上、キャラクターは沢山出てきますが、どの選手も個性が光っていて書き分けも上手です。控えで目立たない選手に見せ場を作るのも、心憎い演出で楽しめました。監督である繁村の苦悩や、ヒロインの愛琉の健気でひた向きな姿勢など、丁寧な描写をされていて愛着が湧きます。
高校野球にぐっと興味が湧き、また野球そのものに対しても見方が変わります。天才少女に待ち受ける運命をどう乗り越えるか、多くの人に見届けて頂きたいです!
かつて夏の甲子園で準決勝まで導いた捕手は、バッテリーを組んでいたエースを交通事故で失い野球を辞めた。
その後、母校の教諭となった主人公は硬式野球部監督に着任します。
その硬式野球部に入部希望したのは、公式戦には出ることのできない投手志望の女子でした。
その女子の熱意に押され、入部を認めた監督ですが、男子に交じり練習し、持ち前の明るさと頑張りでバラバラだったチームがやがて結束していきます。
女子硬式野球部ならば間違いなくエースになれる彼女が、ピッチャーマウンドにも立てない男子硬式野球部で甲子園を目指す。
そんな時に発覚する彼女の病状。
野球どころか、命まで危険に陥る可能性もあることが判明します。
それでも明るく振る舞う彼女。
果たして監督の決断は……。
男子硬式野球部に入部した女子部員の熱い思いと、社会の壁。
丁寧に描かれた情景描写と心理描写。
作者様の安定した筆力に圧倒されながらも、甲子園への熱い夢を応援したくなります。
(2-20 鼓舞 拝読後のレビュー)
女子高校野球をしていれば間違いなく時代の寵児になれたであろう少女が、野球部の監督である主人公を慕って男子高校野球に身を投じるお話。
それだけならラノベ的な設定なんだけれど、脇を固める設定がとにかく緻密ですさまじい。彼女と主人公の前に立ちはだかる社会的な壁は、もうちょっとこう「手心を加えてあげても……」というくらいにシステムの歪さや残酷さ、そして欠陥を抉りだしており、現ドラ作品読んでるなと痛感させられます。
また、主人公達以外の登場してくるキャラクター達がすごく個性的。ぶっきらぼうな不良や少女に誘われて意図せず野球部に入部した秀才、彼女のファンを公言してはばからない後輩’sとエトセトラ。さらに見せ場もちゃんと用意してあるので、誰か一人はお気に入りが見つかるだろうこと間違いなし。この群像劇の巧さもほんと凄いと思います。(レビューで技巧的な所を褒めてもどうかとは思いますが)
ストーリーも先に言った社会的な壁が巧く絡み合って一筋縄でいかない所は流石としか言いようがない。ともすると個人の努力・成長に比重を置いてスポーツモノは展開しますし、そういう側面もこの作品にはあるのですが、それと同列でどう自分たちの前に立ちはだかる純粋なスポーツ以外の問題を解決していくのかというのにスコープを当てて、それを三年という時間をかけてじっくり解決していくというのは、なかなか珍しい試みではないかなと感じます。
もともと作者さんは社会性の高いテーマを作品に組み込む(そしてそれを女性が打破していく)のが巧い方なので、この辺りを小説に期待している方は読んで損はないです。
クライマックス直前、今読むしかないって作品。おすすめです。
野球女子です。変わっているのは、女子硬式野球選手権大会ではなく、男子野球部の選手の一員として甲子園を目指すところです。
公式戦出れないけど、アルプススタンドから応援するのです。
野球、詳しいです。これほど詳細な野球小説、はじめて読みました!
タイトルのセンス。
キャラの魅力。なんといってもヒロイン。細くて顔も可愛いのに、投球フォームが豪快。日本女子最速にも劣らないサウスポーです。
でも、病気も抱えています。ハラハラします。
気の強い子です。男子に混じっての練習です。
他の部員の名前を間違えまくるところもかわいいです。
尊敬する監督のチームに入るために、やってきました。動機もいいです。
彼女によって、みんなのやる気、気持ちが高まります。
名言多いです。
事件などもおき、次が気になることでしょう。
数々の手に汗握る試合展開。
熱い試合。
感動。
文章上手いです。
名作!ドラマ化してほしいですね。
後半、ヒロイン活躍、成功いいです。
素敵な成長物語でした。
男子の硬式野球部に入部した、女子投手の奮闘を描く物語です。
女子の野球も徐々にメジャーになってきたとは言え、男子野球部の規定では、女子はグラウンドに入ることすら難しいのが現状。
それでも、主人公・繁村監督の元へやってきたピッチャー・愛琉は、女子ではなく男子の野球部に入部することを強く望みます。
兎にも角にも、愛琉が魅力的です。
類稀な投球センスはもちろん、底抜けの明るさとポジティブ思考で仲間を引っ張ります。
男子部員のやっかみに遭ったり、練習試合前の投球練習にすら他校からクレームを入れられたりと厳しい環境が続いても、彼女は常に前向き。
敬愛する繁村のチームで野球ができることの喜びが、ひしひしと伝わってきました。
最初はバラバラだったチームも、愛琉を中心に結束を強めていきます。
例えピッチャーマウンドに立てなくとも、愛琉は紛れもなくエースです。
作中、愛琉が何度かチームメイトに向かって「アタシを甲子園に連れてって」と口にします。
試合に出られない彼女の言葉の重さが、胸にきます。
でも、むしろ思うのです。
愛琉がいるからこそ、このチームは甲子園を目指せるのだ、と。
愛琉が入部して、3年目の夏。
繁村監督率いる清鵬館宮崎は、甲子園出場の悲願を達成できるでしょうか?
爽やかで胸の熱くなる作品をお探しの方におすすめです!
ある高校野球部に、一人の監督がいた。この監督は現役時代、投手と共に名バッテリーとして名をはせたいた。しかし帰りのバスが事故に遭い、監督とバッテリーを組んでいた投手が亡くなってしまう。
そんな監督が指揮を執る野球部は、気の抜けた部活動をしていた。部員は集まらず、マネージャーも不在。そんな野球部に、突如救世主が現れる。何とそれはブーケンビリアの髪留めをした、美少女だった。しかも、マネージャ―志望ではなく、投手志望だった。それも、「監督に私のボールをキャッチしてもらいたくて」という夢があった。この少女は持ち前の明るさと元気の良さで、次々と部員を勧誘。ついでにマネージャーまで連れてきた。
少女を中心に部員たちが練習に励み、それぞれの個性と持ち味を生かしたチームへと変化していく。練習試合も組めるようになるが、本番の試合では今一つ。しかも目を付けられるのは少女のほうで……。
しかし、野球の成績な大会では、女子選手の出場を認めていない。「マウンドは土俵ではない」と監督は怒るが、ルールは代えられなかった。
試合を重ね、徐々に部員たちが強さを発揮してくる。そんな中、風の強い日に事故は起こった。宿から買い出しに行った少女が、転倒して病院に運ばれたのだ。そして、監督は、少女の病状を聞かされることになる。
部を作り変え、部員を勧誘し、育成し、盛り上げてきたのは少女だった。監督に憧れて、この部に入ったが、媚びることなく男子と対等に練習に参加した。そんな少女が何故、こんなことに――?
果たして、監督の決断は?
医療ミステリーの名手が描く、青春野球ヒューマンドラマ!
いつもの硬めの文章から一転し、柔和な文章が読みやすい作品です。
是非、御一読下さい!