植民地に生まれた天性の詩人と女教師との交流を、美しく豊かに描く物語

この物語の魅力はまずなんと言っても、詩人に生まれついた少年と、その才を見出し育んだ女教師との魂の交流です。少年だった彼もいまは帝国一の大学へ進み、恋に悩む年頃になりました。一方女教師は植民地にとどまって……。
つぎにその豊かな世界観が読み応えたっぷりです。帝国と植民地とで異なる習俗や考え方、ふたつの世界が交わるときに生まれる軋轢、それぞれの人たちの思い、それらが単純な善悪や悲劇のフィルターを通さずあるがままに提示されて、うつくしい叙事詩を読む心地がします。
また、人物それぞれの人となりが、行動やセリフから立体的に浮かび上がってくるのも大きな魅力です。いいところも悪いところも弱いところも人間にはあるってことを、やさしい眼差しで教えてくれます。
「異世界ファンタジー」の枠には収まりきらない傑作です。ぜひこの世界を堪能いただきたいと思います。